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再会2 《涼香》

その日は雨で、迎えの車を生徒玄関で待っていた。 雨が降っているのをただ眺めていると、脳天気な声が聞こえてきた。 「あれー、涼香ちゃん?」 それはつい数日前に図書室で俺を好きだと言ってきた、あの男だった。 目をそらすとそいつは靴を履きかえて近くにやってきた。 「いやぁ、ラッキーだな。もしかして傘なかったり?」 「……迎えをまってる」 「あー、そっか。相合い傘できるかなって思ったのになぁ、残念」 たいして残念そうでもなくへらへらして、そいつは言う。 「ねぇねぇ、涼香ちゃん」 「ちゃん付けするな」 「えー、涼香ちゃんは涼香ちゃんだからなぁ」 「どういうことだよ」 「いやほら、涼香ちゃんすっごく可愛いじゃん」 「喧嘩売ってるのか」 きつく睨みつけても、にやにや笑っている。 こういう反応は嫌いだ、すごく。 「じゃあ……涼香?」 ぼそぼそと言い、そいつは照れてはにかむ。 呼び捨てで赤面するとか……。 「ちょっとそんな引かないで! じゃあさ、なんて呼んだらいいかな?」 「お前と仲良くする気ないから」 「うーん、高嶺の花だわぁ」 そう言ってくすくすと笑う。 高嶺の花。 クラスの女子達が俺をそう呼んでると聞いたことはあった。 「そんなんじゃない」 「涼香ちゃんは素敵だよ。すごい美人さんだし」 「は?」 「顔見て話すの緊張する。すごいドキドキ」 どうしたって、へらへらしてるようにしか見えない。 これで緊張してるなら普段はもっと能天気なのだろうか。 こういう奴とは関わりたくない。 いい加減相手をするのも疲れて、そいつから目をそらした。

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