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再会3 《涼香》
「あれー、龍太郎じゃん」
「ほんとだ。傘いれてー?」
こちらもまたちゃらちゃらしている女子生徒二人がやってきて、そいつに話しかけた。
「やっほー、今ナンパ中だからごめんねー」
「なにそれウケる。ホモじゃん」
「ほら、傘あげるから。濡れないで帰りなねー」
「えー? 龍太郎濡れるじゃん」
「女の子は身体冷やしちゃダメでしょー。俺は男だからへーき」
「マジ惚れるわー。こんど返すね」
「はーい、気をつけてねー」
相変わらずへらへらしてる優男。
誰にでも愛想良く八方美人でいるとか馬鹿みたいだ。
外は小雨なんて生易しくなく、土砂降りに近い。
こんな中、傘がなかったからこいつだって濡れ鼠になるじゃないか。
「もうちょっと話してもいい?」
そう言って、座ってる俺の横にそいつは腰を下ろす。
「ほんとに好きなんだけどさ、ダメかな? とりあえず友達とか」
「……ゲイなの?」
「ゲイっていうかバイかな。男だけじゃなく女の子も普通に好きだよ」
「じゃあ女でいいじゃん」
「んー、今は涼香ちゃん一筋だからさ」
なんで俺なんだろう。
こいつならいくらでも女が寄って来るだろうに。
「受験の時に会ったの、もう覚えてないかな?」
ぼそっと呟いた言葉が耳に入った。
受験の時に会った。
確かに高校受験のあの日、話した人はいた。
今だって時々思い出しては、探してしまう人が。
けれどこいつではない。
隣に座るそいつの髪は明るい茶色。
たぶん、きっと、こいつじゃない。
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