131 / 156

再会4 《涼香》

雨足は一向に弱まらない。 「覚えてても、探してたのバレるのは恥ずかしいな」 そいつは自嘲気味に笑う。 顔は、はっきりと覚えていないから確信はもてないけど、こいつであって欲しくない。 軟派でへらへらして、もう黒髪じゃない。 手を伸ばしてそいつの髪に触れる。 絡まりはしないけど触り心地はあまり良くない。 傷んで、あの時の感触とは違う。 「……わ、びっくりした」 顔を赤くして俺を見つめてくる。 直ぐに手は離したが、そいつは顔を綻ばせた。 「なんかさ。あの時も髪に触ってたよね?」 本当にこいつなのだろうか。 確かにあの日俺は彼の髪に触れた。 彼の真っ黒な髪の毛に。 「……なんで染めたの」 ついそう口にしていた。 「一年の頃に友達が染めようって言ってきて。なんとなく、一緒に染めちゃった」 「なんとなく……」 「染めてる人、無理だったりする?」 俺が黙っているとそいつは不安そうな表情になる。 無理ってわけじゃない。 ただあの黒髪がきれいだったから、少し、惜しいだけ。 「別に。お前がどうしようが俺には関係ない」 あの人が見つからなかった訳が、わかった。 染めていたら見つけられるはずがない。 こいつがその人だとしても、もうどうでもいい。 そう思いたいのに、どうしても思い出の中にいるあいつのことは嫌いになれない。 やっと会えたのだと思うと、少しばかり嬉しくもあった。

ともだちにシェアしよう!