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プロローグ2
『時間が解決してくれるよ』……なんて、そんな事誰が言い出したんだろう。
リクがいない現実から、目を背け続ける日々。
どれだけ時間 が過ぎても、軽くなるどころか、重くなるばかり。
そんな日々に、僕は希望を見出すことが出来なかった。
リクの両親に罵倒され、僕の両親にも責められた。
当然だよね。大切な息子をオメガなんかのせいで失った。大切なアルファの人生を、オメガなんかが奪ってしまった。
僕が、あの時ちゃんとリクの話を聞いていれば、リクの愛を信じることが出来ていたら。
リクは……命を落とすことなんて、なかったのに。
ここからなら、君の元へ行けるのかな……。
僕は、歩道橋の上から車の行き交う道路を見下ろした。
傘もささずに佇む僕を、ちらりと見ながら人々は通り過ぎていく。
鼻の奥がツンと痛くなる。
あれ……? 僕、泣いているの?
リクがいなくなってから、僕はずっと泣けなかった。
泣いてしまったら、リクがいない現実を認めてしまう気がしたから。
でも、自分が泣いていると気付いてしまった。
雨と涙が混ざりあってぐちゃぐちゃになる。
ごめんね、リク。約束、守れそうにないや。僕、疲れちゃったよ……。
僕は、橋の欄干に手足を掛けた。
『俺に何かあっても、絶対に自ら命を断つなよ』
突然、リクの顔が浮かんだ。
僕は、ハッとして、慌てて欄干から降りた。
幸せだった頃、生まれ変わりを信じるか? ……そんな話をしたんだ。
リクに会えなくなるのは嫌だなぁ……。
もしまたどこかでリクに会えたとしても、約束を破ったって怒られちゃうよね。
もう少しだけ、生きてみようかな……。
先ほどまで欄干を握っていた手の中に、ポケットから指輪を取り出し乗せた。
リクからもらった指輪をじっと見つめてから、決意をするようにぎゅっと握りしめた。
僕はまだ止まぬ雨の中、ゆっくりと、だけどしっかりと地面を踏みしめて、歩き出した。
ちょうど信号機のある交差点に差し掛かったころ、反対側の道路で、こちらに向かって手を振る親子連れがいた。
僕の隣に立つ男性は、きっと父親なんだろう。同じように手を振り返した。
幸せそうな家族、羨ましいな……。
そう思いながら隣の男性を見て、改めて前方に視線を向けると、スピードを落とさず走ってくるトラックが見えた。
えっ?
横断歩道が、青に変わる。トラック側の信号は赤だ。
なのに、トラックのスピードは落ちない。
横断歩道を渡り始める、親子連れ。
女の子が母親の手を離し、父親に向かって走り出した。
「危ない!!」
僕は考えるより先に駆け出し、女の子の身体を突き飛ばした。
時間にしてほんの数秒だったと思う。けれど、まるでスローモーションを見ているようだった。
ブレーキ音がすることもなく。
僕の身体は宙を舞った──。
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