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第12話※ 第一章 完

   12 「ほんとにきた……」 「なんだよ。来るだろ」 「何度も期待を裏切られていたので」  いまいち信用できなくてというと愛崎がくるりと背を向け、帰ろうとする。 「待って待って! 冗談ですってっ! めちゃくちゃ待ってました!」 慌てて腕をつかんで引き留めると、ふはっと愛崎が吹きだす。 「はは、安心した」 「え」 「俺だって、お前の気が変わったらと思うと気が気じゃなかったよ」  そう言われ、なんだかくすぐったい気分になる。 一度家に帰っているのか、あまり見たことがない上下黒のラフな格好で、上はTシャツ一枚に、下はゆるめのスウェットパンツだ。愛崎にしてはめずらしく、靴も紐のないカジュアルな布素材をはいている。 (ラフだけど、すげーかっこいいし、一瞬で脱がせそう……) 「森山? 顔赤いけど、どうした? 熱?」  調子が悪いのかと、ダイキの額に触れようとしてくるので、思わずよけてしまう。 「い、いえっ、ぜんぜんっ! なんでもないですっ!」 「? そうか」 「どうぞ! 上がってください!」  意識してしまうと、緊張でどうにかなってしまいそうだ。 (両想いってことでいんだよな? いや、落ち着け、焦るな焦るな……) ダイキは深呼吸をし、平常心をなんとか装う。ちらりと横目で愛崎の様子を確認してみるが、本当に今日するのかと疑ってしまうくらいいつも通りだ。 (う~わかんないっ……あの紙袋もなんだろ、手土産にしてはデカくないか?)  なぞの大きな紙袋を玄関に置き、愛崎が靴を脱ぐ。 「お邪魔します。お前の家、何気に初だな。緊張する」  そう言ってふっと笑う。 「──ッ……」  照れくさそうな笑顔がかわいくて、ダイキは心臓が大きく跳ねてしまう。 (落ち着け! 期待しすぎるな! 大丈夫、これはおうちデート! そういう雰囲気になったらってやるってことで!)  そう自己暗示をかけ、なんとか気持ちを落ち着かせる。いつも無条件で期待しすぎていたダイキとしてはかなり成長したと言えるだろう。 「ところで森山、これ、誰のか聞いていいか?」 「あ……」  玄関を入ってすぐ、靴箱の上にはミニ仏壇が飾られている。そこには手のひらサイズの丸くて可愛い陶器が一つ置かれていて、それを見たほとんどの人は、清めの塩が入っていると思う。  だが、分骨用のソレは、捜一の刑事には見慣れたモノだ。 「……例のばーちゃんです。俺が警察官になったら、安心したみたいで、一昨年あっけなく─まだ元気なじいちゃんがいるんで、寂しくないっすけどね」  そう言って強がってみる。本当は寂しかった。恋人が欲しいと強く願うくらいには──。 「そうか……元気な時に会いたかったな……お線香、あげてもいいか?」 「どうぞ……」  愛崎は慣れた手つきで線香を三つに折り、火をつけてから振って消す。そうして、たちのぼる煙を見ながら灰の上に優しく寝かせた。 (あ……)  火事になると大変だから、線香は寝かせて置くようにと、亡くなった祖母が口うるさく言っていたのをダイキは思い出す。 (嬉しいな……なんか……) ダイキは手を合わせ、目を閉じている愛崎を見つめる。 (立ち姿、やっぱりきれいだな─)  彼が恋人になってくれれば、きっとこの遺骨まで大事にしてくれるに違いない。 「待たせたな」 「いいえ」  そう言ってリビングに通すと、おもむろに、さきほどの大きな紙袋を渡される。 「誕生日なんだろ? おめでとう」 「え、あ、そういえば……」  ダイキも忘れていたくらいだ。当然今日、誰かに話した覚えもない。戸惑うダイキに、愛崎が真顔で説明する。 「……俺がどれだけ年の差を気にしてると思ってる? 誕生日がいつか、調べてるに決まってるだろ」  そう言って憮然とした態度で再び紙袋を突き出してくる。まさかそんなに気にしていたとは思わなかったダイキはおかしくて仕方ない。 「ふふっ! そんな気になります? たった十個くらいしか違わないでしょ?」 「十四だ! 今はお前の誕生日が先にきたから十三!」  ほんとに気にしてないんだなとあきれ顔の愛崎だが、ダイキは彼がプレゼントを用意してくれていたことのほうが驚きで、信じられない気持ちで受け取り、中を確認する。 「え、すご……」  両手で抱えるほどの紙袋の中身は、まさかの花束だった。 「これ、愛崎さんが……」  そう聞くと、照れ隠しなのか、少し怒ったように答える。 「実はさっき思い出して、ここに来るまでに慌てて買ったんだよ。夜に開いてる店でプレゼントってそれくらいしか思いつかなくて……すげー恥ずかしかったんだからな」  そう言って頬をかく。  ずしりと重い花束は、白とオレンジの花、そして緑の葉というさわやかな色合いでまとめられていて、ダイキはあまりのうれしさに言葉も忘れて見惚れてしまった。 「お前に似合う色でまとめてもらった。あーやっぱ、違うのがよかったか?」 「まさか」  ダイキは答える。うれしいに決まっている。不器用な彼が、まさか花束を買ってきてくれるなんて思いもしなかったのだから。 「うれしすぎて、なんか、もう、俺、変です」  脳がフリーズしてしまっている。まるで夢を見ているようで、まだ信じられない。 「そうか……男に花束なんてと思ったが、よかった。意外と似合うもんだな」  そう言って愛崎がうれしそうに微笑む。 「あの、これ、花言葉とか、あったり?」  まさかそこまではないだろうと思いつつも、期待せずにはいられない。 「あるよ」 「まじっすか」  目を輝かせると、愛崎が苦笑しながら答えてくれる。 「白のカスミソウは『感謝』、オレンジのアネモネは、『キミを愛する』──」  ────………… 「い、ま……なんて──」  ダイキは耳を疑う。 見つめると、愛崎もこちらを見つめ返してくる。そして── 「森山、お前が好きだ……ちゃんと、俺と付き合ってほしい」 「…………」  お前が好きだ、その言葉を、ダイキはぼう然と心の中で反芻する。 (好きって……俺のこと、好きって──) 「……なんか、言えよ……はっ……手ふるえてら……告白って勇気いるんだな。知らなかっ──」 戸惑っている愛崎にダイキは花束を抱えたまま飛びつく。 「ッツ──!」 瞬間、ぶわりと花が舞う。 「今のっ……ほんとにホントの本当ですか!?」  うそじゃないですよねとダイキは体を震わせる。その背を、愛崎の手がやさしく撫でる。 「嘘じゃない。ってかもう、分かってただろ?」  そう言って大きな手のひらでダイキの頭に触れ、自分に引き寄せるようにする。 「そうっですけど……やっぱりうれしくてっ」  ダイキは涙が止まらない。もう返事は聞けないと思っていた。でも、愛崎はちゃんと言ってくれたのだ。うれしくて、ほっとして、溢れる涙はあたたかく、やさしく頬を撫でていく。 「……どこっ……俺の、どこがすき、ですかっ?」 「ふ、素直で強引で、あきらめが悪いところ」 「そこ……良いところですか?」  ぐすっと鼻をすすりながら聞くと、愛崎がまた笑う。 「ああ。お前が強引に来てくれなきゃ、ずっと上司と部下だっただろうし……だから、ありがとな」  そう言って愛崎がダイキの唇にキスをする。 「あい、ざきさ……」 「〝全部やる〟って言っただろ?」  俺もお前に抱かれたい──愛崎のその言葉に、ダイキはめまいがするほど興奮した。  寝室のベッドに移動し、気づいた時にはもう性急に舌を絡めてしまっていた。だが、愛崎もそれに応えてくるから、ダイキの熱はさらに上がっていく。 「っ……!」  キスを続けながら愛崎のシャツをめくって頭から脱がすと、目の前にやわらかそうな胸筋が晒される。初めて目にするそこは、ほどよく脂肪がのっていて、思わず口の中に唾液が溢れる。 「……あんたの裸、初めて見る……」 「っ……」 「やわらかくて……すべすべ……」  指を這わせ、厚みのある胸元や、引き締まった腹筋を撫でると、愛崎がみじろぎ、じれったそうにダイキを見上げてくる。 (……そんなもの欲しそうな顔、するんだ……)  ダイキは早くもリミッターが外れそうになるのを耐える。今日は、絶対に怖がらせたくない。だが、ふいに愛崎の手がダイキのシャツをめくり上げ、同じように胸元に触れてくる。 「っ……っん!」  初めて彼から触れられ、ダイキは思わず吐息が漏れてしまう。 「……ガタイ良すぎだろ」  熱っぽい瞳のまま、そのまま下半身に指を滑らせてくる。 「っぁ……ちょ……!」  すでに盛り上がっている部分を布越しに下から上へ弾かれ、腰が砕けそうになる。見ると、愛崎がにっと笑う。 「がっつかないのか?」 「っき、今日は、優しくしたいんですっ」  だが、ダイキの理性はすでに崩壊寸前だ。目の前の彼をめちゃくちゃにしたい欲望が体の中でぐるぐると渦巻き始める。 (今まで一方的だったし、今日こそは、ぜったいっ──!)  優しくするんだと言い聞かせるダイキの首に、愛崎の両腕が巻きついてくる。 「いーから」 「!? っ、ぅんっ!」  そのまま深く舌を絡めて強く吸ってくる。こちらの理性を根こそぎ奪い取っていくような激しいキスに、ダイキも昂っていく。 「あいざきさんっ……ん、いんですか? ほんとに──」  唾液が混ざり合う音を立てながら、ベッドに沈んでいく。額をくっつけ、愛崎が先ほどよりずっと濡れた瞳で見上げてくる。 「いー加減、心臓もたねんだよ……」  そう言って腰をぐっと引き寄せられる。 「ッツ……」  お互いに布越しだが、愛崎のそれも、硬く、熱く湿っているのが分かる。 「……分かるだろ? 俺も、お前がほしいんだって。だから森山、俺がまたびびって、やだっつっても、やめんな……」 吐息混じりに言われ、ダイキの中で何かが切れる。気づいた時にはスウェットパンツを下着ごと足から引き抜き、やわらかいお尻を乱暴につかんで揉んでいた。 「アッ……!」 だがそのまま後ろに指を入れて、ダイキは驚く。そこはすでにやわらかく湿っていて、ダイキの指にねっとりと絡みついてくるのだ。 (うそ、だろ……)  ダイキはほんの一瞬、脳が完全に停止してしまう。ただぼう然と指でかきまわすと、愛崎がんっと鼻にかかった声を上げてみじろぐ。 「もしかして……自分で準備してきたんですか?」 「……そりゃ、やるってわかってるんだから準備くらいっ……ぁ、え!? バカッ、何考えて──やめっ!」 「はぁっ……うそでしょ。とろとろじゃん」  愛崎が嫌がるのも構わず、ダイキは両足を肩に担ぎ、そこを見つめて手のひらで左右に割りひらく。ジェルも使ったのか、ピンク色のひくつく穴から蜜が垂れ、ダイキを誘う。 「ひゃ、あっ!? ばかっ、うそだろ!? まじで何考えてっぁあっ、ッツ~~~っ!」  下の口とはよく言ったものだ。ダイキの舌にきゅっと吸いついてはねぶるように収縮する。羞恥心に耐え切れず、愛崎がダイキの頭をつかんで引き剥がそうとするが、うまく力が入らないようだ。 「ふっ……ぅっ……!」 ちゅ、ちゅくっと、耳を塞ぎたくなるような淫靡な音をさせ、愛崎の中を舌で蹂躙していく。 「やぁっ……ぁあ、くぅ゛~~っ!」 「やらし。俺の舌にぎゅって吸いついてくる……」  吸うと、下半身をぴくぴくとふるわせながら、身をよじる。 「ふぁ……ばか、やめっ、やだ、や……ッツ!」 「やめなくて、いんですよね?」 「あ、ちがっ……こんなのっ、きいてねえっ……っ!」 体中を赤く染められるだけ染め、愛崎があえぎながら涙目で抗議する。だがダイキにも言い分はある。 「俺のセリフですよっ……逃げ回ってたあんたが、自分で準備してきたなんて、いろんなブレーキ、ぶっ壊れますって!」 「ひぁっん!」  根本まで舌を突っ込むと、聞いたこともない声を出して、全身を震わせる。 (かわいいっ、もう、ぜんぶ、ぜんぶなめたいっ──!) 「んぁ、ッツ、ンッ、~~~ふぁ、ぁあっ! らめっ、それっ、どうじッ……」  だらだらと蜜をこぼしている前も同時に擦ると、ダイキの髪を力任せにつかみ、身を硬くして喘ぐ姿がたまらない。 「くっ……ぅんっ、ん゛っ、ンッ」 「かわいい……」 「──ッツ!?」  ちゅぽっと舌を引き抜き、そのまま下から上に竿を擦りながら舐め上げると、激しく身体をバウンドさせて、愛崎が果てる。 「~~~っ、はぁ、はっぁっ……ッツ……へん、たいだろっ……おまえっ……」  小さく身体をふるわせたまま、涙で濡れた顔で睨まれたダイキは、完全に理性を失ってしまう。 (抱き潰す──!) 己の服を破きそうな勢いで脱ぎ、口元を拭ってから捨て、ダイキは愛崎に覆いかぶさる。 「ッツ!? おまっ俺いま、イッたばっか──あ! ぁア゛~~~!!」 「はっ、なんですかこれ、中、やばっ」  あの日とぜんぜん違うのだ。固くて緊張していた蕾が、今や柔らかくダイキを包み込み、まだまだ足りないと、甘えるようにしゃぶりついてくるのだ──。 「やばい、腰、止まんないっ」 「ばかっ、いまだめだっ、まじで──あ、ぁ゛はっん!」  今度は切ない声を上げて背中をしならせる愛崎に、ダイキは欲望が加速してしまう。 「あいざきさんっ」 脇の下から肩をつかんで抱きしめて、上に逃げられない様にしてから何度も何度もバカみたいに腰を振りたくっていく。 「ああ、ああっ、ばかっつ、だめだって、こんなのっ、また、すぐっ──、く、いくからっ゛ア!」  びくんっと再び身体を痙攣させ、愛崎がもう一度イク。 「っつ……はぁ、はっ……っ……」  快感にふるえる身体を見て、ダイキは確信する。繋がったまま愛崎に覆いかぶさり、紅潮した頬をやさしく撫でる。 「……愛崎さん。今かるく後ろでイキましたよね?」 「ッツ──!」  その言葉に、さらに顔を赤くし、悔しそうに唇を噛んで腕で顔を隠してしまう。だが、ダイキは逃がすもりはない。 「いつからここ、触ってたんですか? 昨日今日でこんなならないでしょ?」  思い知らせるように腰を動かすと、ねちりとやらしい音が出て、愛崎が声を耐える。 「愛崎さん」 「……ッ……」  逃げられないと悟ったのか、観念したように口をひらく。 「おまえに、最初に、抱かれたときっ……」 「っつ……最初って……半年は経ってますよ」 「……感覚が、すげー残って……忘れられなかったんだよっ……!」  枕に顔を埋め、怒ったように叫ぶ愛崎に、ダイキの中で得体の知れない何かが目覚めてしまう。 「……じゃあずっと、俺に抱かれたくてたまんなかったんだ?」 「っつ……」  わずかだが、愛崎が小さくうなずく。 「……なら全然足りないですよね? 半年分、欲しいでしょ? ここに」  ごくりと愛崎ののどが鳴るのを、ダイキは見逃さなかった。 「ぁあっ、くぅ゛っ、んは、ぁア~~~ッ!」  愛崎をうつぶせにし、ダイキはばすばすと腰を打ちつけていく。肉棒でかき回せばかき回すほど、いやらしく絡みついてくるから、加減なんてできるわけがない。まさか愛崎が、自分とのセックスが忘れられず、ここまで開発しているなんて思いもしない。 「愛崎さん、またかるくイキました?」 「もり、やまっ、もう、んっ……」  懇願するように肩口に振り向いた顔にキスをし、体中を撫で、胸を揉み上げ、快感に上を向いた乳首をぎゅっと指でつまみながら、腰の動きを速めていく。 「ッツ! ぁっ! はあっ、もうっ、ああっ」 「きもちい? ねえ、あいざきさんっ」 「あ、だめだっ、これいじょうは、へん、になるっ!」  そう言って逃げる腰をとらえて、なおも奥に叩きつける。 「もうとっくに手遅れでしょ!」 「ひぅっくん!」  もう何度目かわからない。精液と汗で濡れた体は煽情的で、ただただダイキを受け入れては、終わらない快感に身をよじる。 「ああ、あ、あ、あ、あだめだっ、なんか、なんか、ほんとにっやばいってえ!」  シーツをつかみ、なにかを訴えかけるように振り向くが、ダイキはもう止まるつもりはない。  根本まで埋めたまま、愛崎の体を丸ごと揺さぶる。 「あっ! ふかっぃ!──」 「奥、すごいきゅんきゅんしてる。いきそう? いきそうでしょ、あいざきさんっ」 「ちが、んん、は、ぁ!」 「違わない」 「ひぁっ」  左腕をつかんで後ろに引いてから上体を起こさせ、もう片方の手で玉袋をつかみ、前立腺をいやというほど意識させる。 「やぅっ!」 中を出入りする肉棒に前立腺が擦りつけられ、潰されたソレが、ぞくぞくするような快感を愛崎の全身に送り届ける。逃げたくても、逃げることができず、愛崎はただ、揺さぶられるままに声を上げてしまう。 「ぁあ、もうっよすぎて、まじで、だめンなるっ!」 「はは、気持ち良すぎて、やだ?」 「ぅんっ、アッ! そこっ」  浅いところを擦ると、後ろがキツく締まる。 「ッツ、ここ、いい?」 「んっ、ぁいぃ、いいからっ、だめッて──!」  締めつけに負けじと引き抜き、ごりごりと膨らんだ前立腺を潰していくと、愛崎がシーツをぎゅっとつかみ、身を縮ませていく。 「あいざきさん、かわいい、すき、すきですっ」 「ぁ、おれもっ」  そう言って身体をひねり、ダイキの唇にキスをする。 「すき、おれもすきだっ、もりやまっ」 「ッツ──」  ダイキはあやうくイキそうになって焦る。こちらのすべてを受け入れ、好きだと言われると、こんなにも愛おしくなるのかと、たまらず正面から抱きしめ直す。 「愛崎さん、大好きですっ!」 「ぅんっ──」  そう伝え合って重ねるキスはとびきり甘い。 「あいざきさんっ! イくっ、いっしょに──」 「──あぁ゛っ! ッツ! ~~~~ッ!」  ガクンッと激しく体を痙攣させ、愛崎が後ろを締めつけてくる。ダイキも搾り取られるようにゴムの中に射精した。 明け方、愛崎の寝顔を見ながら、ダイキはベッドに持ち込んだスケッチブックに鉛筆を走らせる。出社まで、まだだいぶ時間がある。 「ん……」 「あ、おはようございます」 「?……あ、お前、昨日──」  愛崎は一瞬ぼーっとしていたが、ふいに起き上がり、ダイキの首に両腕を絡める。 「よくもやってくれたなっ! やりすぎなんだよっ! お前は!」  結局合計で五回もヤッたのだ。愛崎が泣き顔のままブチ切れるまでしたのだが、それがなければもっと回数を重ねていただろう。 「わーごめんなさいっ──てあれ? 痛くない?」  そう言うと愛崎は腕の力をさらに抜き、甘えるように身体を寄せてくる。 「あ~ちからでねえ……ケツも腰もいてえ……」 「う、すみません。あまりにも可愛くて」  そう返すと、愛崎が真剣な顔で言う。 「……変態だったんだな。お前」 「なんでですか。俺はただ、年上の男の泣き顔に興奮するだけです」 「…………」  そう言うダイキを呆れた顔で見るも、愛崎が離れる気配はない。むしろ、腕を回したまま体重を預け、スケッチブックをのぞきこむように目を落とす。 「ふ……俺こんな安心した顔して寝てたのか」  そう言って、ダイキの肩に頭をのせる。 (ッツ! あーもう、さっきからかわいいっ! めっちゃ甘えてくるじゃんっ!)  だが、ダイキは内心気恥ずかしく、平静を装う。 「ええ、ぐっすり寝てましたよ──」  俺のおかげですね、などとドヤ顔で話していると、愛崎が耳元に口を寄せて囁く。 「好きだ」 「──ッふはあ!?」  変な声が出てしまった。囁かれた右耳が熱い。 「ぶっ! その顔っ!」 「低音で囁かないでくださいよっ!」  愛崎はツボに入ったのか、おなかを押さえて笑っている。 「いや、なんか言いたくなって……ってか描かなくてもいいだろ。これから何度も見るんだから」 「え──?」  ハッとするダイキの頭を愛崎が優しく撫でる。 「付き合うんだよな? 俺達」  にっと男らしい顔で愛崎が笑う。  頬が熱い──。  そっか。付き合うのだ、俺達は──。 「ッツ──、は、はいっ!」  ちゅっ、とキスをして照れて笑い合い、二人は出勤時間ギリギリまで抱き合って眠った。                    完

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