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第34話 同窓会

 花楓とのラブラブな日々を過ごしていた。そんな時に、高校の同窓会のお知らせのハガキが来た。  きっとこの前のことで、気になっているんだろうね。そう思ってリビングでハガキを見つめていると、ヒョイっと奪われてしまった。 「同窓会、行くんですか」 「うん、行こうかなって」 「ふ〜ん、送り迎えはする。但し、お酒は禁止です」 「なんで?」  そう言われて後ろを振り向くと、風呂上がりで髪を無造作に拭いている彼が目に入る。  正直、水も滴るいい男すぎて目のやり場に困る。 「からみ酒をするからです……しかも、厄介なやつ」 「そんなのし……てないです」 「飲まないで、ね?」 「は、はい」  優しく言っている間に、従うことにした。だって完全に目が笑っていなくて、少し怖かったから。  もしかして……嘘でも、透真と付き合っていたこと根に持ってる? そんなまさかね……流石に、そんなはずないよね。  同窓会当日のこと、僕は彼に車で送ってもらった。彼は車に残って待っていると、言って譲らなかった。  すごく頑なに、爽やかな笑みを浮かべていた。そのため、それ以上言うことが出来なかった。僕は貸切になっている居酒屋に入る。 「湊〜こっちだ」 「うん! お待たせ!」  そこで既に座って談笑している透真に、話しかけられた。僕は靴を脱いで当たり前のように、隣に座って輪に入る。 「みんな、久しぶり」 「広瀬くん、久しぶり〜」 「ホントだよ! 卒業してから、連絡なかったし」  そんな感じで談笑していると、全員集まったようなので同窓会が始まった。同窓会か……みんな優しくしてくれるけど、高校最後は完全に精神的に可笑しかった。  だからか、なんとなく距離を取ってしまっていた。それでも誰もそれには触れずに、終始和やかな雰囲気だった。  そんな時だった。僕らの元に少し申し訳なさそうに来た同級生がいた。カフェで話しかけてきた二人だった。 「あー、広瀬くん。あの時はごめんね」 「お前は少し、考えてモノ言えよな」 「えー! ごめんね、あの後。彼氏さん、大丈夫だった?」 「うん、大丈夫だよ。気にしないで」  本当に反省してるようで、僕も別に怒っていない。でも隣に座っている透真が、不思議そうに聞いてきた。 「社長が、どうしたんだ?」 「あー、その……僕らが付き合っていたことが、バレて……ちょっとね」 「……おまっ! バレたって、しゃ……社長にか!」 「うん、てへぺろっ」 「可愛く言っても、ダメだ!」  若干、透真が怯えていて面白かった。だって顔面蒼白な状態で、完全に酔いが覚めたようだった。  そこまでガチ怯えしなくても、そんなに怒ってなかったし……僕には優しいから、何の問題もない。 「だって、仕方ないじゃん。目が笑っていなかったもん」 「だからか、社長……最近湊と話していると、睨んでくるんだよ」 「だ、大丈夫だよ〜優しいから〜」 「おまっ! 他人事だと思って!」 「僕には危害ないし〜」  そうなのか……僕には優しく微笑むから知らなかった。やっぱ、若干怒っているのかな? 「薄情者! そんな風に育てた覚えはない!」 「ふふんだ〜」 「あーもう、俺の平穏な社会人生活が!」  そう言って頭を抱えて項垂れていて、完全に落ち込んでしまっていた。そんなに考えなくても、特に何もされないでしょ……多分。  だって別に好きで、付き合っていたわけじゃないし。ちゃんと話したし、そういえば蒼介にも言った時少し怒っていたっけ。  でも別に二人とも、仲良かったし。大丈夫でしょ、そう思って僕は烏龍茶を口にする。美味しいなと思っていると、同級生に話しかけられた。 「社長さんなのか?」 「うん、そうだよ。僕と透真が働いているとこのね」 「すごー、玉の輿じゃん」 「そう言われると、あんまり考えたことなかった」  そう言うと少しため息をつかれていて、どうしたのかな? そう思っていると、項垂れたままの透真に聞かれた。 「ちゃんと言ったのか……全部」 「うん、言ったよ。カモフラだったって」 「なら、いいんだけど……社長、怖いから」  僕たちがそんなことを、話しているとそれを聞いていた同級生たちがざわめき始める。あっ……カモフラだったこと内緒だった。  そう思った時は時既に遅しで、完全に変な目で見られ始める。それから警察官の同級生に、遊び半分で尋問される。 「お前ら、付き合ってなかったのか?」 「うん、付き合ってないよ。ね、透真」 「ああ、あの頃。恋愛する気なくてさ、悪いな」  そう言って僕たちは、料理を食べつつ答える。ジト目で見られていても、僕たちは平然としていた。  するとため息まじりの同級生たちが、目に入ってくる。でもそんなの、僕たちには関係ないと完全に開き直る。 「お前らに恋してた奴らが、報われないだろ」 「もう、時効でしょ。知らないけど」 「知らないなら、言うなよ!」  そんなこと言われてもね……透真結婚してるし、僕はプロポーズされたし。プロポーズか……今回は、上手くいくといいな。  でも今が幸せだから、後ろ向きにならないよ。あー……急に彼の顔が見たくなってきて、声が聞きたくなってきた。  そう思っていると、αの同級生から意味深なことを言われる。僕は意味が分からずに、ポカンとしてしまう。 「あのさ、広瀬から違う香りしてるけど。番になったのか? 例の恋人さんと」 「それ前にも、言われたけど……なってないよ」 「湊、ほんとに番になってないんだよな。俺には分かんないけど」 「うん、なってないよ。不思議なこともあるよね」  それから僕たちは、若干呆れ気味の同級生たちと談笑していた。終始和やかな雰囲気で同窓会がお開きになった。  僕たちが帰ろうとすると、少しざわつき始める。見てみるとそこには、優しい笑みを浮かべた彼が立っていた。  僕は立ち上がってそのまま、彼の方に笑顔で向かう。透真が怯えていたけど、気にしないことにする。 「帰りましょう」 「うん、じゃあ。またね」  そう言って笑顔で、手を振って彼と手を繋いで店を後にする。車に乗り込んで、僕は気になって聞いてみることにする。 「僕から花楓の匂いがするって、言われたけど。何か知ってる?」 「あー……香水かな」 「香水か……なるほど、そう言うことね」  この時、若干違和感を覚えたけど気にしないことにする。でもこの時、違和感をしっかりと確認すべきだったと思ったのはもう少し後の話。  まあ分かっていても、結果は何一つ変わらないから問題ないけど。だって、僕たちは相思相愛なんだから。

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