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第68話 おもちゃ

「後、もう少し……よしっ……これって」 「湊! 何か大きな音が! ……これは」 「……なんていうものを」  僕が苦労して取った箱の中には、なんというか大人のおもちゃが入っていた。使ったことはないけど、見なかったことにしたかった。 「見なかったことにするよ……」 「えー、興味ない?」 「なんか怖い」  僕がそう言うと、あからさまに落胆していた。こんなのを僕に、挿れるつもりだったの?  僕は丁寧に仕舞って、彼に箱を渡して寝室を後にしようとする。しかし腕を掴まれて、ニヤニヤして言ってきた。 「湊、今日どれか使わない?」 「……怖いよ」 「大丈夫、小さいやつ使うから」  そう言う問題じゃないよ……というか、チラッと見たけど。彼の凶器の方が、デカかったよ。 「と、とにかく……それは置いておいて、ご飯食べよう」 「……分かった」  僕が彼の顔を見て言うと、何故か顔を赤らめていた。彼は咳払いをして箱を元の位置に戻して、脚立を仕舞っていた。  僕の腕を掴んでリビングへと、連れて行ってダイニングの椅子に座らせた。終始顔を赤らめて、キッチンへと向かった。 「変なの……」  僕はボソリと呟いて、料理をしている彼を見つめる。ドンドンと運ばれてくる料理は、どれも美味しそうで楽しみだ。  そんな時だった。オーブンが鳴ったかと思うと、中から見たことがない料理が出てきた。 「それ、何?」 「チキンチーズホットパイ」  マグカップに、パイ生地かな? が乗っていて、オーブンで焼いたようだった。香ばしい香りがして、一気に食欲がそそられる。  準備が整ったようで、僕たちは向かい合って食事を取る。パイ生地にスプーンを入れると、サクッと音がして中にはクリームシチューが入っていた。 「あふっ」 「ふふっ、しっかり冷まして食べて」  一口に入れると、熱くて少し舌を火傷してしまった。それでも美味しくて、僕は一気に食べてしまった。  それを見た彼が自分の分を、僕の前に置いた。不思議に思って見ると、優しく笑っていた。 「食べていいよ」 「花楓の分じゃ」 「作ればまだ、あるから食べて」 「うん、分かった……」  僕を見て微笑む瞳が、いつにも増して綺麗で直視できなかった。思わず目を逸らして、食べると少し冷めていて食べやすかった。  冷めてきていても、美味しくて直ぐに完食した。どうしてこの人は、こんなにも色々と出来るのだろうか。 「花楓は昔から、料理とかしてたの?」 「あー……食べさせて、貰えなかった時にな」 「あっ……ごめん、嫌なことを思い出させて」  彼の言葉を聞いて、また僕はデリカシーのないことを言ってしまったと後悔する。下を向いていると、彼が近づいてきて抱きしめてきた。 「いいよ……寧ろ、もっと聞いてほしい」 「えっ」 「湊が言ったんだろ。お互いに歩み寄るのが大切だって」 「花楓……うん、もっと教えて」  僕がそう言うと、見つめ合って軽く触れるだけのキスをした。舌を入れてきて、いやらしい水音が響いていた。  柑橘系の香りが漂ってきて、彼の顔を見ると余裕のない表情をしていた。僕は彼の腕にしがみついて、快楽に身を任せる。  頭を支えてくれていて、僕たちの声が漏れてくる。もっとしてほしかったのに、何故か止めてニヤニヤしている。 「とりあえず、片付けするから。その前に……これに着替えて」 「えっ……あっ、うん」  僕のおでこにキスをして、紙袋を渡されたからそれを受け取る。僕がよく分からずに、頷くと彼は鼻歌を歌って片付けをしていた。  僕は紙袋の中身を見て、驚愕のあまり一瞬フリーズした。待って……これって、何? 僕の目が可笑しくなったのかな?  紙袋の中には、うさぎのコスプレが入っていた。僕は紙袋と彼を何度も、見つめて僕は混乱しすぎて何も言えない。 「湊、着替えて」 「えっと……どこからツッコむべきか」 「着方、分からないか」 「そういう問題じゃない」  どうしよう……混乱しているのもあるし、彼に全く言葉が通じない。僕がため息をつくと、近づいてきて抱きしめられた。  頬を触られて腰を支えられて、顔を見つめられる。恥ずかしくなって、目を逸らしてしまいそうになる。 「湊、着てくれないか」 「で、でも……恥ずかしい」 「……無意識なのが、凄いよな」  僕が目を見て言うと、彼は顔を赤らめていた。どうしたんだろうと、思って見つめていた。  すると貪るような激しくて、でも優しいキスをされた。腰を支えられてなければ、立っていられなかっただろう。  彼とのキスは気持ちよくて、何も考えられなくなる。全身の力がなくなって、しがみつくことしかできない。 「湊、着てほしい」 「うっ……分かったよ」  ウルウルした瞳で言われたら、断ることなんて出来ない。彼はそれを、分かって言っていて……。  僕だって分かっているけど、それでも彼の望みを叶えてあげたい。今までわがままを言いたくても、言えなくて一人で苦しんでた。  不器用で自分の心を伝えるのが苦手で、虚勢を張っていて繊細で……。僕に出来ることなら、やってあげたいと思った。 「ほら、脱いで」 「う、うん……自分ででき」 「決心が鈍る前に、着させる作戦」  服を脱いで下着姿になって、急激に恥ずかしくなった。彼に背中を見せてモジモジしていると、急に後ろから抱きしめられた。  首筋を舐められて、変な声が出ると耳を舐められる。上半身の下着を、綺麗に脱がされて胸を触られた。 「んっ……触る必要ある?」 「俺が触りたいから」 「なっ……んっ……あっ」  気がつくと下の下着にも手をかけられていて、下着越しに触られる。首筋や耳にキスや、甘噛みをされて体がビクンと反応する。  もどかしい……彼に抱きしめられている腕を掴んで、只々快楽に溺れるしかない。徐々に強くなってくる柑橘系の香り。  僕のお尻に当たっている彼のものが、大きくなっていた。彼も興奮しているようだった。 「さあ、そろそろ着よっか」 「う、うんっ……」  一気に下着を下ろされて、完全に主張しているものが見える。なんか自分のなのに、変な感じ。  彼に渡されたのは、完全に女の子の用の下着だった。少し透けている、ピンクのフリルがついた……。  彼を見ると優しく微笑んでいて、その表情が綺麗で何も言えない。僕のことを、食い入るように見つめている。 「早く、穿いて」 「これを……僕が」 「クリスマスでも、穿いてただろ」  耳元でそう呟かれて、頷くしか出来ない。穿こうとするけど、手が震えてしまった。彼が優しく微笑んでくれて、穿かせてくれた。  上の下着もあるみたいで、ニコニコしながら着せてきた。ピンクのスケスケで、どう考えてもエロいやつ。  もしかしたら、僕が彼の何かを目覚めさせてしまったのかもしれない。激しく後悔したけど、今更ダメとは言えない。  言われるがままに、流れに身を任せることにした。一番の問題は次である……布面積少なすぎて、ほぼ裸なんですが……。 「これって、服なの……?」 「もちろん」 「布……少なくない」 「……まあ、大丈夫」  何が? 何を根拠に大丈夫なのかな? ここまできて、止めるのは無理だもんね。目を逸らしている彼から、衣装を取って着替え始める。  黒と白の背中も、お腹もぱっくり開いた衣装である。丈も短いからスースーして、変な感じがする。

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