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最終話 家族

「あのさ、ずっと考えていたんだけど。少しずつでいいから、もう少し砕けて話さない?」 「砕いて?」 「うん、仕事以外のさ。こういう時間はさ、気を遣わないで話したいなって」  僕がそう言うと、三人は何やら考えていた。すると彼は優しく微笑んで、僕の提案に乗っかってくれた。 「確かにな……では、敬語を止めるか」 「そうで……だな」 「というか、社長が一番年下じゃん」  律さんの言葉に確かにと、全員が頷いていた。それから少しずつでも、砕いて話せるようになったと思う。  それから僕は産休をもらうまでの間。必死に業務をすることになって、色々と引き継ぎをしていた。  早いもので十月になって、産休に入った。先日、性別が男の子だと分かって楽しみになってきた。 「だいぶ、大きくなってきたな」 「うん……そのせいか、少し痛いんだよね」 「あー、妊娠痛ってやつか」  妊娠痛っていうのは、大きくなってくることによって起きる症状である。張りや軽い痛みが、生じてくる。  そのため先生に処方された塗り薬を、彼が鼻歌まじりで塗ってくれている。薬と彼の優しさで、少し痛みが和らいだような気がした。  優しいお父さんでよかった……僕は嬉しくなって、彼の肩に頭を乗せて笑いかける。僕たちはしばらく見つめ合っていた。  ――――五年後。  生まれた子供に、湊の花でそうか。と名付けて、僕たち家族は平和に暮らしていた。帝家の直系の子は、全員名前の最初に花をつけるのが慣わしだ。  しかし彼とお義父さんの計らいによって、今までの帝家を変革しようとなった。そのため、花を最後につけることになった。  僕が自分の部屋で、本を読んでいるとドアが開いた。そこにはニコニコ笑顔の、湊花が立っていた。 「ママー、ご飯だって」 「うん、行こうか」 「抱っこ!」 「ごめんね。湊花の妹がお腹に、入ってるから抱っこ出来ないんだ」  今現在、女の子を妊娠している。後一ヶ月ぐらいで、生まれてくるからワクワクしている。  湊花は僕の言葉にニコニコして、素直に頷いてくれた。真っ直ぐに育ってくれたみたいで、嬉しく思っていた。  金髪でどことなく顔は僕に似ていて、瞳は綺麗な黒目になった。世界一可愛くて、愛おしい存在。  子供ができると強くなるっていうけど、ほんとにそうだと思う。子供と一緒に、育っていく感じが楽しい。  僕は息子に手を引かれて、キッチンでご飯を作ってくれているパパの元へと向かう。僕たちに気がついて、優しく微笑んでくれていた。 「二人とも、手は洗った?」 「湊花、手洗おっか」 「うんっ!」  僕たちは笑顔で手を洗って、パパの作ったご飯を食べた。そこで湊花に食べさせていたんだけど、不思議そうに聞いてきた。 「赤ちゃん、ご飯食べなくていいの?」 「ママが食べると、赤ちゃんも食べるんだよ」 「そうなの! はいっ! 食べて!」 「ありがと、優しいね」  僕はそう言って、差し出されたご飯を食べる。ほんと優しくていい子に、育ってくれたよね。  僕がそう思って頭を撫でると、パパから視線を感じた。見てみると、少し不貞腐れているようで可愛い。 「どうしたの?」 「ママには俺が食べさせたい」 「……子供に嫉妬しないでよ」  もうっ……三十歳になっても、全然成長していないみたい。まあ可愛いから、いいかなと思って微笑み合う。 「もうっ! パパもママも、お食事にちゅうちゅうして」 「可愛い……集中ね」 「湊の次に、天使だ」  そんなことを真面目に言っている人は、一旦無視することにする。晩御飯を終わらして、僕たちはソファでくつろいでいた。  パパの膝の上に湊花が座って、童話を読んでいた。そこで僕は気になったことを、聞いてみる。 「そういえば、この子の名前どうしよっか」 「ん〜そうだな……結花なんてどうだ」 「結花か……可愛いね。あっ、今蹴った」  名前を呼ぶとお腹が動いて、喜んでいるように感じた。そこで、うたた寝していた湊花が起きた。僕のお腹を見て、不思議そうに言っていた。 「ゆいかっていうの?」 「そうだよ。湊花はお兄ちゃんに、なるんだよ!」 「お兄ちゃん! 輝兄みたいな感じ?」 「そうだよ〜」  興味津々に僕のお腹を摩っていて、日々息子の成長を感じている。時々思うんだ……お父さんとお母さんにも、孫を見せたかったって。  天国で、見守ってくれているとは思うけど……それでも、直接抱かしてあげたかったな。  親孝行出来ないままで、旅立ってしまったから……もっと色々と一緒にいたかった。だから、今後は湊花と結花に愛情を注いでいこうと思う。 「湊、どうした? 泣いてるのか」 「大丈夫……幸せだなあって思って」 「俺も幸せだよ」  当たり前のようにキスしてこようとした。だから、すんでの所で両手で防御した。するとムスッとしていた。 「湊は子供ができたら、俺がいらなくなったのか」 「人聞きの悪いこと、言わないでよ」 「だって、構ってくれない」 「子供の前では止めてって、いつも言ってるでしょ」  そう言うとムスッとしていて、この人は変わらないな……と思っていると、湊花がジーとこっちを見ていた。 「湊花、歯磨きしてきて」 「はーい」  僕がそう言うと立ち上がって、洗面所に向かった。それでもまだ、ムスッとしていてほんとにもう……この人は。 「花楓、いつまでも拗ねないで」 「だって……構ってくれないから」 「もうっ……子供優先に決まってるでしょ。まあ、湊花が生まれる前から大きな子供がここにいるけど」  僕がそう言って頬にキスをすると、嬉しそうに微笑んでいた。優しくキスをしてきて、僕らは抱きしめ合った。 「俺が子供なら、優先だぞ」 「そう言うこと言わなければ、優先にするんだけどなあ」 「うっ……キヲツケマス」 「見事な棒読み」  また不貞腐れてしまったけど、僕らはお互いに見つめ合ってもう一度キスをした。隣には優しい夫と素直な息子がいる。  お腹の中には結花がいて、これから起こることが楽しみだ。辛いことも楽しいことも、四人で乗り越えていく。  でもこれだけは、はっきりしている。何があっても、僕の側からいなくならないでね。  ――――絶対に、離さないからね……僕のα(花楓)

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