8 / 10
⑧
「あ…っ、あぅッ」
佐伯は俺の足の付け根を刺激しながら先端を咥えると、ジュルっと音を立てて吸ってきた。
「い…っ、佐伯さん!イッちゃう…!ぁぁっ…イク、イキます…!!」
「いいよ。昨日は散々焦らしたからさ、最初はご褒美あげる。気が向いたらまた寸止めしてあげるよ」
「~~……っ、ンン……はぁ…っ!」
先端を優しく咥えられながら、舌で裏腹を刺激され、指も動かされると射精感が一気に襲いかかり、背をのけ反らせて欲を吐き出した。かなり早い段階ではあったが、絶頂出来た事に安堵した。
「はーい、1回目」
しかし、直様動き出す口の動きに、俺は拘束具を激しく鳴らしながら暴れまくる羽目になる。
「ぃぁぁぁァァッ!? いっ、きました!!イキましたァァ!!」
「うん、知ってるよ」
「離し…っ! ひゃぁぁぁぁあ!!」
止まらない動きにビクビク反応を示しながら暴れると、佐伯は無言のまま執拗に口と指を動かしてきた。
「やぁぁぁ…っ、佐伯さっ…今ダメぇぇぇっ!!」
「そうだろうね。イッた後は敏感だもんねぇ」
「-----ッッ!! だっめだって…離してぇぇ…!!」
小さく音を立てながら佐伯の舌先で先端を弄られると、太腿が痙攣し始めた。
「ぁあ…っっ!!イクッッ…!!」
「どうぞ」
「~~ッッ、…ンンンン!!」
ビクビクと再び佐伯の口内で絶頂すると、あまりの快感に口角がダラリと下がり、荒い息が漏れた。
「はい、2回目…カイくん、次は足だけでイこ?」
ゴクンと俺の欲を飲み込んだのであろう佐伯は、トロンと熱を帯びた表情で俺を見つめながらそう言うと、再び指を動かし出した。
「ひッ、ァァァァアアア!!」
ガクンと背中が反り、快感から逃れようと激しく体が反射的に暴れ出す。イッたばかりの体は、昨日眠る前に似た感覚になり始めた。
「ひぁぁぁぁあ…っ、らめっ…さわ、ら、ないれぇぇっっ」
「可愛い…カイくんちゃんとお話し出来なくなってるよ?気持ち良いの?」
「きっ、もちぃぃっ、おかしくなるからぁぁぁぁ…っ離し…ッッ」
「…」
泣きながら訴えると、佐伯は無言のままローションを追加して足の付け根をマッサージするように触りながら、じっと俺を見つめてきた。
「…っあぅぅぅ、見んなぁぁ…!やめっ、ひぁぁ…っ」
「カイくん、俺の事見てて。顔背けちゃダメ」
なんつー羞恥プレイだよと思いながらも、逆らったらどうせ無理矢理顔を掴んでくるんだろうと思い、じっと見つめてやると、熱い息を漏らした佐伯と目が合った。本当に顔は格好良くて、見ている分には目の保養にはなる。
「カイくん可愛い。足、気持ち良い?」
クニクニと指の腹で少し力強く揉む様に触れてきたり、反対にサワサワとかなり弱いタッチでくすぐってきたり。
ピンポイントで同じ箇所を執拗に触られているのに慣れる事が出来ずにビクビク体を跳ねさせながら、俺の口からは甘い声が漏れ続けた。
しかし昨日とは似た様な感覚にはなるものの、そこで絶頂する気配がなく、ただただ苦しい時間が続いた。ピンと足首が伸び、太腿がピクピクと痙攣してもあと一歩届かない様なもどかしいような体の感覚。
「…昨日は相当出来上がってたのかな?今はイケなさそうだね」
「ぁぅぅ…っぁ、…はぁ…っ」
俺の様子を見てそう言うと、指の動きが止まり、休憩時間が与えられた。
「足、どうだった?」
「き…もち良かったぁ…けど、イケない…っ」
「うんうん。じゃあやっぱり昨日みたいに何度も寸止めしてイカせまくって感度上げるしかないか」
ポソっと恐ろしい事を囁くと、疲れ切っていたはずの俺は全力で暴れて制止を求めた。
「嫌だ…っ!あれだけはやだっ…」
「んー?辛かった?面白いくらいに乱れてくれたもんね。可愛かったよ?」
クスッと俺を見下ろしながら笑う顔は相変わらずイケメンだが、腹が立って仕方ない。
それが顔にも出たのか、サワッと再び足の付け根や自身に触れられた。
「ぁあ…ッッ!やだ…佐伯さん!お願い…っ」
「今日は足で絶対イカせてみせる。俺決めた事は曲げないから、安心してね」
「不安しかないんだけど!!まじでやめて!!」
「焦ってるカイくんも可愛い。本当に大好きだよ?」
「うるさい…っ!本当に好きならこんな事しないんだよ!!」
「愛の表し方は人それぞれだよ。うるさいお口は塞いじゃうよ?」
そう言うと、少し移動した佐伯は俺の唇に優しく重ねてきた。
「んぅ…」
ゆっくりと片手で足の付け根、もう片方の手で脇腹辺りをコショコショと優しくくすぐりながら舌を入れられると、また一気にスイッチが入った気がした。
「んっ…んぅ、ぅ…」
入れられた舌を噛む勇気もない俺はゆっくりと絡ませながら深いキスを続けた。
「…ふふ、気持ち良いと少し素直になるの可愛い。このまま俺の愛撫をずっと受けててね」
唇が離れると、反抗する力は半分くらい減ってしまった。認めたくないが気持ち良いのに流されるのは確かで。
「……っ」
フィッと顔を背けると、佐伯はローションを手に取って俺の上半身へ直接垂らし始めた。
「んっ」
「冷たい?平気?」
こういう時に体を気遣う言葉を使うコイツは腹立たしいが、俺は平気の意味を表してコクリと小さく頷いた。
「今からまたポカポカにしてあげるからね」
「…~~ッッ、---っつ、」
ヌルヌルと胸元へ広げられるローションと、指の動きにピクピクと筋肉に力が入った。
「気持ち良いでしょ」
クルクルと乳輪周りを人差し指でなぞられると、つい体は期待してしまう。
「…ねぇカイくん、どうしたの?可愛い乳首が主張してきたけど。触って欲しい?」
「…っ、別に…」
体も素直に反応していたことを告げられると恥ずかしくなり、キュッと口を結んだ。
本当は触って欲しいが、中途半端な理性がおねだりする事を妨げた。
「あ、そう。じゃあ触らないね」
「あ……」
自分でも分かる程に情けない声が出るも、佐伯は特に何も言うことなくクルクルと乳首の周りを愛撫し出した。
少しでも触れて欲しくて体を捩っても上手く避けられ、一瞬も触れてもらえる事はなかった。
胸元から手が離れ、広げられた腕の下へ滑り込むと、たっぷりとローションのついた指は脇をマッサージする様に動かされた。
「んはぁあっ…やっやぁぁっ」
「カイくん脇も弱いもんね。こちょこちょ~」
「ひははは!くすぐんなぁぁ…っだめ、ま、待って…ッッ!!」
「じゃあ腕下ろしてごらん?ほらほら~」
クイクイッと脇の窪みに人差し指を差し込まれるとガクンと体が跳ねた。
「ぅ…っ、ぁあぁァッ!!」
「ふふ、可愛い。いっぱい突いてあげるよ」
人差し指で突く動きに変わると、脇から少しずつ移動して胸の横から脇腹へ降りて行った。
「ひぁぁあ…っっ」
「突くのも弱いね。もう何処も弱くなっちゃったのかな?それとも元々すごーく敏感な体なのかな?」
「知らな…っ!!やめろっ、ひはぁっ!!やっ……、ぅく…っひゃははぁ…やだっ」
ジタバタ体を動かして必死に制止を求めると、楽しそうに笑いながら弱い箇所を探る様に指が這いずり回った。
「ぁぁぁあ…っもぉ…ッ」
ローションを追加して余す事なく体に塗られると、次はグニグニと揉む様に脇腹に触れられた。肋骨を一つずつ愛でる様に親指を食い込まされると、激しく悶えた。
「ぎっ……ぁぁぁぁアア!!」
「あは、効いてる効いてる。痛くない?」
「ぁぁぁぁぁあ…ッッ、やぁぁぁぁぁ!!」
「そんなに叫んだら喉痛くなっちゃうよ?」
じゃあやめろよ!!と言う心の声は全て悲鳴に変わり、ブンブン首を振りながら無様に悶えるしか出来なかった。
「うんうん、どんどん敏感になってきたね」
「き…っ休憩…っさ、せて下さ…っ」
「えー?まだ始まったばっかりだからだーめ。俺夕方からお仕事なんだよね。だからそれまでに足でイッてもらわないと困るんだよ」
お前の都合なんて知らねーよ。
今何時なのかは分からないが、夕方から休憩出来る事に安堵しながら、刺激の止まっている今の時間をしっかりと一秒でも大事にする様に息を整えた。
「因みに起きたのが遅かったから今は13時だよ。16時には出たいから準備も合わせるとあと2時間位しかないんだよ」
「2時間も…っ」
「2時間でイケなかったらお仕事帰ってきてからたーっぷりいじめる事になるから、ちゃんとそれまでにイこうね?」
ニコッと微笑む優しい笑顔は、俺にとっては悪魔の笑みにしか見えなかった。
◇ ◆
それから2時間、俺は焦らしと寸止めを繰り返された。
「はぁぁぁ……っっ、ゆる…し、…っイカせてぇぇぇ…」
「あー…ダメだ。もう時間だから俺行くね」
「は…?嘘…っ、やだぁぁあ!!行かないで…佐伯さんっ、置いてかないで!!」
コイツの事だから本当にこのまま放置して行きかね無い。俺は全力でおねだりするように叫んだ。
「ふふ、嬉しいなー。でもこのまま放置されるんじゃないか心配してるからそんな言葉が出ただけだよね?」
全て見透かされていたが、それどころではない俺は泣きながら解放を強請った。
「安心して。流石にこのまま"一人"にするのは心配だからね」
何か含みを持たせた言い方なのは余裕がなくて分からなかった。佐伯は俺の頭を優しく撫でると、準備だけしてくるね、と俺を拘束したまま部屋を出て行った。
約2時間寸止めを繰り返された体は震え続け、何もされていないのに涙も勝手に溢れてきた。
そんな時、スーツに着替えた佐伯と、隣にはもう一人男の人が立っていた。俺を昨日調教してきた人とは別で、初めて見る顔だった。
「カイくん、この子俺の側近で一番信頼してる男の子で関口くんって言うんだ」
「……」
紹介された関口くんと言う男の子は俺と同い年位に見える可愛らしい男性。佐伯の紹介に不満そうにしている様子で、ただ無言でむすっとした表情を俺に向けてきた。
「俺が居ない時にカイくんを誰かに任せるのは少し不安だけど、この子なら一番安心出来るから俺が仕事の間は関口くんと一緒に居てね。カイくんを一人にする方が心配だからさ」
「……っ待って、それは分かったけど…俺、限界…っ」
「うん。安心して、俺の代わりに関口くんがしてくれるから。本当は嫌だけどこのまま放置してカイくんが壊れちゃう方が辛いから」
それなら時間配分をキチンとして仕事前に俺をスッキリさせて行けよ、なんて言葉は心の中にだけ留め、俺は眉を下げて佐伯を見つめた。
関口という男がどんな奴か分からない今、鬼畜責めをしてくる佐伯の方がマシだった。
「カイくん。帰って来たら足でイこうね。それまでは関口くんに可愛がってもらってて。俺がお仕事行く前は『行ってらっしゃい佐伯さん』って語尾にハートを付けて、カイくんからキスして?」
「とっとと行けやテメェ」
俺が何か言う前に口を開いたのは関口で、心底嫌そうな顔をしながら佐伯に対してそう言葉を吐いた。
「……カイくん、お願い。早く言って。関口くんに怒られちゃったから」
「…行って、らっしゃい…佐伯さん…」
ハートの付け方が分からないので困った声でそれだけ告げて、近づいてきた佐伯の唇に軽いキスを贈った。すると一気にパァッと笑顔を見せて、佐伯からもキスを贈られると『行ってきます』と外へ出て行った。
「………」
初対面の男と二人きりになった部屋の空気は重苦しい。さっきまで感度が上がりまくっていたにも関わらず、イキたい気持ちは無くなる位に。
そんな長い沈黙を破ったのは関口だった。
「お前、散々だな。あんな男に好かれるとか。哀れ」
言葉は悪いが、一般的な思考を持っている様子だった。
「……あの、関口さんから言ってくれませんか。解放してくれないかと…」
「監禁する前から何度も言った。悪いけど無理だった、昔からアイツの事は知ってるけど一度決めた事は揺るがさないから」
ハァと溜息を吐いた関口は、かなり大変そうに見えた。が、しかしそんなのはどうでもいい。
「じゃあ…今、こっそり俺を解放して下さい」
「それも考えたよ。けど外に繋がる扉の鍵を外から閉めて出て行ってる筈だから無駄。俺の事信頼はしてくれてるけど、監禁前から止めてたし、完全に信頼はされてないみたいだな」
「……」
「んで、さっき指示されたのは二つ。まずはお前の面倒を見る事。そんでもう一つは散々焦らして感度上げたから佐伯が帰るまでイカせてやってくれって事」
相変わらずツンとしたような表情で淡々と話す関口に冷や汗が出た。
「けど俺が男をイカせるとか意味分かんねーし、この椅子の拘束を外せんのも佐伯だけだからさ」
カチャッと佐伯の鞄らしきものから何かを取り出すと、それを俺に見せつけた。
「勝手に一人でイッといて」
「!?…や、めて下さい…!」
容赦なく自身を掴まれてズボッとオナホを自身に装着されると、スイッチを入れられた。
「ひ…っ!?ぁぁぁああァァァッ!!」
この前佐伯に使用されたローターが玩具初体験だった俺は、吸い付いてくる様な電動のオナホに目を見開いた。
クチュクチュと音を立てながら先端から竿までしっかりと吸い付いてマッサージする様な動きを見せる玩具。
「ダメ…ダメダメ!!佐伯さっ…イク!!佐伯さんっっ!!」
「はいはい勝手にイッといて」
関口は本当に興味なさそうな顔をしながらヘッドホンを装着すると、椅子に腰掛けてスマホを弄り始めた。
「たすけ…ッッ、ぁぁあぁあ!!」
ドバッと勢い良く射精するも、動きが止まる事がなければ、関口も俺に目をやる事もない。
本格的にまずい状況に悲鳴に近い声を上げながら助けを求めた。
「…チッ、うるせーな」
溜息を吐いてこちらへ来ると、ズボッと猿轡を付けられた。
「んぐぅぅぅッ……」
「佐伯が戻るまで頑張れよ、男だろ」
ボロボロ泣いてる俺に冷静にそう告げると、関口はまた椅子に腰掛けて自分の好きな事を始めた。
止まらない玩具と、息苦しさを追加させる口への拘束具にパニックになりながら、俺は大嫌いな佐伯の帰りを本気で望む事になった。
→
ともだちにシェアしよう!