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エピソード4

 門からまっすぐ校舎に続く石畳。  登校時そこを樹と歩いている途中で不意にぶつかって来た子。  ちっさくて目の辺りまて前髪で隠れてて顔はイマイチわからない。  中学生?! かと思ったがそんなわけはなく。普通にうちの高校の制服を着ていた。  余りに可愛いんで声を掛けたら、樹に「カナ、絡むなよ」と止められた。 (絡んでません!)  ツッコんでやろうかと思ったけど。 (およ?)    樹とその子の間に妙な空気が。 (知り合いか?)  二言三言口の中で呟いて、ついでに舌打ち。  その子が茫然としている間に、オレも置いてさっさっと行ってしまう。オレは急いで追いかけた。 (なんだ、なんだ。気になるぞぉ)  とは思ったが、樹がめちゃめちゃ怖い顔をしてるので聞くに聞けず。 「ボクたちも仲良しこよししましゅか~」 「ばーか」  どうでも言い会話で納めた。  そんなこんながあってから。  数日が過ぎて、新学期が始まって初めて体育の授業に出ると。 (あ、あの子隣のクラスだったんだ)  その日、あの子は樹をちらちら見ているようだったけど、二人は話すことは元より近づくこともしなかった。樹も気づかれないようにはしていたが、なんとなく気にしているふうなのはオレにはわかった。    そして、次の体育の授業の時にオレたちは、木陰に座っていた。時間の初めのランニングはサボり、なんとなく上手いことを言ってあとから潜り込む算段だった。  そこにあの子が息を切らしてやってきた。  初めは知らん顔していた樹が、思わずと言った感じで笑いを零す。 (えっ。わら? 笑った?)  いつも仏頂面か皮肉めいた笑いしかしない樹が! (まぁ、つき合い長いオレといる時は笑うけど。たまには? たぶん?)  でもこんなに優しげな顔を初めて見るような気がする。 『相変わらず……』と呟いていた。  やっぱり二人は知り合いみたいだ──オレは邪魔をしてやりたくなった。 「あれ~~見つめ合っちゃったりなんかして、二人は知り合いなのかな~」 『ななちゃん』はおどおどした印象はあるけど、素直で可愛い子だ。オレの周りには絶対いないタイプ。 (なんか~好きかも~)  二人が熱く見つめて合っていたもんだから、邪魔してやろう、からかってやろう的な感じで、間に入ったけど、つい自分を紹介するのに夢中になってしまった。  そして、つい出来心で──前髪に隠れている目を見てやろうと手を伸ばす。 (この子、ぜったい可愛いぞ。オレのカンは当たる! それに……なんだか前に会ったことがあるような)  それは七星が言うように、この間ぶつかった時ではなく。でも自分でも思い出せないようなもやもやした感じ。  が。 「いたたたたっっ」  今までしらっとしていた樹が、いつの間にかオレの後ろに立っていて、手首をぎゅっと掴んだ。 (なにっ。 めっちゃ力つよっ)  それ以上七星に近づくことが出来なかった。 「なに? 樹! 痛いよぉ」 「もう行こうぜ」  樹はそう言うと、手首を離して背を向ける。 「え? 今日体育出るんじゃなかったの? ちょっと待って」  オレも立ち上がって追いかけた。 「ななちゃん、またね~~」  七星に手を振って樹を見ると、樹も一瞬オレを見てまた前を向いた。 (うわっ。なになにっ。めっちゃ睨まれたよぉぉ)
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