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エピソード13
――四月。
二年なり、俺と七星は同じクラスになった。
二人でクラス替えのプリントを見ている時、一瞬顔が綻んでしまいそうなのをどうにか抑えた。
正直嬉しい。
しかし、これ以上近づいてもいいものか。
同じクラスになったら常に七星に視線がいってしまうのはわかりきっている。そして絶対世話をしたくなるような場面に遭遇するに決まっているんだ。
(あえて無視をするか、それともただの友だちとして……)
* *
一週間が過ぎた。
俺はどうにか上手くやっていると思う。
今まで取っていたスタイルを崩しすぎず、しかし無視することもなく軽く挨拶などもする。
(友だち! 友だちだから! これくらいなら許されるだろ)
毎度心の中で唱えている。
七星のクラスでの扱いは昔と変わらない。七星と話してみたい人間はいるだろうが、話すのが苦手な七星には何処か壁があるように見え、なかなか話し掛けられないでいるようだ。自然七星は一人でいることが多い。
それを俺が我慢出来る筈がない。
然りげ無く、執拗くならない程度の頻度で話し掛けてみる。
特にこんなふうにぼーっとしている時など。
何を物思いに耽っているのか、俺が何度声を掛けても気づかない。
「おいっナナ」
ちょっと大きめの声で呼び、机の上をトントンと叩いたところでやっと気づく。
「またぼーっとして。次移動教室だぞ」
七星はきょろきょろ教室を見渡し状況を把握した。
「わっ。ごめんっ。いっくん、先に行ってて」
「待ってる。鐘鳴るから、急いで」
(ここで先に行っちゃあ、待ってた意味ねぇだろ。どうせ慌てて、やらかして、間に合わなくなっちゃうんだから)
俺はドアのところで七星が来るのを待っていた。
(あわあわしちゃって可愛いなぁ)
なんてことが自分の頭に自然に浮かんできてしまうので、それが顔に出ないようにきゅっと引き締める。
「先に行ってても良かったのに」
口を尖られせてぽろりと言った。再会して何処か他人行儀――俺のせいではあるが――な話し方をしていた七星にしては本音が出たという感じだ。
「なんだ、可愛くないな」
内心、なんだめちゃ可愛いなぁと思って、俺は思わずぷにっと頬を摘んでしまった。
(柔らかい……)
(うわっ、俺っ何やってるんだ〜こんな彼女にするような仕草)
俺は時々やり過ぎてしまう。
しかし七星の顔を見ると、何故か妙に嬉しそうだった。
(ナナ〜勘弁してくれ、なんでそんな可愛い顔してるんだよ)
俺は激しく心臓が波打つのを鎮める為、七星の一歩前を歩いた。
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