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エピソード14−➀

(そう言えば、小学校の頃ここに来たことあったよな)  俺は海を眺めながら歩道を歩いていた。  あの頃、俺は水族館や動物園に行く時、めちゃめちゃはしゃいでいた。 (ナナと一緒に行けるのが嬉しかったんだ)  今日は日下部の誕生日で、四人で水族館に行くことになった。  誕生日なら二人で行けよ、と思いながら七星と一緒に出かけられるなら、このチャンスを逃すわけがない。まだ俺から二人ででかけようとか言うのは憚れるような気がして。  表向き『行けたら、行く』なんて気のない返事はしておいたが。  隣を歩けばいいのに、七星は俺の後ろを歩いている。 『何故か?』  それはたぶん俺との距離感が掴めないでいるからだろう。それはまあ当然のことだろう。俺も昔みたいに、と態度でも言葉でも示せてないのだから。さっきからちらちら俺のほうを見ているには気づいている。 (まあ、単純に歩幅の問題もあるかも、だけど)  これでも七星に合わせていつもよりゆっくり目に歩いているつもりなんだけど。  ゴールデンウイークで激混みの水族館で俺たちと明たちはいきなり最初のほうで別れ別れになってしまった。  七星は二人のことを心配していたが、俺はまったく心配していなかった。  俺は遠くにある二人の姿を見ながらつい舌打ちをしてしまった。 (彼奴らいちゃつきやがって) 「……誕生日だっつーなら、二人ででかけろよな」  つい心の声が飛びだしてしまった。それを七星が聞き留めて。 「えっ? なんで? みんなでお祝いしたほうが楽しいよね」 「だって、水族館だぜ」 「うん」  純真無垢な瞳で見てくる。 (ナナは見えてないから……いや、きっと見えたとしても『二人は仲良しだね』くらいにしか思わないし、俺の言っている意味にも気づいてないんだろうけど) 『水族館ってデートスポットじゃん』そう言いたいのを我慢した。結局のところ七星には何も気づいてほしくない。 「ナナ……ずっとそのままでいろよ」 「んん?」  ますますわからないという顔をする。 (オトナの欲望を知らない純粋なままで)  それはさておき。 (彼奴らを待つか、それとも)  ふと自分の中に一つの考えが浮かんだ。 (合流出来そうにないという理由をつけて、このまましばらくナナと二人で……)  偶然でも装わなければ七星と二人で出掛けるなんてことは、遥か遠い未来のような気がした。下手したら一生ない可能性だってある。  俺が頭の中であれこれ考えているうちに七星がこの人混みの中を逆走しようしている。  俺は慌ててその腕を掴んだ。 「ちょっ、待てっ。どこ行くんだ」  勿論二人のところに行こうとしていたのだが。  俺はそれで決心をした。  スマホを取り出しラインを開く。 『人多くて合流できそうにないから、別行動しよう。そのほうがお前らもいいだろ』  そう打って送信。  最後の言葉は余計だが、たぶんこれで明は食いついてくる筈だ。  案の定遠くで大きな丸を作っていた。    

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