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エピソード15

「まいったなぁ……」  シャワーを浴びながら溜息を吐く。  修学旅行の最後の夜は──七星と二人きりだった。  班の面子を選んだのも俺。当然最終日の部屋割りを考えたのも俺だ。七星が他の奴と二人きりになるなんて許せるはずがない。だから、俺と同室にした。  のだが。  それは、それでかなり辛いものがあると気づいた。 (同じ浴室を使ったっていうだけでどきどきしてるなんて、可笑しいだろ、俺)  昔七星の家で一緒に何回か入ったこともあるというのに。今日は七星が先に使い、その後に俺が使った。一緒というわけでもない。  俺はもう一度更に深く溜息を吐いた。  さて、この後どうするか。 (荷造りしてさっさと寝る! それしかない!)  その名案はすぐに覆る。 (寝れるのか〜俺。だって隣のベッドでナナが寝るんだぞ)  しかし、事態はそれよりも更に悪化することになった。  日下部が明と揉め、部屋に飛び込んで来たからだ。日下部は泣きながら七星のベッドに寝入ってしまい、とりあえずこちらで預かることになった。  が。  七星が同じベッドで寝ようとした! (おいおい、ちょっと待てよ。それはない──や、日下部とカナはつき合っているから、別にナナとどうこうはないが……でも! ダメだ! 他の男となんて! 俺がダメだ)  七星との問答の末。 「あ~、もうっいいっ」  俺はそう唸って七星をベッドの上に引っ張り上げた。自分もその隣に横になると纏めて上掛けを掛けた。 (俺、本当に馬鹿だ)  さっきまで眠そうにしていた七星も今までのごたごたで目が冴えてしまったらしい。俺たちは少し話をした。  その間も俺の心臓はどくどくと煩く、七星に聞こえやしないかと気が気ではなかった。  七星が振った話題が明と日下部のことになったのを機に、俺は二人のことを話すことにした。  話し終えた俺は「おやすみ」を言って七星に背を向けた。 (ナナ……どう思ったかな。これで気持ち悪がったり、友だちやめるなんてことはしない奴だってわかってるけど……ただ、自分のこととして考えて、男同士の恋愛ってどう思うんだろう……ナナ……俺は……)  勿論自分の想いを言うことは出来ない。  しばらく身動ぎをしていた七星もやがて静かになった。 (寝たのか?)    しかし、俺は少しも眠気がやってこなかった。  背中越しに七星の体温を感じる。  ふいに激しく愛おしさが込み上げ──。  俺は自分の欲望に勝てず──寝惚けた振りをして、自分の腕の中に七星を閉じ込めてしまった。 (ナナ……起きないでくれよ……)  翌朝、俺は寝不足な頭で考えた。 (このままじゃまずいんじゃないか?)  歯止めがきかなくなる前に。 (少し……距離をおかなければ)  俺はそう自分に誓った。  

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