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第13話

 ルカが目を覚ますと、隣でノエルが笑みを浮かべ自分を見つめていた。 「おはよう、ルカ」 「おはよう、ノエル……凄く変な夢を見ていた気がする……」 「疲れてるんだよ、きっと」 ルカの手が伸びてきてそっと髪を撫でられる。 「そうかもしれない……」 「さあ、朝ご飯食べよう。今日はフレンチトーストを作ったんだ」 そう言ってルカの唇にキスを落とす。  リビングに行くとテレビがついており、朝のニュースが流れている。 『ファッションモデルの嵐さんの自宅マンションが火事になり、嵐さんは命に別状はないものの、大火傷を負う重症という事です』 ルカはそっとノエルを見ると、優しい笑みを浮かべていた。 嵐は商売道具である顔に大火傷を負ったとしたならば、モデルとしての人生は終わりだろう。 「は、はは……天罰……天罰が(くだ)たんだ……」 ノエルはそんなルカを見てほくそ笑んだ。  その後、嵐がモデルとして継続していく事が実質不可能となったため、ルカのエリオット・ワンの契約継続が決定した。  ルカの中で、罪の意識に苛まれるという思いが徐々になくなっていった。 自分のモデル人生において、邪魔なものは排除する──。ノエルがいれば自分は無敵だ。 しかし──、 自分の老いはどうする事もできなかった。  ノエルと暮らし始めて十年。ルカは四〇歳になろうとしていた。顔のシワは増え、心なしかたるんできているように見える。明らかに、十年前の自分とは違う。モデルとしてまだ仕事のオファーはきていたものの、いつ仕事がなくなるのか毎日不安になり、鏡を見る事が怖くなっていった。 一方、ノエルは出会った頃から全く変わらず、ずっと美しかった。その変わらない美しさに嫉妬と嫌悪が膨れ上がっていった。

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