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第2話

 文維に言われ、急いで着替えを済ませ、バスルームで手を洗い、うがいをした煜瑾は、慌ててリビングに戻ってきた。 「何が入っているのですか?文維は知っているのですか?」  大好きな義母からの、初めての自分1人への贈り物に、煜瑾は期待でワクワクしている。 「自分で確かめてみてください」  そう言って文維は、用意したカッターナイフで箱の蓋を開けた。  それを覗き込んだ煜瑾は、その大きくて深い色をした印象的な瞳を見開いた。 「わあ~、なんて可愛らしいのでしょう!」  それは、少しレトロなデザインの、ヨーロッパの邸宅を模したミニチュアだった。しかし、それが煜瑾の趣味であるミニチュアのコレクションに加えるように贈られたものでは無いことに、煜瑾はすぐに気付いた。 「これは…、アドベントカレンダーになっているのですね」  まるでクリスマスプレゼントを開ける子供のように目を輝かせ、煜瑾は箱の中から、そっと木製の、窓がたくさんついたお屋敷の模型のようなものを取り出した。 「これは…アンティーク調ですけど、新しいものですね」  さすがに、身に着ける物から、子供の頃のオモチャまで、最上のものしか与えられたことがない煜瑾は、目が()く。 「なんでも母のお友達が、日本の木のおもちゃを専門に作っている店で見つけたとかで、母が気に入って取り寄せたそうなんです」 「まあ、わざわざ私のためにですか!」 「それくらい…、母にとって煜瑾は大切な子ですからね」  文維の言葉に、あまりに感激した煜瑾は、瞳をキラキラと潤ませている。 「アドベントカレンダーですよ。この数字の書いてある窓が、引き出しになっているんですね」 「開けても、いいですか?」 「今日の分だけなら、ね」  サッと煜瑾が目で確かめると、数字が掛かれた小さな引き出しは、1から24まであった。つまりは、今日からクリスマスイブまで、毎日ひとつずつ引き出しを開けるようになっている。  今日の分しか開けられないと知って、ちょっと残念そうに、カワイイ唇を噛んだ煜瑾だったが、もともと育ちが良く、アドベントカレンダーの意味もよく知っていただけに、すぐに気持ちを切り替えて、「1」の数字が書いてある引き出しを開けた。

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