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第5話
翌日から煜瑾は忙しくなった。
お仕事の方はもちろん、年内にデザインと見積もりの提出が1件、ラフデザインだけと言われているのが1件、それ以外に、日系企業では忘年会と称するパーティーがあって、そこに呼ばれることも増えた。
その合間に、煜瑾は大好きな人たちへのクリスマスプレゼントを買いに歩いた。
今日は、親友の羽小敏 と、幼馴染の申玄紀 との3人で、浦東 地区のショッピングモールに来ていた。
有名サッカー選手であった玄紀はタレント並みの人気を誇っていたが、今は選手を引退し、父の会社の社員として働く、いちサラリーマンだ。
それでも、たまにファンに気付かれて、サインを求められたりすることもあるが、一般人として丁寧にお断りすることにも慣れた玄紀だった。
「今日は、ボクらへのクリスマスプレゼント…じゃないよね」
茶化すように言う小敏だが、明るく素直な童顔の笑顔のせいで、嫌味が無く可愛らしささえある。
「違います。文維のご両親と、うちのお兄様…それと、玄紀のご両親へのプレゼントなのです」
玄紀と小敏に守られるように、真ん中に挟まれた煜瑾は、楽しそうに笑った。ここに、文維が居れば、高校時代の仲良し4人組が揃うのに…と、それが少し心残りな煜瑾だ。
「文維へのプレゼントは?」
玄紀が去年の事を思い出して、頬を緩めながら言った。
去年の文維の誕生日に、煜瑾はまるで「ロミオとジュリエット」よろしく、禁断とされた想いを成就させようと、玄紀の協力を得て、大切な兄さえ裏切ったのだ。
名門の唐家よりも、溺愛してくれる兄よりも、ただ文維に会うことのほうが大事だったのだ。
そして、昨年の文維へのプレゼントは、小敏と一緒に買いに行った。
「何、言ってるんだよ、玄紀。文維へのプレゼントは、煜瑾が手の届くところに居るだけでいいんだよ。ね、煜瑾!」
小敏に冷やかされて、煜瑾は恥ずかしそうに俯いてしまう。こんな純真で可愛らしいところは、高校時代から何も変わらないな、と小敏だけでなく、玄紀も思ってニコニコと笑った。
「包家 の叔父 さまも叔母 さまも、何でもお持ちだからね~。プレゼントにはいつも迷うよ」
自分のように今年からではなく、毎年のようにプレゼントの交換をしている小敏に相談するつもりの煜瑾だったが、その言葉に、さっそくハードルが高そうで不安になる。
「でも煜瑾からのプレゼントなら、きっと何でも喜んでもらえると思うな。叔母さまはもちろんだけど、叔父さまも無口で分かりにくいけど、ああ見えて煜瑾のこと、大のお気に入りだしね」
煜瑾は、はにかみながら、親友の顔を見て嬉しそうに笑った。
「そうだったら、とっても嬉しいです」
煜瑾の無垢で清らかな笑顔は、小敏と玄紀も魅了し、2人もホッコリとした笑みを浮かべた。
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