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第6話
「ねえ、どうして煜瑾が、玄紀のご両親へのプレゼントまで買うの?」
すでに何軒かのショップを回った後で、小敏が気になっていたことを訊ねた。
「玄紀のご両親は、うちの亡くなった両親と親しくして下さっていたのです。それで、玄紀と私も子供の頃から知っているのです。クリスマスプレゼントは両親が健在だったころからの習慣で、毎年、兄の会社から送っていたのですが、今年からは私1人に任されました」
屈託のない煜瑾の言葉に対し、当人であるはずの玄紀は、なんとなく面白く無さそうな顔をしている。
玄紀は小敏が知る高校時代から、両親とあまり折り合いが良くないのだ。表立って玄紀が反抗的だとか、両親が何かを強要するとかいうことはないが、両親と息子、というより、家族それぞれが自分以外の人間のしていることに興味が無いといった態度だった。
「今年は久しぶりに、玄紀のお母さまもクリスマスは上海で過ごされるのですよね」
「…ええ、まあ…」
無邪気な煜瑾の問いに、不承不承な態度で玄紀が肯定する。これを煜瑾は、少し困った顔をして見つめていた。
早くに両親を亡くした煜瑾には、両親が健在な玄紀はそれだけでも恵まれているのだから、両親との不和など贅沢な悩みだ、と考えている節がある。
だが、もう少し世の中の事を知っている小敏は、他人とは違い、血のつながりのある親のことだからこそ、玄紀も複雑な想いを抱くのだ、ということを理解している。
どちらも間違っているというわけではないのだが、小敏はどちらの味方も出来ないし、否定する立場にもないと思うのだ。
「あ!ねえ、ねえ、あそこのカフェを見てよ!」
ふと気付いた小敏が指を差した先には、韓国系の可愛らしいカフェがあり、そこにはクリスマスをイメージしたケーキやパフェが並んでいる。
「クリスマス風のデザートですね」
店の前には女の子のグループが1組、待っているだけだ。
「ねえ、ここでお茶していこうよ」
意外にこの手の店には若い男性客もいて、煜瑾たちが男性グループだからと言って怪訝に思われる心配はない。ただ、イケメン3人組となれば店内の女性客や店員はざわつくことであろう。
「私は、このクリスマスツリー風の抹茶パフェにします」
外は寒いというのに、元はプロのサッカー選手で代謝が良いせいか、玄紀は冷たいパフェを食べたそうにしている。その姿を、小敏と煜瑾はクスクスと笑った。
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