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第17話
ハイブランドのショップでの、高額な買い物も整然と済ませた煜瑾と茅執事は、そのまま茅執事が運転してきた唐家の車をショップに預け、近くの香港 広場にある台湾風のマンゴースイーツ店にやってきた。この店は上海だけでなく中国各地にある人気チェーンで、煜瑾はここのマンゴープリンが大好きだった。
「今日は寒いので、お汁粉 にしようかな~」
煜瑾はそう言いながら嬉しそうにメニューを眺めた。
お汁粉と言っても日本のような紅豆 の甘いスープ、と言った感じのものでは無く、「芝麻糊 」と呼ばれる、黒ゴマのトロミのあるスープだ。そこにマンゴー風味の湯圓 (餡入り団子)が入った温かい食べ物である。
「私は、…豆花 で」
豆花は台湾の人気スイーツで、見た目は日本でも人気の杏仁豆腐に似ている。最近は日本でも台湾スイーツと言えば豆花を思い浮かべる人が増えているほど有名だ。この店の豆花は、上にマンゴージュースとココナッツミルクで出来たソースが掛かった、温かいスイーツだった。
「では、それで」
煜瑾が納得したのを見て、茅執事は注文をしにレジへと向かった。
スイーツが出てくるまで、煜瑾のお仕事のことや、唐家のみんなの様子などを煜瑾と茅執事は楽しく話した。こんな風に、煜瑾と2人だけでゆっくりと話しが出来る時間が久しぶりだった茅執事は、煜瑾の幼い頃を思い出していた。
大人しく、1人で遊ぶことに慣れていた煜瑾だったが、茅執事が屋敷内の楽器に触れさせたり、蒐集室の貴重な絵画や工芸品を見せたりして回ると、幼いながらも煜瑾は感激した。そのあまりの喜びように、試しに音楽や絵画の家庭教師をつけたのは茅執事の判断だ。
すると、どの分野でも煜瑾は見る見るうちに才能を発揮した。芸術に愛された煜瑾を自分が見出したと思うと、茅執事も誇らしかった。
あの頃が、一番楽しかった、と茅執事は思う。今は、手の中にあった才能豊かで、素直で、純真な、美しい天使は、手の届かない外の世界へ飛び出して行ったからだ。
それでも、今の煜瑾の輝くばかりの笑顔に、その至福を感じ、この天使の幸せが続くことを祈った。
「いつも、茅執事には心配ばかり掛けていて、申し訳ないと思っているのです。私もお兄さまも、茅執事が居なければ、本当に困るのです」
煜瑾の言葉に、茅執事はこれまでの苦労が報いられたように感じた。
「もったいないお言葉でございます…煜瑾さま」
その時、煜瑾待望のスイーツが運ばれてきた。
「わ~、熱々ですね。美味しそう~…」
煜瑾と茅執事は、満面の笑顔で、温かいスイーツを、時間をかけて美味しそうに食べた。
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