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第19話

「文維も…」  2人の寝室の奥にあるクローゼットに向かう文維に、煜瑾は、はにかみながら声を掛けた。 「文維も、そう思ってくれていたのですね」  すでに煜瑾の言わんとすることが分かっている文維は、笑いながらバスルームで手を洗い、口をゆすいだ。  そうしてから、改めて煜瑾を抱き寄せる。 「今夜は、煜瑾との大切なデートですよ」  大好きな人が、自分と同じ気持ちでいてくれたことが、煜瑾には嬉しい。 「煜瑾の白いセーターはステキですね。まるでカワイイ白うさぎさんのようですよ」 「うふふ」  自分の選んだセーターを褒められ、煜瑾は恥じらいながらも大きく頷いた。 「知っていますか?ウサギは独りぼっちで寂しくなると死んでしまうのです」 「そんな…可哀想です…」  優しい煜瑾が弱い生き物に同情する姿を、慈愛深く見つめていた文維が、フッと笑って煜瑾の額に口付けた。 「でも、この白いウサギさんは、私が独りぼっちにさせることはありませんからね」 「文維…」  さすが過去に、大勢の男女を夢中にさせたモテ男の歯の浮くようなセリフだが、世慣れない煜瑾はそれだけでうっとりしてしまう。  その隙に文維はビジネス用のネクタイを外し、手早くカジュアルなジャケットに着替えた。 「さあ、2人きりでデートに出かけましょう」 「はい」  すっかりご機嫌の良くなった煜瑾の手を繋ぎ、玄関では清純な白うさぎが寒くないように黒いロングのダウンコートを着せ、文維自身はグレイのミディ丈のダウンジャケットを着ると、平日の夜の短い時間のデートを楽しむために暖かい部屋を後にした。  部屋を出て、一度建物を出る事にはなるが、同じ敷地内にショッピングモールがある。2人はそこに向かった。 「ねえ、文維。クリスマスツリーは鉢植えの小さな常緑樹を買って、クリスマスが終わったら、それを唐家のお庭に2人で植えませんか?」  ハッと思い付いた煜瑾は足を止め、愛しい文維の顔を楽しそうに覗き込んで言った。そんな煜瑾のステキな申し出に文維は優しく微笑んで、一言「いいですね」と答えた。  大好きな文維の同意を得た煜瑾は、ますます嬉しくなって笑顔が輝いた。その清らかで神々しい美しさに、文維は眩そうに眼を細めた。  これほど穢れを知らない、美しい天使が自分のことを心から信頼し、愛し、一緒にいてくれることに、文維はこの上ない幸せを感じる。日々、この幸せに対する感謝を忘れない文維だった。 「ゲストハウスのリビングの窓から見えるように植えましょう」  夢見るように煜瑾が黒瞳を輝かせると、文維も優しくほほ笑んだ。 「その成長を、何年も、ずっと、2人で一緒に見守っていくんですよ」  2人の未来を約束するような文維の言葉に、煜瑾は頬を染めながらも満ち足りた様子で深く頷いた。

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