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第20話

 ちょうど、クリスマスシーズンということもあり、ツリーにピッタリの鉢植えの常緑樹はすぐに見つかった。  煜瑾が、クリスマスツリーとして飾った後は、植樹をするつもりだと告げると、店員はすぐに得心し、マツ科のコニファーを薦めてきた。 「ヒノキ科のコニファーもありますが、クリスマスツリーならこちらはどうですか?色も枝ぶりも、クリスマスの飾りが映えますよ」  煜瑾は、しばらくヒノキ科とマツ科のコニファーを見比べていたが、やはりマツ科の物の方が、自分がイメージするツリーに近い気がした。 「コニファーは針葉樹全般のことですが、花言葉があって、『永遠』とか『不滅』という意味なんです。後で植樹を考えているなら、そういう意味でもおススメですね」  花言葉が気になる煜瑾は、ドキリとして文維を振り返った。文維と煜瑾の関係もまた、赤いチューリップの花言葉によって深く結ばれているからだ。  赤いチューリップの花言葉は「永遠の愛」だった。  煜瑾が何も言わなくとも、何もかも分かっている文維は、温柔な表情で頷き、店員に言った。 「では、これを下さい」 「文維?」  スマホで決済しようとする文維を、慌てて煜瑾は止めようとする。  自分が欲しくて買うのだから、最初から自分で支払うつもりだったのだ。  だが文維は折れることはしない。スマホを取り出そうとする煜瑾の白い手に自分の手を重ね、煜瑾が大好きな温柔な笑顔で言った。 「コレは、私から煜瑾へのクリスマスプレゼントですよ」  そう言われて、煜瑾の誰をも魅了する黒くて大きな瞳が、喜びでキラキラと輝いた。その純粋さに、文維も嬉しくなる。 「さあ、次はオーナメントを買いに行きましょうか」 「はい。ありがとう、文維」  結局、素直な煜瑾は文維の申し出を受け入れ、感謝を述べた。それはプレゼントに対する感謝だけではなく、愛してくれること、傍にいてくれることへの感謝も込められていた。  近いからということで、園芸店からコニファーの植木鉢は自宅への配達も快く受け入れられ、身軽な煜瑾と文維はモール内をいろいろと見て回ることにした。  オーナメントは、あちこちの店で少しずつ煜瑾の気に入った物だけを購入し、綺麗な電飾も見つけて、煜瑾は自作のツリーに期待を膨らませた。  他にも、それぞれ気に入ったものや、欲しかったものを購入し、クリスマスを迎える準備を楽しんだ。  クリスマスらしい可愛い雑貨や装飾などを買い、後は互いに似合う洋服などを見て回るなどウィンドショッピングも堪能し、そろそろ空腹を覚えた。 「夕食は、何を食べたいですか?」  文維に聞かれて、煜瑾はクスリと笑った。 「文維はいつも私に決めさせるのですね」 「だって、煜瑾に喜んで欲しいからですよ」  2人は顔を見合わせて笑いながら、結局は辛い物が苦手な煜瑾のために大人気の火鍋店は避け、まだオープンしたばかりらしい台湾のハーブ鍋を食べに行くことにした。

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