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第22話
クリスマスイブの朝、煜瑾と文維は、目覚めてすぐに「24」と書かれた最後のアドベントカレンダーの引き出しを開けた。
いつもは、文維がクリニックから帰った夜に開けていたのだが、今日はお昼にこのステキなアドベントカレンダーを贈ってくれた文維の母と会うので、最後の1つを味わってからお礼を言いたかった煜瑾だ。
「わあ~カワイイ~。食べるのがもったいないくらいですね~」
毎日のように同じ言葉を繰り返している煜瑾に文維は苦笑するが、今日の小さなスイーツは本当に食べるのが惜しいと文維でさえ思った。
それは、マジパンで作られた、親指ほどのサイズの天使だった。優雅に微笑む天使を見て、文維は言った。
「煜瑾に、似ていますね」
「え!」
恋人の言葉に、真剣にその小さな天使を観察するが、煜瑾には客観的な判断がつかない。だが清らかで、品があり、愛くるしいまでの天使は、確かに煜瑾そのものを象徴していた。
「私に…似ていますか?私は、こんなに可愛らしくないでしょう?」
恥ずかしそうな煜瑾に、文維は笑ってアドバイスをした。
「なら、写真を撮って、煜瓔お兄さまに送ってごらんなさい。きっと煜瑾にソックリだとおっしゃいますよ」
半信半疑の煜瑾だったが、兄の反応が気になって文維の言う通りにスマホで撮影すると、すぐに兄の煜瓔宛に送信した。
そこへ玄関のベルが鳴った。
朝から元気いっぱいで、明るく晴れやかで人好きがする魅力的な笑顔を浮かべて登場したのは、文維の従弟で、煜瑾の親友だった。
「おはよ~、煜瑾!文維も!」
「私はオマケですか」
笑いながらそう言って、文維はクリニックへ出掛ける支度を始めた。煜瑾はそんな恋人のために朝食の仕度をするために、キッチンへ向かおうとした。
「僻まない、僻まない。出勤前の文維に渡す物があってね」
「…クリスマスプレゼントですか?」
煜瑾と顔を見合わせて、不思議に思いながら文維は、意味ありげな笑みを浮かべた小敏の差し出した封筒を受け取った。
「あ!これは…」
中を確認して、思わず冷静な文維も驚いて声を上げた。
それは、ちょうど1年前に2人が互いの気持ちを打ち明け、誤解を解いたあのホテルの、今夜のスイートルーム宿泊券だった。
「あの時の気持ちを忘れないように、ってことさ。一番安いジュニアスイートルームだけど、2人一緒なら部屋なんて関係ないだろう?」
小敏の心遣いに、文維も煜瑾も感激して何も言えなかった。それでも文維は、優しい従弟 に恋人の分まで感謝を述べた。
「ありがとう。とってもステキなクリスマスになるよ」
それを受けて、小敏は多くの人を魅了するステキな笑顔を浮かべた。
「ボクのためにも、いつまでも幸せな2人でいてね」
小敏はそう言って、煜瑾と温かいハグをした。
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