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第23話

 3人はそのまま楽しく朝食を摂った。 煜瑾が用意した、唐家からの差し入れである美味しい海鮮粥と、昨日の残り物のアスパラガスとベーコンの炒め物、温めるだけの、それでもとても美味しいレトルトのカボチャのポタージュ、そして煜瑾お得意のゆで卵、そこに文維の好きな杭州から取り寄せたオーガニックの龍井茶が出された。  温かく、栄養もたっぷりな朝食を終え、出勤する文維を見送った後、煜瑾と小敏は朝食の後片付けを一緒に済ませ、煜瑾が包家のクリスマスのランチパーティーに行く支度をした。 「小敏にも、プレゼントを渡しますね」  さあ出掛けようとなった時に、玄関の手前で煜瑾が珍しく悪戯っ子っぽく言った。 「ボクに?」  煜瑾が差し出したのは、手の上に乗るくらいの小さな、細長い箱だった。 「開けてみてください」  煜瑾に促されて、小敏がクリスマスらしい緑に金の細い線が入ったラッピングペーパーを外し、箱の蓋を開けた。 「うわ~、キレイだな~」  それは見事な赤い漆塗りの万年筆だった。 「それは、文維と私からです。文維が、小敏も作家なのだからサイン会などで、ちょっとは見栄えのするペンを持っていたっていいだろうって。煜瓔お兄さまが、万年筆がお好きで、コレクションなさっているのでご相談しました。これは日本から取り寄せたものです」  小敏はその美しい朱塗りの万年筆を、ギュッと握りしめた。  金額も大きいが、それ以上に従兄や親友、その兄までもが自分のためを思って選んでくれたのだという大きな愛情が、小敏は何より嬉しかった。  小敏は、自分がこんなにも愛に満ちたクリスマスを向かえられるのも、文維と煜瑾が溢れるほどの愛で結ばれているからだと思った。 ***  クリスマスイブの朝、唐家の邸宅はてんやわんやで誰もが忙しくしていた。  今夜は、唐家が統括するグループ企業全体のクリスマスパーティーが、市内の大きなホテルのバンケットルームを貸し切って開催されるのだ。  もちろん、そのパーティーに参加するのは、当主の唐煜瓔だけで、邸内の者はそのような表舞台に出ることはない。だが、翌日のクリスマス当日には、唐家の邸宅に多くの賓客が招待されており、その中には唐家の使用人の家族も含まれていた。  賓客の中には市政府の関係者や国内外の大企業のCEOなどもいて、厳しい執事のお眼鏡に適うよう、隅から隅まで細心の注意をもって丁寧に掃除を行き届かせる必要があるのだ。  そんな忙しい朝のことだった。  無事に主人である唐煜瓔の出勤を見届け、唐家ご自慢の有能な茅執事は、明日の来客用のランチやディナーのメニューを確認するために厨房に向かった。

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