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第31話番外編テレパシーマークの使い方合ってる?

コウ様にお伝えすることがあります。 きゅるりーん、うふふと笑いながらロランがキラキラとした顔をして、背筋を伸ばしソファに座り、そう言った。 今日はマリカとオーウェンは父の護衛で出張中。ウルキは乳母と一緒にお出かけ中。仕事も休みで暇なのは、コウとロランだけである。 暇だから映画でもリビングで見ようぜ、ゲームするでもいいよと、コウはロランを誘っていた。 だが、ロランは今日のこの時を待ちに待っていたようで、コウに告白をしてきた。 「コウ様、テレパシーマークのことです」 「テレパシーマーク?…どした?」 ポップコーン、クッキー、チョコレートとウルキには見せられないジャンクをテーブルに並べている。リコリスを口に咥えながらコウは聞き返した。 「そうです!コウ様、大発見です!オーウェンさんが私のテレパシーマークに触れられると、ピリッとしたんです」 「ええーっ!マジで!…やっぱり?!」 告白は驚く内容であるが、やっぱりという気持ちが大きい。だから第一声も素直にそう言ってしまった。 「私の経験をコウ様の仕事に役立ててもらいたいなぁって思ってお伝えしました!」 テレパシーは未知なものである。テレパシーマークも同じく、まだまだ解明されないことが多い。 なーんで、生まれてすぐにマークがポコっと身体に現れるのかとか、何故同じマークを持つ相手がこの世に存在する?とか、不思議なことがまだたくさんある。 なので、これからの未来のためにテレパシー解明について、コウとマリカは情報収集し活動している。 コウとマリカは同じテレパシーマークを持つ相手であり、恋愛に繋がり結婚した。同じマークの持ち主たちが感じるテレパシーマークの存在は、わかる。 しかし、ロランとオーウェンは違う。ロランはテレパシー持ちであるが、オーウェンは持っていない。 そんなカップルがテレパシーマークについて語るのは初めてである。興味はあるし、聞きたいことはたくさんあるが、少しだけ躊躇ってしまう。 それは…どんな時にテレパシーマークを触れられてピリッとしたのかということだ。 「あー…でもさ、前にオーウェンの家でロランのマークをオーウェンが触ったことあったろ?あの時はさ、何にもならなかったじゃん。いつ、どんな時にピリッとしたんだよ」 「ええっ!え、え、え〜っとぉ…」 以前、オーウェンの家に遊びに行った時、オーウェンはロランのマークに触れていた。その時ロランは、ピリッとも痛いとも言わず、何も起きないと言っていた。実際それをコウもマリカも直接見ている。 なのに、今になってオーウェンに触れられるとピリッとするってことは…あの時とは違う何かがあるってことだ。そう思ってコウは聞いていた。 やっぱ…答えられないよな。 ロランは『かああっっ』と、音が聞こえるように顔を真っ赤にしている。言いにくいことですと、言ってるようなもんだ。わかりやすい。 「ロラン?えっと、俺らもそうだよ。俺とマリカはお互いのマークを触るとピリッとするんだ。それと同じかなって」 「コウ様もマリカさんのマークを触ると…それって、いつですか?どんな時に?」 「俺らはいつって決まってなくて、常にだよ。いつでも、どこでも、相手がマークに触るとピリッとするんだ」 へえーっと声を上げて驚いている。目がまんまるになっていて可愛い。こんな素直な感じだからオーウェンはロランを溺愛するんだろうなとコウはその姿を見て笑った。 「でもさ、ロラン達は違うだろ?セブンティーン先輩はテレパシー持ちじゃないし。ロランだけピリッとする?それもさ…ちょっと言いにくいけど…その、あるシチュエーションの時にじゃない?」 助け舟を出してあげた。言いにくいことなんだろうなと想像するからだ。 「う…え、う…えっと、そう…です」 相変わらず顔は真っ赤であるが、ロランはそうだと認めた。多分、二人の間で愛が盛り上がってる時にそうなるんだろう。 コウとマリカだってそうだ。マークはお互いの足の付け根にあるため、愛が盛り上がりセックスする時に触れ合っている。だから、ロランたちもそうなんだろうというのは、コウには経験上わかっていた。 「あ、あ〜っと、いいよ、全部言わなくて。言いにくいだろ?あのね、ロラン、俺らもそうだから。その…そんな時に、えっと、盛り上がる?時?だよな。そんな時はピリッとしてドキドキするんだ」 小っ恥ずかしいけど、告白してくれるロランのためにコウも意を決して自分が経験したことを伝える。 セックスしている時に、マークを触り合うとピリッとズクンとする。本当ははっきりとそう言いたいが、何となくぼかすが、伝わるように言う。 「本当?コウ様も?そうなんです!ドキドキするの。うわ〜っ、嬉しい!」 「えっ!あ、そう?嬉しい?」 意外にもコウが告白するとロランは、パアァっと顔を上げて喜んでいる。仲間が見つかった!と言っているようだ。 「初めはびっくりしたんです。だけど、オーウェンさんに触れられると、ドキドキして胸がキューンってなる。好きな人だからなのかなぁって」 「へぇ〜、そうなんだ。触れられるって手で?この前はそんなことなかったのにな。タイミングなのかな」 「え、えっとぉ…手じゃなくてぇ…」 またロランは顔を真っ赤にしてモジモジとし始めた。赤くなって下を向いたり、パアァって喜んで顔を上げたり、ロランは忙しくて可愛い。またコウは笑ってしまった。 「あ〜!いいよ、言わなくて!手じゃなくて、その…キスとかだろ?あー、セブンティーン先輩の顔が浮かんでしまうっ!」 こっちも言ってて恥ずかしくなる。ロランにつられてコウも顔を赤くしていた。 「え〜、、恥ずかしいですが、コウ様の活動のためには、きちんとお伝えしないといけません。そのために今日告白するって決めたんです。そうです!オーウェンさんにキスされるとピリッとします!」 「そ、そうなんだ〜。ふ〜ん」 オーウェンとロランの盛り上がる愛を想像したくない。身近な存在の人のセックス事情なんて詳しく聞きたくないが、ロランはホッとしたように話し始めていた。はっきりハキハキと赤裸々に告白が始まる。 オーウェンと付き合うことになり、抱き合っている時、何となくそんな雰囲気でマークにキスをされた。その時からマークがずっと疼くようになっているようだ。 「うふふ、オーウェンさんはよく寝る前にもチュッて足首にキスしてくれるんです。あっ、私のマークって足首にあるじゃないですかぁ〜、だからね、そこにチュッて。それでね、寝てる間に私が不安にならないようにって、手を繋いで寝てくれるんですけどぉ…うふふ、あはは、朝起きるとデーンってあっちの方にオーウェンさんは行ってます。だからぁ、私が先に起きてね、寝顔見てぇ、鼻をちょんって触るとくすぐったそうにしててぇ、あはは」 「…へ、へぇ〜、あ、あはは」 テレパシーマークから離れた惚気話になっていく。ロランは自分が感じた幸せな気持ちを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。しかし、相手はオーウェンなのでコウは笑い出さないように必死であった。 あの強面で最高司令官という役職についてる最強の男が、寝る時には恋人の手を繋いであげてて、テレパシーマークに優しくキスしてるなんて聞くと、むず痒くてたまらない。 「えっとさ、その話全般だけど、セブンティーン先輩は知ってるのか?俺に話をするってこと言ってる?」 「はい、私はコウ様に隠し事は出来ないから話をするって伝えてあります。最初は、そんなこと言わなくていいって言ってましたけど、私が絶対伝えなくちゃダメ!って言うと、だったらいいよって。言いづらかったら一緒に言いに行こうかって、言ってくれました。うふふ」 オーウェンにはわかっているんだろう。セックス中の話になるから言いづらいってこと。勝手に聞いちゃってバツ悪いけど、ロランが言いたいことなんだから仕方ない。 しかしロランは幸せそうに話を続ける。あはは、うふふ、きゅるりーんって何を話してても楽しそうである。こうやってたまには自由に言い合えるのはいいのかもなと、コウは思っていた。 「優しい?セブンティーン先輩って優しいんだね」 「はいっ!すっごく優しいです。私はちょっと我儘なのかもしれません。それなのにオーウェンさんは何を言っても怒らないし、頑張ったときに頭をなでて抱き締めてくれることもあります。すごくすごく優しくて、大きな人です」 やっぱり惚気の方向に話がいく。だけどコウはそんなロランの姿を見れて嬉しかった。オーウェンとの生活や付き合いで、幸せに感じ、嬉しくって楽しくってと全身から溢れているロランを嬉しく思っている。 幸せになってよかったな。 そう心から思っていた。 「そっか!じゃあ、セブンティーン先輩の面白い話をもっと聞かせてくれよ」 「コウ様、面白くはありません」 「あ、ごめん…じゃ、食べながら惚気聞くからさ。ドーナツも食べようぜ」 「コウ様、惚気でもありません。ちゃーんと、テレパシーの未来のために、私は、」 「あはは、いいぞロラン!その調子!」 とりあえずマリカにテレパシーで伝えておこう。ロランは幸せそうに笑ってるから、安心して仕事しろよと、ロランが楽しそうにしてるのが俺は嬉しい。そうオーウェンに伝えてくれと。 マリカとオーウェンをイジるのは、その後にしようと思う。 end

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