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夏祭りに影とりんご飴 13
「……」
南が話をしているあいだ、俺は相槌を打つだけで口を挟まなかった。
南の声は震えてて、だけどしっかり俺に伝えようとしていた。
正直、南の話を聞き終わったあとは怒りしかなくて。
もっと早く見つけてあげられなかった自分と、南に怖い思いをさせた山本というヤツに対してだ。
南の身体を他の人間に触らせてしまったことが、なにより腹立たしい。
だから南があんなに積極的だったんだなと、ようやく気づけた。
山本の感触を俺で消してほしいと請う南は可愛かった。可愛かったけど、やっぱり許せなくて。
「ごめ、なさっ…」
泣きながら謝る南を、あやすように抱きしめる。
「南のせいじゃないから…早く助けてあげられなくてごめん」
「うん…ありがとう、信じてくれて」
まだ許せない自分がいるけど、ずっと信じて待ってくれていたことが嬉しかった。
とにかく南は無事…ではなかったけど、本当の手遅れになる前に助けられたし、もうこれ以上考えることはやめた。
今は南を癒してあげることが先決だから。
「触られたところ全部、上書きしてあげる」
「ん……」
とにかく早く山本とかいう男の感触を忘れてほしくて、優しく深く口づける。
「ん…ふぁ、もっと…ぁ」
お互い求めて求め合って、ここが外だということもお構いなしに激しくキスをして。
俺を求めてくれる南の可愛さと早く上書きさせたい焦燥から、俺もだんだん余裕がなくなってきた。
肌蹴た南の浴衣から覗く汗ばんだ白い肌が、より一層えろさを引き立たせている。
上下する肌に掻き立てられて、余裕のない手つきで下半身に手を這わせた。
「ぁ…」
目を閉じながらキスを受けていた南の瞳が期待で開かれる。
「ごめん、余裕ないかも」
「いいよ…オレも早く欲しい…」
南はぐっと腰を押し寄せて、早く触ってと訴えてきた。
「声、ガマンしろよ」
外なのに自制できそうになくて、南にそう言った。
小さくこくこくと恥ずかしそうに頷いたのを確認して、南の頭に手を回して俺の肩口に寄せる。
「噛んでいいから」
「うん…」
遠慮がちに返事をした南は、肩口にそっと口元を埋めた。
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