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夏祭りに影とりんご飴 18
事後。
事後って言葉はなんて便利なんだろう。
これだけで「あ、ヤりつくしたんだな」っていうのがわかる。
一言で言うと、八雲さんは絶倫オバケ。
あの後、全然人が来る気配ないしなんだかんだすごい盛り上がっちゃって、相当ヤった。
立ったまんまいろんな体位をした。
ナカに相当八雲さんの熱を注がれた。今は処理してもらったあとだけど。
で、今はここまで上がってくる石畳の階段に座って、祭りの喧騒を2人で見下ろしている。
「そういえば、助けに来てくれたとき、銅さんいましたよね?」
八雲さんの肩に頭を乗せたまま見上げる。
ふわっと笑って頭を撫でてきたけど、その顔はなんだか困っているように見えた。
「うん。いなくなったって気づいたと、すぐ右京さんにお願いして。矢吹と立花も走り回ってくれた」
「そっか…ちゃんとお礼言わなきゃですね」
「俺からも改めてお礼しないと」
八雲さんはそう言うけど、やっぱり肝心なところは教えてくれない。
昔何があったのか、何をオレに隠しているのか。
八雲さんのことだから、何か理由があって言わないんだろうけど。
それに対して不満には思ってないから、オレも聞かないし。
八雲さんが銅さんに対してすごい憧れとか、尊敬の意を持ってるのも知ってる。
嫉妬はないけど、オレの知らない八雲さんを銅さんが知っているのかと思うと、まあいい気はしない。
八雲さんと銅さんに間には、恋情とは違った強い結びつきがある。
本当に嫉妬はしない。
しないけど…なんでだろう、ちょっとだけ胸が苦しい。
目を瞑ってそんなことをもやもやと考えていたら、たぶん顔に出ていたんだと思う。八雲さんが優しい手つきでほっぺを撫でてきた。
「南?気分悪い?」
「んー…ちょっと考え事してて」
「…そっか」
八雲さんは黙ってオレのことを強く抱きしめる。
「八雲さん?」
「ごめん…しばらくこうさせて」
頭をぐりぐりと胸に埋めてくるから、珍しくて反応が遅れた。
八雲さんって、こんなに子どもっぽく甘えてくるんだ…。
オレは八雲さんを包み込むように抱きしめ返して、背中をぽんぽんしてみる。
そうすればもっと強く抱きしめてきて、背中が震え始めた。
もしかして、泣いてる…?
オレが山本を怖がっていたから八雲さんたちに迷惑かけたんだ。
もっとしっかりしなきゃ。
八雲さんのおかげで、オレは昔とずいぶん変わったんだから。
「八雲さん、大好き」
そう呟いて、オレは帰りにりんご飴を買いなおそうと心に決めた。
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