66 / 238

夏祭りに影とりんご飴 18

事後。 事後って言葉はなんて便利なんだろう。 これだけで「あ、ヤりつくしたんだな」っていうのがわかる。 一言で言うと、八雲さんは絶倫オバケ。 あの後、全然人が来る気配ないしなんだかんだすごい盛り上がっちゃって、相当ヤった。 立ったまんまいろんな体位をした。 ナカに相当八雲さんの熱を注がれた。今は処理してもらったあとだけど。 で、今はここまで上がってくる石畳の階段に座って、祭りの喧騒を2人で見下ろしている。 「そういえば、助けに来てくれたとき、銅さんいましたよね?」 八雲さんの肩に頭を乗せたまま見上げる。 ふわっと笑って頭を撫でてきたけど、その顔はなんだか困っているように見えた。 「うん。いなくなったって気づいたと、すぐ右京さんにお願いして。矢吹と立花も走り回ってくれた」 「そっか…ちゃんとお礼言わなきゃですね」 「俺からも改めてお礼しないと」 八雲さんはそう言うけど、やっぱり肝心なところは教えてくれない。 昔何があったのか、何をオレに隠しているのか。 八雲さんのことだから、何か理由があって言わないんだろうけど。 それに対して不満には思ってないから、オレも聞かないし。 八雲さんが銅さんに対してすごい憧れとか、尊敬の意を持ってるのも知ってる。 嫉妬はないけど、オレの知らない八雲さんを銅さんが知っているのかと思うと、まあいい気はしない。 八雲さんと銅さんに間には、恋情とは違った強い結びつきがある。 本当に嫉妬はしない。 しないけど…なんでだろう、ちょっとだけ胸が苦しい。 目を瞑ってそんなことをもやもやと考えていたら、たぶん顔に出ていたんだと思う。八雲さんが優しい手つきでほっぺを撫でてきた。 「南?気分悪い?」 「んー…ちょっと考え事してて」 「…そっか」 八雲さんは黙ってオレのことを強く抱きしめる。 「八雲さん?」 「ごめん…しばらくこうさせて」 頭をぐりぐりと胸に埋めてくるから、珍しくて反応が遅れた。 八雲さんって、こんなに子どもっぽく甘えてくるんだ…。 オレは八雲さんを包み込むように抱きしめ返して、背中をぽんぽんしてみる。 そうすればもっと強く抱きしめてきて、背中が震え始めた。 もしかして、泣いてる…? オレが山本を怖がっていたから八雲さんたちに迷惑かけたんだ。 もっとしっかりしなきゃ。 八雲さんのおかげで、オレは昔とずいぶん変わったんだから。 「八雲さん、大好き」 そう呟いて、オレは帰りにりんご飴を買いなおそうと心に決めた。

ともだちにシェアしよう!