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恋人コンプレックス 1

オレは今、電車で1時間半のところにある海水浴場にクラスの友だちと来ている。 八雲さんに会えないのは寂しいけど、クラスのヤツらも一緒にいると楽しいし、柳もいるし、充実した夏休みを過ごしているなって思ってた。 そう、思ってたんだけど。 午後2時。 午前から全力で遊んでいたオレらは、さすがに空腹を感じて海の家に来ていた。 スマホに新着メッセージが来ていて、それを確認する。 八雲さんから来ているのはまあわかるけど、矢吹さんからもメッセージが届いてて。 正直、嫌な予感しかしない。 一体どんな内容なのかと画面を開いたら、1枚の写メと「ヤバイ」と一言だけのメッセージ。 その写メを見て、最初何が起きてるのか全然理解できなかった。 そこには、八雲さんと兄ちゃんが図書館でキスをしていて。 なんで?っていう疑問と、八雲さんバカでブラコンな自分が嫌になるぐらい、絵になってるって正直に思った。 周りの音なんか聞こえなくて、もやもやする気持ちと大好きな2人がディープキスしてて興奮してる気持ちとごちゃまぜになってる。 どうしたらいいかわからなくて、呼吸ができなくなっていく感じがする。 「南!」 肩を大きく揺すられて、初めて固まっていたことに気づいた。 「体調でも悪いのか?」 柳が珍しくオレの心配をしてくれる。 逆に言えば、それほどヤバイ顔をしているってことだ。 「ん…大丈夫」 ウソ。 気になって気になって仕方ない。 なんでキスしてるのか、どういう意図なのか、今すぐ2人に聞きたいことはいっぱいある。 でも、今は海に来ているわけだし、自分のワガママだけで帰ることなんてできない。 けど、この胸に渦巻いてるもやもやした気持ちはどこかに吐き出したい。 オレは柳に小さい頃から2人だけの秘密にしているアイコンタクトをそっと送って、焼きそばとオレンジジュースを注文した。

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