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暁義と壱斗※
月明かりだけが頼りの薄暗い部屋の中、ぎっ…ぎしっ…、とリズムよくベッドが音を立てる。
それに合わせるように荒く息づく音が聞こえ、あ、あ、と女のものとも男のものとも取れる声が漏れていた。
おざなりに閉められたカーテンは薄いレース生地のそれだけで、窓から覗こうと思う者がいれば、すぐにでも様子を窺う事が出来る。
それすら構う様子もなくスラリと伸びた四肢が時々擦れる布音を立て、ゆるく開いた口からは艶めかしい嬌声がこぼれる。
「やぁっ……あ、ああ…っアキ」
名前を呼ばれた嘉瀬(かせ)暁(あき)義(よし)は、その声の主である織部(おりべ)壱斗(いちと)の唇へと、誘われるように吸い付いた。
ちゅっちゅっと小さな音を立て、ねっとりと口内を撫で回すと、壱斗が口内で一番弱い上顎を舌先で撫でる。触れるか触れないかのギリギリところで刺激を与えると、途端壱斗の表情は酔わされたかのように蕩けていく。
性急な腰の動きを止めることなく、暁義はその恍惚とした表情を見つめていた。
「あ、あ、あ゛、もっ…イ、グっ」
「イけっ……っく」
言葉と同時に暁義は勢いよく壱斗の最奥を貫いた。そして圧迫感の増すそこに己の欲望を撒き散らすと、壱斗のモノからも白濁が飛び散り腹部を白く濡らしていく。
「ああっ」
「はぁ、はぁ…」
荒く息を吐きながら暁義は壱斗の上へと倒れ込んだ。
しっとりと汗ばんだ肌が互いに吸いつき合うようで心地良い。
ある程度息が整うと、暁義は漸く壱斗の中からゆっくりと己のものを引き出した。同時に中に注いだ液体がツーっと糸を引くように漏れ出る。
「あっ」
その感覚に壱斗が声を上げた。
「アキ、また中で出したな!」
先刻まであれほど可愛らしく嬌声を上げていた人物とは思えないほど、色気を感じさせない口調。壱斗らしいと苦笑いしつつ暁義は、ごめんごめん、と謝った。
「ちゃんと出すから」
そう言って暁義は白い液体が溢れ出る孔に指を這わせた。
今まで己のモノが収まっていた孔は緩く口を開き、時々キュッと窄まるような動きを見せる。
赤く熱を持ったそこを労わるようにゆっくりと二本の指を挿入し、掻き出すように動かす。
「ん…」
壱斗の口から甘い吐息が漏れた。
若さゆえと言えば仕方ないとも取られるかもしれないが、今日は既に三回も交わっている。
これ以上は壱斗の身体に負担がかかってしまう。暁義は敢えて壱斗を感じさせないよう、敏感な場所を避けて動かした。それでも熱を持った場所は疼き、気持ちとは関係なく、刺激を得ようと卑猥に動き始める。
「んっ……アキ、やばい…」
極力抑えながら後処理をしていても刺激には抗えないのか、壱斗の表情に妖艶さが戻りはじめた。
達したばかりの壱斗のものにもその兆候が現れ、ゆるゆると勃起し始めている。
「っ、アキぃ…」
甘い声で惑わすように壱斗が強請る。
「壱斗、今日はもうやめといた方が…」
「や、我慢できない」
心配する暁義を他所に、壱斗は暁義を煽るように自らの手を蕾へと這わせ、しっかりと銜え込んでいる暁義の手を掴み動かした。自分が最も快感が得られるであろう場所を狙うように何度も何度も擦っていく。
「あ、あ、あ…ん」
喘ぎ声を漏らし、艶めかしく腰を揺らす壱斗。暁義は早々に仕方ないと諦め、壱斗の痴態に煽られ勃ち上がり始めた己のものを数回扱くと、指を引き抜き再び蕾の奥へと押し入った。
「やばっ! もうこんな時間」
漸く長い情事を終えると、壱斗はサイドボードの時計に手を伸ばした。そして焦ったように呟くと、情事後の甘い雰囲気を余所にそそくさと衣服を身につけ始める。
「何かあるのか?」
時計の針は疾うに深夜の十二時を回っている。こんな夜中に一体なんの用事があるのだろうか、と暁義は怪訝に思う。
「明日、一コマ目からだから帰って寝なきゃ」
「泊まればいいだろ」
夜遅くなればこちらから言わなくとも勝手に泊まっていく壱斗が、焦りながら帰ろうとしている。何か無くともつい不信感が芽生えてしまう。
着替え終えると壱斗はバッグを背負い、引き止めようとする暁義を余所にとっとと靴を履き始めた。
「朝から教科書取りに戻る時間ないって」
――そんなこと今まで言ったことないくせに。
暁義は内心毒吐いた。
「じゃあな」
止める間もなく壱斗は部屋を出て行く。またか、と暁義は眉根を寄せ、深く嘆息を吐いた。
っていく。
「あ、あ、あ…ん」
喘ぎ声を漏らし、艶めかしく腰を揺らす壱斗。暁義は早々に仕方ないと諦め、壱斗の痴態に煽られ勃ち上がり始めた己のものを数回扱くと、指を引き抜き再び蕾の奥へと押し入った。
「やばっ! もうこんな時間」
漸く長い情事を終えると、壱斗はサイドボードの時計に手を伸ばした。そして焦ったように呟くと、情事後の甘い雰囲気を余所にそそくさと衣服を身につけ始める。
「何かあるのか?」
時計の針は疾うに深夜の十二時を回っている。こんな夜中に一体なんの用事があるのだろうか、と暁義は怪訝に思う。
「明日、一コマ目からだから帰って寝なきゃ」
「泊まればいいだろ」
夜遅くなればこちらから言わなくとも勝手に泊まっていく壱斗が、焦りながら帰ろうとしている。何か無くともつい不信感が芽生えてしまう。
着替え終えると壱斗はバッグを背負い、引き止めようとする暁義を余所にとっとと靴を履き始めた。
「朝から教科書取りに戻る時間ないって」
――そんなこと今まで言ったことないくせに。
暁義は内心毒吐いた。
「じゃあな」
止める間もなく壱斗は部屋を出て行く。またか、と暁義は眉根を寄せ、深く嘆息を吐いた。
『俺、壱斗が好きだ。友達じゃなくて……恋人に、って…そういう意味で、お前が好きだ』
暁義が壱斗に告白したのは高校三年の二月。その日はとても寒くて、珍しく雪が降っていたのを覚えている。
その時の暁義は想いを告げることだけしか頭になく、同性の、ましてや女好きの友人と付き合うなんてことは出来るはずがないと、そんなことが出来たら奇跡だと思っていた。
その奇跡が起きて一年――。
春には二人とも無事大学へ進学し、初めの半年はまさに蜜月と呼べるほど二人の関係も順調だった。
元々友人から恋人という関係になったのだから、ある程度相手の性格は理解していた。だが付き合い始めて改めて、本当にある程度しか理解してなかったのだと暁義は痛感した。
元々女好きで、軟派な壱斗。だが好きなことには人一倍真剣に取り組む真面目な面もあって、その意外性に、気づけば好きになっていた。
しかし付き合ってからも軟派な態度は相変わらずらしく、合コンや飲み会に行っては女の子といい雰囲気になっているらしい…という噂を数々耳にした。
そこまで分かっていて止めず別れずでいるのは惚れた弱みとしか言いようがない。それでも嫉妬という不快な感情は湧いてしまうもので、暁義自身、どうすればいいのかわからなくなっていた……。
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