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「ま⋯⋯っ⋯⋯」
「なあに?」
『おえかき』
ボードでそう押し、要求してきた大河に「お絵描きがしたいんだね」と言って、おもちゃ置き場から、おえかき帳とクレヨンを持って渡した。
ボードを床に置き、姫宮からそれらをもらうと膝に乗り、そこで絵を描き始めた。
大河の誕生日に「ママ」と発せられるようになった大河はボードを駆使して姫宮に要求してくる。
今のように「おえかき」だけではなく、ハニワのおもちゃが欲しい時は「はにわ」、『ハニワのたぃこうしん!』が観たい時は、「あにめ」などと普段遊んでいること、それから「ごはん」「といれ」「おふろ」と身の回りの世話でさえも単語と共に姫宮に何かと要求してくるようになった。
それはいわば甘えているようだった。
今までになかった大河が甘えてくるのは嬉しい。はっきりとは言えずとも「ママ」と呼んできたことでさえも嬉しくて感動してしまったほどなのに、さらにこんなにも甘えてくるだなんて。
今のようにお絵描きする時も、必ず姫宮の膝でないと描かなくなったぐらいなのだから。
そんな急な変わりようにやはり周りも驚いてはいたものの、「良かったですね!」「感動で涙が止まりませんね⋯⋯!」と口々に言い、小口はというと、
「急にべたべたしてなんです? リア充ですか? やですねぇ、見せつけないでください」
いつものような淡々とした口調に眠たそうな目を向けて、冗談らしい冗談を言っていた。
「いやぁ、これでわたしの仕事が減る」
「減った分、こちらの仕事を回しておきますからね」
「大河さま、カモン」
小口がそう言っても当然行くはずもなく、かえって姫宮から離れたくないとしがみついてくるほどだった。
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