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口元を緩めてにまにまと笑う。 すると、怒ったらしい大河はボードを投げ捨て、姫宮の膝から下り、小口に殴りかかった。 が、小口はするりと避け、「まだまだですね」とさらに挑発していた。 「あぁ⋯⋯大河、ダメだって⋯⋯」 「姫宮様、今のうちに」 後ろにいた安野が声を抑え気味にそう言ってきた時、そういえば風呂に入るところだったと思い出した。 安野と小口と大河のことを交互に見ていた姫宮だったが、「今行かれた方がいいですよ」と促され、ソファから立ち上がり、リビングから出る。 その間もついつい見てしまった二人の争いのようなやり取りは、大河は小口にやり返すことに必死で姫宮のことに気づいていない様子だった。 後ろ髪に引かれる思いだった。 上がってからも一悶着がありそうだ。 どう言ったら、納得してくれるだろうかとため息を吐いた。 とは言っても、何言っても頑固な大河には素直に聞き入れてくれなさそうだ。 しかし、どうしたって一緒に入れない。 服を脱ぎ、下着姿となった己の身体を洗面所の鏡越しに見た。 あれから何年経っただろうか。あの忌まわしい場所から解放されても、消えることがない古傷が刻まれている。 その上、御月堂の代理出産の依頼を放棄した後に、それとなしにした仕事でついた新しい傷もあった。 首を絞められた痕が消えても、身体中の傷が消えることはなかった。 自分のものだと分からせる傷。 責任を放棄したという罰。 この身体はオメガになった瞬間から穢らわしく、罪深い。 罪人に等しいこの身体は今日もまた"客"によって、裁きを受ける。 そうだ。この罪は消えることない。 今日も"客"に罰を与えてもらわないと。

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