4 / 17

4.

夕飯を済ませた後、ソファに座った姫宮の膝上で大河と共に、『ハニワのだいこうしん!』を観ている時だった。 「姫宮様。お風呂の準備ができました」 「あ、はい」 安野に声を掛けられ、もうそんな時間かと思いつつ、大河に声を掛けた。 「大河。ごめんだけど、ママお風呂に入ってくるから」 「⋯⋯⋯ま⋯⋯」 掠れた声で、されど訴えてくる目で言いたいことははっきりと分かった。 というのも、こんなやり取りも日常茶飯事だったからだ。 今日も一緒に入りたがっている。 分かっている。本当は姫宮だって大河と一緒に入りたい。けれども。 「今日も小口さんと一緒に入ってもらってね」 『おふろ』 「そう、お風呂」 「⋯⋯っ、ま⋯⋯」『お風呂』 「ままとおふろにはいりたい」──単語だけでもそう言いたいのだと充分に分かる言葉は、しかし、そのお願いを聞くことはできなく、胸を痛め、そして困り果てた。 「そんなにしつこくしてますと一緒に入ってくれないですよ」 他の仕事をしていたらしい小口がいつの間にかそばに来ては、そう言ってきた。 来てくれた、と心中安堵していた。 「ほら、大河さま、四六時中ママさまにベッタリなんですから、お風呂の時ぐらい一人にさせてあげないと」 「⋯⋯っ」 大河は小口に言いたげに口を開いた。しかし、そこから発せられたのは、声とも言えない喉を鳴らしたかのようなものだった。 それも相まって苛立ちを覚えたらしい大河が、ボードで『あっちいけ』と押した。 「あっちいけだなんて、つれないですねぇ。それともわたしに照れ隠ししているんですか〜? 可愛いとこあるじゃないですか」 「⋯⋯⋯っ!」

ともだちにシェアしよう!