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第14話 ※

「わたしはまだ果てていないから、眠らないでおくれ」 「うん……っ」  冗談交じりにジスは言うが、こめかみに汗をかいている様子を見るとジスも快感に揺さぶられているのかもしれない。  だったら、もっと気持ちよくなって欲しい。  その一心で、僕はジスの腰に足を絡ませる。2人の距離が0になり、互いの身体が密着した。 「やはりそなたは……かわいらしいな」  「かわいい」だなんて、おばあちゃんに小さい頃言われたくらいだよ。ジス、やさしいな。そんな言葉をかけられたら、僕は……。 「う……っうぇ……」 「そなたは泣き虫だな。よしよし」  ジスは腰の動きを止めてから、泣きじゃくる僕のおでこに軽く接吻した。そうして、そのまま手で頭を撫でてくれる。昔、おばあちゃんがしてくれたみたいに、やさしくて大きな手のひらで。  自然と涙が止まり、僕はぎゅっとジスの背中に手を回した。 「もっと、激しくしていいよ……」  目をぎゅっとつむって、精一杯の告白だった。ジスはぴくんと反応すると、胎内でジスのものの質量がさらに増えたような気がした。そのまま、お互いの皮膚が激しく当たるくらい強く抱かれた。アルファとしての本能が溢れている。 「阿月……」 「……ジ、ス」  ジスに限界が近づいているのか、突く速さがどんどん上がっている。僕の名前を呼び、僕の唇を貪りながら、 「……っ」  ジスが苦しげに眉を顰める。直後、どくん、どくんとジスのものが脈打つのを胎内で感じた。 「んんんぁ……」  僕はそのジスの吐き出した白蜜の匂いや味を想像してしまい、そのまま再度果てた。2回もイってしまった。  ジスはそのまま僕に乗りかかってくる。どくん、どくんという脈打つ音はまだ胎内から聞こえる。  いっぱい出てる……。  息を荒らげる僕にジスは軽く口付ける。頬に、ちゅ、と。 「発情期は治まったようだね」  にこ、といつもの邪気のない笑顔を浮かべるジス。 「ん……はい」  僕が自分のお腹を撫でていると、ジスが自身のものを僕の蕾から抜き取った。 「すまない。中から溢れてきてしまって、そなたのベッドを汚してしまった」 「だ、大丈夫です」  「中から溢れてきた」という重要なワードに僕は焦る。その、あれが……白いのが出てきちゃったってことだよね。ジスの……。  そろそろと自身の蕾に手を伸ばしてみる。うわ、どろどろ、濡れてる……。手につけて間近で見つめていると、ジスの手が僕の瞳を遮った。 「よしなさい。いくら魔王とはいえ、そういったものをまじまじと見られるのは恥ずかしいものだよ」 「あ、ごめんなさい……」  ふふ、と耳元でジスは囁き 「そなたの興奮している顔、とても麗しかった」 「……ぁ」  これ、絶対意地悪されてる。ジスってSなのかな……。 「またわたしはこれから公務が控えているのでな……帰ってくるまでいい子にしているんだよ」  微笑を頬に浮かべて、僕を見つめる瞳は優しい。 「はい。いい子にしてます」  よしよし、と軽く抱きしめられ後頭部を撫でられる。なんだかわんちゃんになった気分だ。今、僕がわんちゃんだったら尻尾ぶんぶんで振ってしまっているだろう。 「公務頑張ってくださいっ」  精一杯の応援の言葉。 「うん。ありがとう。そなたの言葉で今日も頑張れそうだよ」  ジスは部屋から出ていった。  僕は部屋の中に充満するオメガとアルファの行為により生まれた香りにくらくらしながら、窓を開ける。少し換気した方がいいかも……僕もお風呂を借りないと……。汗と白蜜で濡れた身体をタオルで拭き取る。 「えっち……しちゃったな……」  ライアに洗面所の場所を聞き、辿り着いたお風呂には既にお湯が張っていた。ライアの説明によると、露天風呂なのだという。せっかくの晴天なので、湯につかってみた。 「温泉なんて久しぶり……」  僕は、はぁう、息を洩らす。ここに召喚される前の自分の生活は質素で、節約ばかりしていたからこうした贅沢なんてできなかった。  お湯に浸かりながら、改めてジスへの感謝の気持ちが溢れてきた。 「今度会ったとき、ちゃんとお礼を言おう」  昼間に見た空は青く澄み切っている。柔らかな風が頬を撫で、通り過ぎていくのを感じていた。  

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