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第25話 決意のアフタヌーンティー
久しぶりにジスとゆっくり話す時間をもらった僕は、メビウスが手入れをしている庭のベンチでアフタヌーンティーを楽しむことにした。ライアが勧めてくれたのだ。
『最近、ジス様とゆっくりお話する機会が少ないので、今日はお庭でアフタヌーンティーをしてゆっくりされるのはいかがですか?』
ライアの気遣いが嬉しかった。
僕は、紅茶と林檎のスコーンを口にしながら、ルイボスティーの入ったティーカップに口をつけるジスを見つめていた。
メビウスは、庭の手入れに集中していて僕らの様子を目にとめる気配もない。
僕は決めたんだ。
一度目を閉じて、心に問う。
僕は何のために冥界へ召喚されたのか。
何を望まれているのか。
自分は2回目のオメガの人生をどのように生きたいのか。
悩んだ末に、答えはいたってシンプルなものだった。
「ジス。伝えたいことがある」
僕は庭の手入れに集中しているメビウスにも聞こえるように、はっきりと大きな声を出す。
「うん。どうしたんだ」
ジスはいつも通り、ゆるやかな笑みで僕を見守ってくれる。
「僕、天上の国へ行きます。そして、シュカ王子の世継ぎを産み、その赤ちゃんが1歳になったら冥界のジスのもとへに連れ帰ります」
メビウスが僕らのほうを振り返った。僕はそれを視界におさめると、再度言葉を放つ。
「僕がジスの夢を叶えにゆきます」
「阿月……」
ジスは軽く目を見開き、押し黙る。しかしそれも数秒のことで、僕のことを慈愛に満ちた眼差しで見つめる。
「ありがとう。阿月。たくさん悩んでくれたのだね。メビウスも喜ぶだろう」
足元に、気づけばメビウスが控えていた。大きな瞳に涙を浮かべながら、話しかけてくる。
「阿月……おまえって奴はなぁ。いい奴だなあ。ありがとう。どうかわたしの息子を、村人を、国民を、フォリーヌ王国を救ってくれ」
僕のふくらはぎに抱きついてきたメビウスの背中をよしよしと撫でる。今回はしっぽで弾かれなかった。
「そ、そんな。阿月様……」
「ライア……」
厨房に戻っていたかと思っていたが、すぐ側で僕らの話を聞いていたらしい。ライアも目を赤くさせて、僕に駆け寄る。
「ご決断大変立派です。しかし、自分はとても寂しい。でも、阿月様のご覚悟を、尊敬いたします」
「ライアがこんなに懐くオメガはそなたが初めてなんだよ」
ジスが少しからかいを含めて僕にこっそりと耳打ちする。
「そうしたら、明日の朝に天上の国にあるフォリーヌ王国へそなたを送り出そう。今夜はわたしと過ごしてくれないか?」
「っもちろんです」
涙でしとしとのアフタヌーンティーは無事に終わり、夜眠りにつくまでの時間はジスと過ごすことになった。
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