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第48話 ※
「オメガの巣作りというのは、発情期になるオメガがアルファの匂いの染み付いた服を使ってベッドに巣を作るという行為を示すらしい」
「あ……」
「まさにこんなふうにな。俺の匂いで安心したんだろう……これは推測だが、お前が俺の服を使って1人でしたりな」
ベッドに散乱する服をぽん、と王子が手で示す。僕は顔から湯気が出そうなほど恥ずかしい。
「今日は夜風も涼しくて致し《《やすい》》日だな」
柄になく王子の冗談に耳をすませていると。繋がったまま、王子に問われる
「お前兄弟はいるか」
「いえ、一人っ子です」
「そうか。だからこんなに無垢なのだな」
どうして、そんなことを?
僕は1度聞く前に留まる。
「俺は弟が2人、妹が1人いる長男だ」
「シュカ王子は皆のお兄さんなんですね」
話の焦点はそこじゃない、とでも言うように王子が僕の頬に擦り寄る。
「俺は3人欲しいな」
「え」
「ん? 子どもの話だ。お前は何人産める?」
「っ……」
なんて、残酷な質問なんだろう。本来は、運命の番として印を付けたのだから幸せな質問のはずなのに。
僕が、魔王ジスを想っているから……王子は何も知らずにーー。
「どうした。泣いているのか」
「っふ……ぅぁ……あ」
「俺の子を産むのが泣くほど嬉しいのか。よしよし」
ごめんなさい。
違うんです。僕、違うんです。
僕はあなたのために生きてはいないんです。
こういうふうになることは、わかっていただろうに。奴隷市場で王子に見つけられた瞬間にわかっていただろう。シュカ王子と僕は運命の番で。この結末は酷なことになると。
僕がシュカ王子を裏切ることを。
「さあ。注ぎ込まなければ。お前には早く俺の子どもを産んでほしい。それもたくさんだ」
「っ……」
シュカ王子が僕の額に軽く接吻する。
「愛しているよ。俺の阿月 」
その時のシュカ王子の表情が、今まで見た中で1番の優しい微笑みで僕はもう心がちぎれそうになる。
好きか嫌いかと問われれば、シュカ王子のことが好きだ。
愛しているかと問われれば、愛しているに近い。けれどーー僕を待つ魔王ジスのことも、愛している。
僕は一体どうすればーー。
王子の律動を肌で感じながら、瞳を閉じる。
この醜いこころを、誰にも見られたくなくて。
強く僕を抱くこの人を抱きしめる。
背徳に抱かれる僕のこころを嬌声で隠して、果ててゆく。
シュカ王子の世継ぎを産むためにーー。
僕は、僕を愛してくれるシュカ王子 を騙して、生きていくんだ。これから、ずっと。
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