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第52話 阿月様とシュカ王子と桜くんの1日(side きなこ)

 阿月様のお子さま。桜くんが生後4ヶ月を迎えた頃。  僕はなんでも口に運んでしまう桜くんをなんとか止めようと宥める日々を送っていた。桜くんは、ママである阿月様の言うことは素直に聞くのだが、阿月様が見ていないところで自由に冒険を始めてしまうのが、僕のひやっとするところだ。 「桜くん。危ないでちよ。それは、めっ! でち。積み木はお口に入れないでちよ。ぽんぽんが痛くなるでち」  シュカ王子が買い与えた赤ちゃん玩具の積み木を桜くんはとても気に入っている。寝ているときも手に握るくらいだ。積み木のおままごとセットのそれらは、人参の形をした積み木が特に桜くんのお気に入りでいつも舐めてしまう。僕は度々注意するのだが、許してもらえるとわかっているからかずっと舐めている。 「こらー。桜」 「あうー」  阿月様が部屋に戻ると、途端に桜くんは積み木を舐めるのをやめる。  なんなんでちか。この子……しっかりと、人を選んでやってるでちか?  あまりの賢さに唸っていると、そうか桜くんはシュカ王子の血を引いているからこんなにやんちゃくんなのだと納得することができた。  桜くんが生後6ヶ月を迎えると、阿月様の提案でハーフバースデーを行うことになった。  風船やリボンでお部屋を飾り付けして、桜くんにかわいいお洋服を着せて、家族写真を撮るのだ。 「阿月様。これ、よかったら……」  おそるおそる、阿月様にハーフバースデーのプレゼントを渡す。 「わー! きなこくん嬉しい! ありがとう。開けていい?」 「もちろんでち!」  桜くんのお洋服を作ってみたでち。気に入ってもらえるでちかな……? 「すごい。きなこくんの手作り!? さすがきなこくん天才だね! 今日はきなこくんにもらったお洋服を桜に着せて写真を撮ろう」  くまちゃんの耳をつけたトレーナーを作ってみたでち。  桜くんはいたずらしなければ、優しいくまちゃんみたいな子なんでちよ。 「はーい。写真撮るでちよー! 桜くん。こっち見てくださいでち」  僕は桜くんのお気に入りの人参の積み木をふりふりと振って、カメラに目線を誘う。シュカ王子は正装で、阿月様も羽織を身につけている。 「はい、チーズ」  何枚も写真を撮るのが楽しい。正面からの真面目なショットと、少し微笑ましいショット。すると、僕のことを阿月様が呼び止めた。 「きなこくんも一緒に写ろうよ」 「えっ。いいんでちか?」 「もちろんだよ。桜の隣に来て」  守備衛兵にカメラを渡し、僕も家族写真に混ぜてもらうことになった。  うう、緊張するでち。  撮影後、写真を印刷すると、緊張しながら笑う僕の顔を見たシュカ王子が、お腹を抱えて笑っていた。  ひどいでち。僕も緊張するんでち。  阿月様が大変喜んでいる様子だったのが嬉しくて、久しぶりにアザラシの姿に変身したら以前のようにもふってくれた。桜くんにこの姿を見せるのは初めてで、興味深そうに僕の毛をつんつんしていた。  僕は今とても幸せでち。

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