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 ルーが個人で所有しているという屋敷は、自然の中に建っているこぢんまりとしたものだった。と言っても、俺からするとすごいことにこの上ない。ただ侯爵家の人間が住んでいると考えると――というだけだ。 「夕食の準備をしておいてくれ。あと、俺が許可を出すまではプライベートなフロアには入ってくるな」  出迎えてくれた執事の男性に端的に告げ、ルーが俺の手を引いて屋敷の奥へと入っていく。なんだか申し訳なくて男性に視線を向け、ぺこりと頭を下げる。男性は穏やかに笑っていた。  内装はシンプルなのに、気品に満ちていた。あちらこちらに視線を奪われていると、ルーが迷いもなく一室の扉を開ける。  俺を室内に放り込んで、後ろ手に扉を閉める。  視線だけで室内を見渡すと、どうやらここは寝室のようで――。 「ルー?」  ルーを見つめて、彼の名前を呼ぶと――手首を引っ張られる。気が付いたら俺はルーの腕の中にいた。  驚いて目を見開く俺を気にする様子もないルー。俺の顎をすくい上げ、無理矢理視線を絡ませる。  目の奥の情欲に俺の身体が熱くなっていくみたいな感覚だった。 「なぁ、ユーグ――いいか?」  甘えたように問いかけられ、流されるようにうなずこうとした。が、今の俺は汚い。  せめて、湯を浴びてからじゃないと――。 「ちょ、ま、待って。風呂入りたい……」  首を横に振って言うのに、ルーは「待てない」と言って噛みつくように口づけてくる。  唇のうっすらとした隙間を強引にこじ開けられ、口内を蹂躙される。それだけで身体の奥がじぃんと熱を持った。  現金な身体だった。 「お前も――待てるのか?」 「――う」  口ごもった。  確かに身体は昂っていて、今すぐにでもルーに触れてほしいって思ってるけど……。 「き、汚い、から」  冷静になろうとして、真実を口にする。けど、ルーが「汚くない」と即刻否定してくる。 「ユーグはきれいだ。……お前のにおい、俺は好き」  首元に顔をうずめられ、においをかがれた。普通だったら嫌なのに、こういうのも心地よくてたまらない。  結局、俺はルーに弱いのだ。再認識して、ルーの服の裾をつかむ。 「――お手柔らかに、お願いします」  一体何度身体を重ねたのかはわからない。だから、この言葉が今更だということはわかっている。  が、恋人同士になってからははじめてなのだ。ほら、ムードって大切――だと思うし。 「――あぁ、優しくする」  俺の言葉に対し、ルーは深くうなずいてくれた。ほっと胸をなでおろしていると、ルーが俺の膝裏に手を入れて横抱きにする。 「ユーグ、また軽くなったか?」  ルーの問いかけに、俺は「かもしれない」と小さく言葉を返した。  ルーとのことがあってから、あまり食欲がなくて、食べることができなかったし。 「そっか。じゃあ、一緒に美味いものたくさん食べような」 「――うん」  素直にうなずくと、寝台に下ろされる。広々としていてふかふかの寝台。  到底一人用には見えない。  ルーも寝台に上がって、俺の肩を優しくつかんで押し倒す。そのままキスをする。今度は触れるだけの優しいものだ。 「んっ」  自ら唇を開いて、ルーの舌を誘い込む。  今度は自ら舌を絡め、すっかり慣れた唾液を交換するような淫らなキスを繰り返す。  身体中が熱くて、ゾクゾクとして。注がれたルーの唾液を呑み込むと、大きな手が俺の頭を撫でる。 「っはぁ、ルー」  熱っぽい声でルーの名前を口にすると、大きな手が俺の衣服に伸びる。 「もう、脱がしてもいいか?」  問いかけに首を縦に振った。あ、でも、そういえば。 「いいけど、ルーも脱いでよ……」  こんな高価な騎士服を汚すのは、絶対に無理だ。だから、俺はルーに衣服を脱ぐように強請った。

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