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 しばらくして、料理が届き始めた。  フライドポテトに三種類のピザ。明らかにおつまみ向けのベーコンとウィンナーのセット。  それから――城川のプリンアラモード。 「……いただきます」  城川は小さく手を合わせて、スプーンを手に取った。  生クリームがたっぷり添えられたプリンは、見るからに甘そうだった。 「美味しい?」 「……うん」  先輩の問いに、城川は素直にうなずいた。次に添えられていたキウイを口に運ぶ。 「今日は僕がおごるし、好きなだけ食べていいよ。嫌なことは、食べて忘れちゃえばいいんだ」  なんていう先輩はピザを頬張っていた。今食べているのはマルゲリータだ。 (二人の間に俺が口を出すと、なんか変だし、黙っておこう)  ピザカッターを持って、残りの二枚のピザをカットしていく。  残りの二種類はコーンマヨと、照り焼きマヨ。どれも王道で、絶対に美味しいラインナップ。 「城川はプリンが好きなんだな」  プリンを食べる城川の頬は、ちょっとだけ緩んでいた。そういう顔は、割と可愛い。  これが理想のオメガなのか――と思わせるほどだ。 (比べ、俺は可愛げなんてない)  どうしてこうも違うのだろうか。なんて頭の片隅で思っていると、城川が先輩からぷいっと顔を逸らした。  微かに赤くなった頬。ちらりと先輩を見て、城川はためらいがちに口を開く。 「こ、子供っぽいのはわかってます。けど、美味しいから……」  最後のほうは消え入りそうなほどに小さな声だ。  先輩は拗ねた様子の城川を気にすることなく、その頭の上に手を置く。 「別にいいんじゃない。僕もプリン好きだし。子供っぽいとか、大人っぽいとか。そういうの気にしなくていいよ」 「……ん」  なんだろう。城川はちょっぴり――嬉しそうだった。 「じゃ、じゃあ、一口あげる。……今日のお礼ってことで」  城川がプリンを掬って、先輩の口元に近づける。……待て待て待てって! 「いいの? じゃあ、遠慮なく」  なんの迷いもなく、先輩はプリンを口にした。  何度か咀嚼して、呑み込む。その後の先輩は――輝くほどに、美しい笑みを浮かべた。 「美味しいよ。ありがとう」 「ぼ、僕もそれ食べたい」  城川が先輩のピザに視線を向ける。  一体、俺はなにを見せられているんだろうか。 (三人で来たのに、一人だけ仲間外れってことなんだろうか……)  多分、二人は無自覚だ。そして、無自覚であるがゆえに、たちが悪い。 「祈、もうそれ切れてるよ」  皿の上を右往左往するピザカッターを見て、先輩がきょとんとしている。  ……そこはいろいろと、察してほしい。 (気まずいからピザを切っているふりをしてたんだけどなぁ……)  城川はすっかり先輩に気を許したらしい。ちょっとしたスキンシップを取りつつ、距離を詰めている。  いっそ、俺は帰ったほうがいいのかもしれない。この場を二人きりにしたほうが、互いに幸せかもしれない。 「あー、俺、もう帰ろうかなって思います」  ピザを一切れ、フライドポテトをほんの少し食べて、席を立つ。  先輩は驚いたように瞬きをしていた。ただ、城川は俺の気遣いに気づいたようだ。 「……気を付けて」  ぼそっとつぶやかれた言葉に、俺は苦笑を浮かべる。 「じゃ、先輩、城川。また今度。……城川、先輩に迷惑かけるなよ」 「お前に言われるようなことじゃないし」  相変わらず、城川は俺には冷たい。いろいろと思うことはある。でも、城川の気持ちが浮上したのなら――これでよかったんだろう。 (明日もあるし、今日はまっすぐ帰ろうかなぁ)  軽く考えつつ、ファミレスの扉を開けた、その先。  駐車場に高級車が止まっていた。だけど、俺の目を引いたのは――その車にもたれかかっている一人の男。 「よぉ、祈。久しぶり」  男は片手をあげて、俺の名前を呼んだ。  ごくりと息を呑む。どうして、ここにいるんだろう。 「――|奏輔《そうすけ》」 「覚えていてくれたの? 嬉しいな」  目を細めて、男は手に持ったたばこを携帯灰皿に押し付けた。

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