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 先輩から連絡が来たのは、一件から三時間後だった。  アパートでソワソワしていた俺は、先輩から連絡をもらって部屋を飛び出す。  指定されたのは、キャンパスから徒歩五分行ったところにある、大手チェーン店系列のファミレス。  お店の人に待ち合わせのことを伝え、店内を歩く。 「おーい、祈!」  奥の窓に面した席に、先輩はいた。  早足で近づいて、城川の前の椅子に腰を下ろす。 「先に追加注文していい? 祈もなにか頼みなよ」  メニュー表を手渡してくる先輩を制して、ドリンクバーだけでいいという。  先輩はむっとして、自分でメニュー表を開いた。 「せっかくだし、シェアして食べれるものを注文しようか。フライドポテトにピザ、あとは……」 「僕はプリンが食べたい」  城川がメニューのデザート欄を指さす。先輩は笑ってうなずいていた。 「いいよ。どうせだし、こっちの豪華なのにする?」 「……カロリー高そう」 「今日くらい贅沢しなよ。自分を甘やかすのも大切だからね」  優しい声に反論する気も起きないのか、城川は素直に首を縦に振る。  店員を呼んだ先輩は、俺のドリンクバーとシェア用の料理をいくつか。そして城川のプリンアラモードを注文した。 「――と、祈、ごめんね。いきなり呼び出したりして」  閉じたメニューを元に戻して、先輩はコップを口に運ぶ。色からしてメロンソーダだろうか。 「あの後、城川と歩きながら話したんだ」  先輩いわく、近くのコンビニでアイスコーヒーを買って、二人で飲みながら散歩をしたのだと。 「城川は、純粋に上月が好きだったんだよな」  問いかけに、城川はうなずいた。  震えた城川の身体を落ち着けるように、先輩がその背中を撫でる。落ち着かせるように、ゆっくりと、優しく。  酔って愚痴ったあげく、泣き出した俺をなだめるときと同じ手つきだった。 「祈が上月を疎んでいるのは知っているよ。ただ、同時に祈も知っておいたほうがいい。彼を好きな人もいるんだって」 「……それは」  知っている。納得している。それくらい、理解している――はずだった。 「城川みたいに話せばわかるタイプならいいけど、そうじゃない人もいる。正直、僕は祈と上月の現状をよく思っていない」  大きなため息をついた先輩は、頬杖を突いた。  どこか遠くを見つめる先輩には、不思議な魅力があった。その瞳はなにもかもを吸い込むブラックホールみたいだ。 「くっつくならくっついて、離れるなら離れたほうがいいよ。このままだと、祈も上月も。それこそ、ほかの人間も傷つくだけだ」  唇を噛んだ。  先輩の言うことは、正しい。俺たちの関係は周囲を振り回している。 「僕は祈のことを大切な後輩だと思っているから、上月の主張よりは祈の主張を優先する。ただ、それは二人が歩み寄ってからの話だ」  先輩は立ち上がった。それから俺の隣に移動する。じっと瞳を覗き込まれて、心臓が跳ねる。 「歩み寄って、話し合って。きちんと自分たちの気持ちをすり合わせて。それでもダメなら、もう一度逃げたらいい」 「……先輩」 「でも、そのときにほんのわずかでも上月を好ましく思う気持ちがあったなら。――真剣に、考えてあげな」  先輩の手が伸びて、俺の頭を撫でる。優しい手つきは、いつもとなにも変わらない。 「逃げるときは教えてね。僕も全面的に協力するから」 「――はい」  素直にうなずくことができた。  頑固はやめよう。亜玲ときちんと向き合おう。 (今度こそ、きちんと向き合う。亜玲と話し合う。今後のことは、それから)

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