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エンドロールのその後に
僕は目の前にアンドリューから渡された小瓶を掲げ、思案する。
ルーファスとは想いを告げあって、両思いになり、恋人になり、婚約者になった。
ダンカン伯爵家に養子に入り、寮からそちらの屋敷に引っ越す時、なぜかルーファスが来て、キンケイド家へ連れていかれそうになるハプニングもあった。
ルーファスいわく、せっかく寮で一緒に暮らせるのに、ダンカン伯爵家へ行くことはないと、引っ越すなら自分の屋敷へとわがままを言ったのだ。
そこで平日はダンカン伯爵家、休日はキンケイド侯爵家で過ごすことになった。
寮で過ごすという僕の意思はまるっと無視されたけど、貴族家へ嫁ぐためには色々覚えなければならないことがあるらしく、僕は素直に受け入れた。
ルーファスは今、僕の婚約者となっている。でもまだキスしただけで、成人向けの行為はしたことが無い。
だから僕は必死で調べたのだ。同性同士のやり方を。この国はBLゲームに似た世界だから、同性同士の結婚も出来る。そして、そのやり方もハウツー本みたいそなものがあった。
恥ずかしくてたまらなかったが、その本を取り寄せて貰うようアンドリューに頼んだ。そうしたら自室に戻ったアンドリューは、すぐに戻ってきてもう内容は覚えているからあげるよー、と言って差し出してくれたのが、その本だった。
テーブルに置いておいた本を手に取って、小瓶と一緒に両手で持つと、それを眺めながら僕は嘆息する。
尻穴……、アナルの拡張なんてどうすればかなんて、僕にはわからない。
キスは、近頃一日一回……、いや、二……五回くらいしてる。だってルーファスが止まらないのだ。飢えたような眼差しで「足りない」なんて言われたら、もう降参して唇を差し出すしかない。
「僕がやったのは全年齢BLゲームであって、成人向けじゃない!」
叫んでもどうしようもないが、叫びたくて仕方ない。
けれど、ルーファスをそんな行為をしたくないかと言われたら、したくないわけではない。
「だって、したいに決まってる! 僕だって年頃の十代、性に興味津々なんだ!」
息を切らしながらそう叫んでから、僕はソファーに座る。今日は金曜の夜で、学園の授業が終わってからダンカン家へ帰ると、ルーファスも一緒について来て、実は隣に座っていた。
「サッシャ、考えごとは終わったか?」
「終わってないよ。この問題にどう立ち向かえばいいのか、全然わかんないんだ!」
それはそうだろう。僕はまだぴちぴちの十代だ。自慰もろくにしたことがなく、本で読んだだけのことを実践する勇気もない。
「あのさ、ルーファス。僕は前世でこーゆーことしたこのないの。しかも、結構若い時に死んだから、成人向け設定の話は読んだことない!」
「それで?」
「えっちなことしたことないから、その……お付き合いだってしたことないんだから仕方ないんだ! だから、いきなりセック……んんっ、こーゆーのは無理!」
全年齢向けのヒロイン(♂)に、この展開は早すぎる。僕は手に持っていた小瓶と本をゴミ箱へ投げ捨てようとして、思い留まる。アンドリューがくれた本とこの小瓶はきっと僕の役に立つはずだ。
いくらルーファスが僕のことを好きでも、他人の尻穴なんて触れたくないはずだ。だから、拡張作業とやらは自分で行わなければならない。
「一ヶ月、いや、一年待ってくれる? ルーファス、僕、頑張るから」
「何を?」
「尻穴拡張だよ!」
僕は拳を握りしめて立ち上がり、それを振り上げる。勢い込んで自分を鼓舞しなければ、こんなこと出来そうもない。
「し……」
思わず叫んでしまって、誰に何を言ったか今頃気づく。ルーファスはティーカップを持ったまま固まっていた。僕は急いで言い訳を口にする。
「あ、あの、ルーファス、その、ほら、結婚したらさ、そーゆーことするだろ? だから、今から慣らしておかないといけないんだ。本にもちゃんと書いてあった。いきなりは入らないって! だから、もう少しだけ待っていて欲しいんだ。これはその、セックス前の準備運動っていうか練習みたいなもんさ!」
「練習……」
「そうそう。練習するんだ」
「自分で?」
「うん」
自分で以外誰がやるんだこんなこと。自分だってやりたくはない。けれど、やらないとセックスが出来ないと書いてあるんだから仕方ない。
「なら、俺と練習しよう」
「ルーファスと?」
「俺以外としたら、その相手を殺す」
「しないよ!?」
僕だってそれが浮気になることくらい知っている。僕は浮気なんて大嫌いだ。自分がそんなことをする人間だと思われたことに驚いてしまう。
「サッシャは可愛いから、危険なんだ。サッシャをそんな目で見ている奴らを根こそぎ消してしまいたいといつも思っている。でもそんなことをすればサッシャは俺を嫌うとローラントたちは言う。だから……」
「ストップ!」
誰だ、ルーファスが無口なんて言ったのは、僕が止めなければもっと話していたぞ。
「僕が可愛いのはその通りだけど、浮気なんて絶対しないから安心して! その練習もルーファスとだけやる!」
「本番も?」
「うん、本番も!」
そこまで言って本番ってことは、本に載っていたように最後まで致す、という事だ。恥ずかしくて叫びたいがここは我慢だ。今の僕はルーファスの婚約者だし、キスだってしたことある。ルーファスとは結婚するのだ。こんな事でいちいち怖気づいていられない。
「学園を卒業するまであと二年ちょっとあるからね! 僕だってやる時はやる男だ!」
二年と少し時間があるなら、この恥ずかしさもなんとかなるだろう。
「二年ちょっと?」
「うん。卒業したら一緒に暮らすんだよね?」
学園を卒業したら結婚式場があって、ルーファスと一緒に暮らすと聞いている。まだルーファスのプロポーズはされてないけれど、キンケイド家に行った時に、ご両親と兄弟に会ってそういう話をした。ルーファスからのプロポーズがまだだったから、そうなんだーとしか思えなかったけど、優しそうで良かったと思った。
「ああ、ばあ様に貰った屋敷を改修してる」
「……そーなんだ」
「ああ、そろそろ練習するか?」
今日は金曜日の夜、明日から二日間は休みでここはダンカン家の僕の部屋だ。夕食も風呂も終わったあと、ルーファスに抱えあげられてここに連れてこられている。
当主であるダンカン伯爵は仕事で遠方に出ており、アンドリューは外泊すると言っていた。
「え、その……」
「練習、したい」
「うん……」
淡い室内灯の中、真摯な眼差しを向けられた僕には、頷く以外ない。ドキドキとうるさい心臓の音を聞かれるのが恥ずかしくて、小さな声になってしまった。
自分だけがこんなに恥ずかしいのかと思い、ルーファスの胸に手を置く。ドキドキと早鐘を打つ音を手のひらに感じ、ルーファスを見上げる。
「ドキドキしてる……」
驚いてつい声に出してしまった。
「サッシャに触れる時はいつも緊張する」
「そーなの!?」
ルーファスも僕と同じだったと目を見開く。
「サッシャも?」
「うん、いつもドキドキする!」
ルーファスはとても綺麗だ。そんな綺麗な顔で緩く微笑みながら話しかけられたら、ドキドキして嬉しくて幸せでたまらなくなる。
ルーファスの顔が徐々に近づいてきて、僕は目を閉じた。ちゅっと唇にキスが降ってくる。唇から幸福感が体中に広がるような気がした。ふふ、と笑うと唇を離したルーファスがどうかしたのかと見つめている。
「幸せだって、思って」
初めて恋が出来た。恋した相手が好きだと言ってくれてる。それだけで、幸せに胸が熱くなる。
「もっと幸せになってくれ」
言われた言葉にますます幸福感が上がっていく。僕は頷いて「一緒にね」と呟き、自分からルーファスの唇に自分の唇を押しつける。
「ふふ、ルーファスは僕が幸せにするね!」
「もう充分幸せだが、楽しみにしてる」
甘くてふわふわして、凄く温かいルーファスの腕に包まれて、キスをするのは本当に気持ち良い。僕はうっとりしながらルーファスに身を任せる。
「んんっ……」
唇を覆うようにキスされて、舐められる。口を開かされて中にルーファスの舌が入ってきた。ぬるついた感触が何故か背中をぞくぞくした快感となって下りていく。
「ん、う……むっ」
息をしようと口を開けても、それを遮るようにルーファスの唇が愛撫してくる。ろくに息が出来ず、その所為で酸欠なのかぼんやりし始めた。キスは何度かしているが、こんな風に止まらないのは初めてだ。
「ふ……、んんっ……あ、ぁ……」
鼻を抜ける息が、自分で聞いても恥ずかしくなりくらい艶を増している。僕を抱きしめているルーファスの腕に力が入り、ソファーから立ち上がって抱き抱えられた。その時もキスは止まらず、足は浮いたままベッドまで運ばれる。
「……あ?」
舌が引き抜かれ、キスが終わる。二人の唾液が混ざったものが、糸となってつながり、ぷつりと切れた。恥ずかしさに唇についたそれを手の甲で拭い、顔をあげる。瞼を開けて見れば、そこには滴るほどに欲望を含んだ眼差しを自分に向けるルーファスがいた。
「あ……」
緊張にごくん……と唾を飲み込み、そして気合いを入れる。これから僕はルーファスとセック……、恥ずかしい、エッチの練習をする。キスの練習も上手くいっていたのだから、こちらも大丈夫だと自分を鼓舞した。
「……ちょっと待っていてくれ」
「へ?」
今から怒涛の展開があり、あはんうふんな雰囲気になるのだと思っていたので肩透かしを食らった気分なる。
ルーファスはベッドを降りて、もう一度ソファーに向かう。そこにはアンドリューから貰った本と小瓶がある。そのピンク色の液体が入った小瓶は潤滑剤でちょっぴり媚薬も入っているといういわく付きだ。見つめているとルーファスは、その瓶の蓋を開けて手のひらに少し垂らした。
そのピンクの液体を指先ですくうと、なんと自分の口に入れた。
「なっ!?」
「味は、大丈夫だ」
「なにがっ!?」
「味?」
ほんの少し首を傾げながら言うルーファスに脱力しながら、僕は伸びあがってルーファスの唇を舐める。ほんのり甘い味がした。その味を吟味していると、突然ベッドに押し倒され、そのままのしかかられた。
「ま、待って、もうひ……んんっ、……ちょ、……ぁ……っん、どこ触って……っ」
着ていたパジャマのボタンを器用に外され、今はパジャマの下を足から引き抜かれる。それを押えようとすれば、片手で防がれてしまった。
「ちょ、ルーファ……んんっ」
抵抗しようとした言葉もキスで塞がれる。嫌なわけではないが、まだ心の準備が全く出来ていない僕は、じたばたと暴れてルーファスの腕を止めようとした。
「……サッシャ、邪魔はしないでくれ。俺も初めてで、
「は、話を聞いてよ!」
「聞いているが?」
「そーじゃなくて、僕、本当にこんなことしたことなくて、それで……」
「わかった。全部俺に任せてくれて良い」
「は? いやいや、……んんっ!」
キスされて言葉は遮られた。ルーファスの大きい手が僕の頬を包み、指先で耳元を擽る。顎の下や首筋を指の腹で撫でられ、僕はびくびくと感じてしまう。
「は、ああっ……っ」
吐息を漏らせば、ルーファスの唇が離れ、今度は指の後を辿るように下に降りて行く。
「んんっ」
ふるり……お震える胸元にはルーファスの形良い唇が吸い付き、離れた後は色鮮やかに乳首が色づいている。
汗ばんだ肌はしっとりとしていて、滑らかなシーツの上を滑る腕は、その冷たさを心地よく感じた。
「あ、ああっ」
ルーファスは僕が感じている時、足の間に体を入れて、太ももを抱えながら、薄い腹に楽しげにキスを落としていた。
「んっ!」
わざと僕の嬌声が上がる箇所に、ルーファスは何度も強く吸い上げる。
「……あ、やあぁっ……!」
「サッシャ、気持ちいいか?」
「ばかぁ……っ!」
ルーファスに触れられるだけで息も絶え絶えなのに、そんなことを言われたら恥ずかしさにどうにかなってしまいそうだ。
「俺の手で、気持ちよくなってくれているサッシャを見るのは、好きだ」
「う……」
ルーファスの手は色づいた胸の先端を指先で撫でながら、うっそりと微笑んでいる。
「も、もう! ルーファスに任せるから、僕わかんないからっ!」
これから先、どんな風になってしまうのかわからない。本で勉強したけれど、胸を触られただけで感じてしまうなんて思っていなかった。
「ああ、任された」
楽しそうに笑うルーファスは本当に綺麗で僕も微笑んだ。
***
手のひらで愛撫され立ち上がっている僕のモノを、ルーファスはその口にふくもうとしている瞬間は、恥ずかしくて目を閉じた。
「や、……あ、あああ――っ!」
ちゅう……と先端に口づけされ、電流が走ったかのように背中を反らす程、快感を感じる。
今まで誰かに直接触れられることなんてなかった場所を、湿っていて柔らかく温かい場所にふくまれて、目の前がチカチカした。
「あ、ああ、あ……っ」
唇からすぐに引き抜かれ、唾液で濡れた自分のモノを見て、羞恥心にカッと暑くなる。そのまま舌先で裏筋を辿って根元まで舐められ、戻る時はちゅちゅっと皮を引っ張るように唇で吸いながら先端に戻ってくるルーファスに、どこでそのテクニックを覚えたんだと叫びたい。実際は喘ぎ声が出るだけだった。
ルーファスの空いた手は、僕が足を閉じないように太ももを抑えているし、しかも太ももを押さえながらその肌を撫でて愛撫していた。ルーファスに触れられるとどこもかしこも感じてしまい、僕の体はびくびくと反応していた。
体の中が熱くてたまらない。全ての熱が今ルーファスが愛撫している場所に集まっているようだった。
「あ、あ、あっ!」
強弱をつけて扱かれ、先端を唇で吸われ、たらたらと流れ出ている先走りのものを鈴口に擦りつけられる。息が詰まる程の快楽に、ぐっと体に力が入った。
「あ、ああっ!」
チカチカする視界に、限界が近いのだとわかっても、僕には為す術もない。ルーファスの手のひらと唇と舌の愛撫に翻弄され、喘ぐような呼吸を繰り返す。
「ひゃ、あ、ああっ」
じゅっ……と唇で扱かれ、先端を強く吸われると、一気に熱いものが飛び出した。
「あああ――――っ!」
びくびくと体が震え、息が苦しい。ふいに目を開けるとルーファスと目が合い、濡れた唇を笑みの形にしているのが見えた。そして、喉を動かし何かをごくんと飲み込んだ。その後に舌を出して唇を舐める姿に、一瞬何が起こったのかわからなかった。
「あ……」
「気持ち、良かったか?」
そんな言葉をかけられて、なにか言えるはずもない。目をを見開いてパクパク口を動かすだけで、僕は何も答えられない。
「ああ、もう少し、残ってるな」
そう言ってルーファスは、再び僕のモノの先端に唇を開いて吸い付いた。
「やぁっ……っ!?」
中に残っていたものも全て吸い出され、抜けるような快感に悲鳴のような声が上がる。
僕はもう気持ちよくて、そして熱くて、どうしようもなく、目を閉じてしまった。
あれ? と思う。僕はいったい何をしていたのか咄嗟に思いつかず、瞬きを繰り返す。
「気がついたか?」
「……ルーファス」
僕はうつ伏せに寝そべっていた。そしてすぐに違和感を感じる。おもに下肢に。背後からぬちゃ……という粘液の音が聞こえて、それは違和感がある場所からのように思えた。そこ……、アナルからなにかが引き抜かれ、縁を辿るように触れられる。指だ。
「ルーファス……?」
「潤滑剤を使って丁寧に解したから痛くなかったと思うがどうだ?」
「うん?」
痛くなかった? 確かに今痛みを感じているところは無い。それどころか体が熱く感じるし、先程まで触れられていたアナルは痛みと言うよりジンジンしたように感じていた。
「サッシャは一年かけて拡張すると言っていたが、もう三本入るぞ」
「へ?」
何が三本入るの? と聞く前に、縁を撫でていた指が一本、僕のアナルに入ってくる。潤滑剤をふんだんに使ったのか、そこは濡れて滑りが良く、滑らかに指を吸い込んでいる。くるりと指を回され、少し収まっていたジンジンした感覚がまた強くなる。
「あっ!」
「……二本目」
一本目が引き抜かれ、次に二本同時に入ってきた。
「ひっ!」
二本の指が入ってきた後、指を広げられた。中に空気が入るような感触に悲鳴を上げてしまった。
「驚かせたか? すまない」
「う、ううん……。だいじょう、ぶ、あ、ああっ」
「三本目だ」
ルーファスの言葉に僕は感じいってしまう。ぐずぐずに解けた場所には、指が三本入り込み、浅い所を何度も愛撫するように刺激している。溢れた潤滑剤が溶けて尻を伝い、シーツを濡らしているのはわかっているが、僕にはそれを気にしている余裕はない。
「あ、ふ……っんんっ!」
中のぽってりしている箇所を何度も擦られ、直接触れられていないのに前の方からは押し出されるように透き通るような白濁した液が垂れていた。
「や、も……、前……があっ!」
「前? もう少しこちらに集中してくれ」
ルーファスは僕が前を触って欲しいと思ったのか、そんなふうに答えてくる。違うというように首を振っても、枕に髪が擦れる音しかしない。
「あ、……んんっあ、あっ!」
ぐっと三本の指を押し込まれた瞬間、たらり……とまた押し出されるように零れた。
「や、あっ!」
熱くて熱くてたまらない。中を弄られているだけでは、直接前を弄っている時のような快感と終わりが見えず怖くなってしまう。気を失っている時に解されていてよかったのか、それとも怒るべきか悩む暇もなく、ルーファスは僕の中を指で愛撫している。僕はいったいどれだけの羞恥心を捨てたら良いのだろう。
「は、んんっ、や、もーやだぁ……っ」
見えない背後から中を弄られて、未知の感覚に泣きごとが出る。
指を引き抜いたルーファスは、僕をひっくり返すと伸びあがって胸を舌先で舐めた。それも乳首の周りをぐるりと囲うように。立ち上がった乳首に息が掛かり、体が震えた。
「やっ…」
その先端を押しつぶすようにぺろりと舐められ、思わず目を見開く。舐められた箇所からびりびりした感覚が伝わり、体が反応するのを止められない。
「あ、ああっ……んっ」
僕の反応に気を良くしたのか、ルーファスは唇を窄めて、赤く色づいた果実のような先端を口に含む。途端に息が吐き出された。
「はっあっ……」
ちゅう……っと音がするほど乳首を吸われ、舌先で撫でられ、甘く歯を立てられた。
「やっあああっ……!」
そこから感じる快感に、震えるほど身悶えしてしまう。何度も繰り返されたせいで、部屋の淡い灯りを受け、濡れててらてらと光っているのが見えた。
その濡れた部分にふう……と息を吹きかけられ、その箇所が冷えてまた違った快感を感じてしまい、僕は何度も体を揺らす。
「……ぁ、んっ」
「気持ち、いいか?」
舌を使ってべろりと反対側を舐めたルーファスは、僕の表情を見てそう口にする。顔を赤くして、体を震わせている僕は快感に赤く染まっているように見えるだろう。
「ばかあ……っ! 聞かないでっ」
気持ちいいに決まってる。初めて感じる快感に、身も心も蕩けてしまいそうだ。
「ここも……、全部触れるのは俺だけに許して欲しい」
囁かれる言葉は甘い毒のように、身の内に入り込み、快感に眩んだ思考を犯していく。
白濁した精液が垂れている僕の陰茎に、ルーファスは躊躇いもなく触れる。握りしめて親指の腹でその先端を擦られると、ビリビリした快感がまた広がっていく。
「サッシャ、頷いてくれ。見せるのも触れるもの、俺だけだな?」
「……う、ん」
そんなこと聞かれなくてもルーファス以外に触れさせないのに。
「ルーファスに、触れるのは……?」
「え?」
「ルーファスに触れるのも僕だけで良いの?」
声が震えてしまう。僕は幸せに慣れてない。いつだって手放せると思っていないと、それが無くなった時自分がどうなるのかわからないからだ。
「サッシャだけだ。今までも、これからも、俺の全てはサッシャのものだ」
「全部?」
「全部。この命果てるまで……果てても、ずっとだ」
「ルーファス……っ!」
僕はルーファスに抱きついてその唇を奪うように重ねた。気持ちが昂って仕方ない。ルーファスが好きで好きで仕方ない。
僕を見つけてくれてありがとう。
僕を好きになってくれてありがとう。
ルーファスの言葉はいつも僕を救ってくれる。
「ルーファス、好きだよ。好きだ……ずっと、一緒にいたい。僕を離さないで。僕も絶対離さない!」
もっと深く繋がりたかった。離れないように深く強く、ルーファスを縛りつけたい。
「いれて、ルーファス」
足を広げてその奥にある、柔らかくなった場所に手をやり、指で広げる。
ルーファスも既に服を脱いでいたので、僕の上げた足を掴むと折り曲げた。
「サッシャ、愛してる」
僕の唇を塞ぐようにキスして、舌を絡める。ぐぐっと腰を押しつけられ、アナルの縁を広げてルーファス自身が入ってくる。
「あ、ああっ」
ぐっぐっと押しつけられ、内壁を広げながら押し入ってくるルーファスのそれが愛しくて堪らない。
「ふ、う……」
ルーファスの動きが止まる。僕は閉じていた瞼を開いてルーファスを見つめた。
「全部、入った……?」
「まだ、あと少し」
そう言ってルーファスは、僕の腰を掴むとグッと押し込む。僕と尻とルーファスの腰がくっついて肌が当たる。
「あ、あっ」
「全部入った。……サッシャは俺のものだ」
「うん、……うん」
ルーファスの唇がまた僕の唇に触れる。僕はルーファスの腰に足を巻きつけてぎゅっと抱きつく。中に入っているルーファスをまざまざと感じ、身を震わせた。
「あん、……ぁあっ」
その声が合図だったみたいに、ルーファスが動き始める。ゆっくりと引き抜いて、また押し込める動きを繰り返し、徐々にスピードが早くなる。
内壁を擦り、奥の壁を突き、その熱が高まっていく。
「ル、ふ……っあん、あ、あ、あっ」
舌を突き出し、ルーファスのそれと絡めた。僕らは下も上も絡まり合って、同じ動きをしている。熱くて気持ちよくて、僕は自分がどうなっているのかわからなくなる。
唇を割って入って来たルーファスの舌が粘度のある水音を立てて、僕の舌や上あごの下を何度も擦りつける。その動きは腰と同じで、体中でルーファスを受け入れているような気になってしまう。
「んっ……ぁ」
苦しい体勢の筈なのに、それよりも気持ちよさの方に意識がいってしまい、上に乗られ腰を動かされている今快感しか感じられない。
何度も擦られ、快感を与えられる。すぐに僕に限界がきた。
「あ、あ、あっ! や、だめっ も、あ、あああ――っ!」
びしゃり……と熱いものが薄い腹に飛び散ったが、ルーファスの動きは止まらなかった。僕みたいに切羽詰まっていないからか、腹に散った欲望の印を手のひらで広げた後、麗しいとしかいいようのない微笑みを浮かべていた。
「きれー……」
こんなに綺麗で優しい人が僕を求めてくれる。僕を好きだと言い、愛していると囁いてくれた。
ずっと感じさせられていて、何度も高みにのぼった僕は、もう体力も限界だった。ぽろり……と目尻から涙が溢れると、僕は囁く。
「ルーファス、僕で気持ちよくなって」
「もちろん」
ルーファスは腰の動きを早めて、登り詰めようとする。何度も奥を抉られ、擦られる。
「あ、んんっぁあっ、あ、あ、あっ」
エンドロールが流れても、物語の中ではないここでは、その後も続いていく。でも僕はもう、嘆いたりしない。ルーファスがそばにいてくれたら、なんでも出来るような気がした。僕はなんだか眠くなってしまい、瞼を閉じる。
「サッシャ……、起きたら俺のプロポーズを聞いてくれ。ローラントたちにようやく及第点を貰ったんだ」
王子に及第点を貰った? 気になるプロポーズのセリフも今は睡魔に吸い込まれてしまったみたいだ。温かい気持ちを抱きしめて僕は眠る。
僕が育てた悪役令息は、僕を幸せにしてくれた。
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