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切なくて残酷で綺麗で1
俺が|横家大輝《よこやだいき》に告白をされたのは高校2年のときだった。
俺と大輝と|氷見谷涼《ひみやりょう》の3人はいつも一緒にいた。大輝と涼が幼馴染みで、中学のときに俺が涼と同じクラスになったことをきっかけに仲良くなり、大輝とも仲良くなった。中高一貫校に通っていた俺たちはそのまま高校生になり、いつも3人一緒だった。
「湊斗。俺、湊斗のことが好きだ」
大輝の部屋で一緒に漫画を読み、休憩にジュースを飲んでいるときに何の前触れもなく唐突に告白された。
「え? 大輝?」
あまりにも唐突すぎて、一瞬なにを言われているのかわからなかった。わからなくて、ただ大輝の目を見ていた。大輝の目は真剣そのもので冗談を言っているわけじゃないことはわかった。でも、好き、の意味を飲み込むの時間がかかった。
「突然でびっくりさせてごめん。でも、俺、マジで湊斗のこと好きなんだ」
「好きって……」
「恋愛の意味だよ」
恋愛の意味だと言われて、ただびっくりした。だって大輝はサッカー部で女子からすごい人気だ。そんな大輝が俺のことを恋愛の意味で好きとか想像もできなかった。
「言うつもりなかったけど、湊斗って密かに女子に人気あるって知ってる? だから湊斗が誰かに取られるのが嫌で告白した」
俺が女子に人気があるなんて知らない。告白されたこともないし。
「料理部。男子って湊斗と池ヶ谷くんだけでしょ。料理男子っていうだけで女子にはモテるのに湊斗は色白で綺麗だって言ってモテてる。自覚ない?」
「自覚なんてないよ。告白されたこともないし」
「良かった。他の人に先越されなくて。他の人に取られたくない」
「俺のこと好きって本気の本気?」
「本気だよ。本気で好き」
大輝が俺のことを本気で好きだと言ってくれたことが嬉しかった。それは俺も大輝のことが好きだから。それでも大輝は学校でもとにかく人気があるし、男同士だから絶対に叶わないと思っていた。でも、それも大輝が俺のことを好きだと言ってくれるのなら話しは変わる。
「大輝。俺も好き」
俺がそう告白すると俯いていた大輝は弾かれたように顔をあげ、俺を見る。びっくりしたみたいだ。
「ほんとに?」
「うん」
大輝の問いに頷くと、大輝に抱きしめられた。お日様みたいな大輝の匂いがする。きっといつもサッカーで走り回っているからだろうな。なんだか落ち着く。
「俺、中学生のときから湊斗のこと好きだったんだ。だからめちゃくちゃ嬉しい」
大輝が中学生のときから俺のことを好きだった? いつも一緒にいたけど、そんなの全然気がつかなかった。それは大輝が隠すのが上手かったのか、俺が鈍感だったのか。それでも俺もずっと大輝のことが好きだったから、とにかく嬉しかった。
それから俺と大輝は付き合い始めた。大輝が俺のことを好きだと知っているのは涼だけだと言う。いや、涼は俺が大輝のことを好きだということも知っている。つまり俺と大輝が両想いだということを涼はずっと前から知っていたことになる。だからだろうか、涼に付き合い始めたことを伝えるととにかく喜んでくれた。
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