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切なくて残酷で綺麗で3

 高校生の間はそうやって部活で作ったもの、たまに家で作ったものを大輝に差し入れしていた。お菓子以外の料理に関してはタッパーに入れてお昼休みに涼も一緒に3人で食べたりしていた。それらの料理は大輝にも涼にも好評だった。 「湊斗は将来カフェをやるのが夢なんだろ? スイーツも扱えるんじゃん?」 「普通にランチとかの軽食を扱うのもできるだろ。料理上手いから」  涼も大輝もそう言ってくれる。料理部にいるのは料理を作るのが好きだからというのもあるけれど、そういったことができたらいいな、という思いもある。 「お金を取るのに値するかな?」 「大丈夫だと思うけどな。湊斗が作るのは料理もお菓子もそこら辺のお店で出してるのと遜色ないと思う。だから自信持って」 「俺はお菓子はたまにしか食べれないけど、それでも大輝のいうように下手なお店より美味しいと思うよ」  俺が作るお菓子のほとんどは大輝が食べている。それは俺がお菓子を作るのは大概、部活でだからだ。家で作ることもあるけれど、家で作るのは普通の料理の方が多い。だから涼がお菓子を食べるのは長期休暇のときくらいになってしまっているのだ。 「大学生になったらサークルどうするの? 料理系のサークルってないんじゃないか」 「それなんだよ。俺の知っている限りではなくってさ。だからいっそサークルには入らないで、その時間をバイトに当てようかなとか考えてる」 「何か将来役に立ちそうなサークルあればいいな」 「まぁね。でも、サークルなくてもバイトで経験積んだり、他のカフェに行って研究したりって考えたらサークルなくてもいいかな、って考えたりする」 「そっか。確かに他のお店行って分析とか必要かもしれないよな。なんか俺たちの中で一番しっかり将来について考えてる気がする。でも、それ言ったら大輝もプロのサッカー選手になりたいんだろ」 「うん。海外のチームでプレーしたいと思ってる」 「海外か。だから大学では英語文化学科なんだろ? サークルはサッカーだろ」 「ああ。英語サークルとかもいいなと思うんだけど、将来サッカー選手としてやっていきたいならサッカーかなと思って」  大輝は小学生の頃からプロのサッカー選手になると決めていて、高校に入ってからは海外のサッカーチームに入りたいと言っている。英語はそのために必要なのだろう。全世界英語が通用するわけではないけど、とっかかりとしては英語は有効なんじゃないかという考えからだ。  海外のサッカーチームに入れたらいいな、と言っているし思っている。でも、ほんの少し国内のチームならいいのに、と思っているのは大輝には内緒だ。だって、海外のチームに入ったらお菓子も料理も差し入れできなくなる。それは傍にいられないことを意味する。  大輝がずっと俺の作ったものを食べたいと言ってくれているように、俺はずっと大輝に食べて貰いたいと思っているからだ。俺の作ったものを食べて、それで頑張って欲しいなんて図々しいだろうか。でも、ずっと傍で応援していきたいと思っているんだ。大輝はそんなこと知らないだろうけれど。 「あーぁ。大輝も湊斗も将来設計がきちんとされているのに俺なんて経済学部に入りたいっていうのはあるけど、その先は不透明だもんなー」  将来の話しをするといつも涼はそんなことを言う。でも経済学部ならなんらかの形で役に立ちそうだし、公認会計士や税理士っていう手もあるんじゃないかと思っている。そう言うと涼は苦笑いをする。俺は涼だってしっかり考えた上での経済学部志望だと思ってる。  でも、カフェ経営希望の俺、海外のサッカーチーム希望の大輝、経済学部卒を活かして就職するであろう涼。3人が3人別々の道へ進むけれど、大人になってもずっと友だちでいたい。高校卒業まであと1年と少し。俺と大輝はこの先も一緒にいられるんだろうか。そんな不安を抱えていたりする。
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