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同じ空の下1

 あっという間に9月になり、海外へ行く日になった。東京から直行便があるのはパリだけなので、まずはパリに行く。そこでまずはパリのカフェでコーヒーを楽しんでからローマへ行き、それからデュッセルドルフへと行き、帰国はもう一度パリに寄ってそこから東京に帰ってくる。昔に比べてヨーロッパへの直行便が減ったのが辛い。  パリ着が現地時間の16時25分。そこからタクシーでホテルまで行く。以前はバスで市内まで行き、そこからタクシーでホテルへ行っていたが時間のロスが生じるので今回はタクシーで直接ホテルへ行くことにした。優馬さんと落ち合うのもホテルで。同じホテルだから待ち合わせも簡単だ。  しかし、東京からパリまで直行便で14時間40分。半日以上かかるのだ。機内で寝てしまうと夜寝られなくなりそうだけど、映画を観るか本を読むかしかないので退屈で寝てしまうだろうな。  機内に乗り込んでからはデュッセルドルフのガイドブックを開いた。パリとローマはすでに2回行っているし、観光もしているので見るところは特にない。することはカフェの梯子だけだ。けれどデュッセルドルフは初めてなので少し観光が出来たらと思っている。  まず、ライン川は見逃せない。後は旧市街。他は美術館や博物館、城があるけれど、そんなに観光をする時間があるわけではないので、ライン川と旧市街で十分だ。旧市街では食事をすればいいし、そうしたらわざわざ出向くのはライン川だけになる。  ドイツの街並みを見るとやはり昔からの建物でタイムスリップしたかのようだ。でもその建物もフランスやイタリアとは異なる。ドイツは童話などに出てくる建物みたいで可愛らしさを感じる。  今回行くカフェは最低3ヶ所。1ヶ所は正門さんに紹介して貰ったカフェ。もう1ヶ所は日本人のやっているカフェ。この2ヶ所では日本式のコーヒーが飲めるだろう。しかし、それとは別に日本と全く関係ない普通のドイツのカフェに行ってみたい。ドイツもお店ではエスプレッソらしいので、パリやローマと比べることができる。ドイツは全くの初めてなので、カフェへ行くだけでもドキドキする。そしてドキドキするのは街並みにもだけど、ドイツのどこかに大輝がいると思うからだ。今までは日本とドイツと別々の空だったけれど、今度は同じ空の下になるんだ。もちろん大輝がドイツのどこにいるのかはわからない。デュッセルドルフとは遠いところかもしれない。それでも同じ国に行くというだけで嬉しいのだ。ただ、テレビはつけないと決めている。それは言葉がわからないのもあるけれど、サッカーの試合をやるかもしれないからだ。金髪碧眼のドイツ人の中に黒目黒髪のアジア人は目立つだろう。それが大輝かもしれない。そうしたら会いたくなってしまう。だから、その可能性を潰すためにテレビはつけないと決めた。  デュッセルドルフのガイドブックを読み終わってから少し目を瞑ったら寝てしまっていて、目が覚めたのは到着前の機内食のときだった。最近はまた正門さんにしごかれているので疲れてしまっているみたいだ。  機内食が終わると機体はパリ・シャルル・ド・ゴール空港に着陸した。カフェ旅行の始まりだ。

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