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23話(2) #

「…………」 「…………」  突然2人にされ、黙り込む。石段の上にある、如月の手に触れようとすると、パッと手を上げられた。  手も触らせてくれないの?  今日はシないと言ったのは俺だけど、それは如月家でのいちゃいちゃの自粛であって、デートでの手繋ぎや、ハグをしないなんて言ったつもりはない。この反応は結構つらい。 「手繋ぐのは別に良いでしょ!!!」如月を見つめる。 「睦月さんが今日シないって言い続ける限り、繋がなぁい!!」そっぽを向かれた。  なっ。そんなに今日えっちしたいの?!?! つか何?! 別にいいでしょ手ぐらい!! 俺だって怒っちゃうもんね!!  「じゃあいい!! 如月とはもう手繋がない!!!」顔を横に向け、卯月の置いていったたこ焼きを口に運んだ。 「あっ……えっと…ごめんね?」如月は慌てたように、そっぽを向いた睦月の顔を覗き込み、謝った。 「…………」もぐもぐ。 「手、繋ごう? ね?」如月の手が首の後ろに触れる。軽く押された。キス……? ごくん。たこ焼きを飲み込む。  近づく顔。切れ長で長いまつ毛。浴衣はすごく似合っている。1つに縛った髪は首周りがすっきりして見え、襟足が色っぽい。今日の如月を見ていると性的欲求に駆られる。  今日はシない。心で誓いながら、近づいた顔に唇を重ねる。薄目を開けて如月を見る。目を細め、妖しい笑みを浮かべているその表情に鼓動が速くなる。  どうしよう、キスだけでもすごくむらむらする。いちゃいちゃするのを我慢してるせい? 重なった唇を離し、顔を背けた。 「今日はシないんでしょ?」如月はクスッと笑った。 「……今日は…シない……」気持ちが矛盾して目が合わせられず、俯く。  浴衣を着てる如月に抱かれたい。  こればかりが頭の中を巡る。でも今日はシない。だから、我慢しなきゃ。自分の手をギュッと握り、体に湧く欲求を堪える。 「手、繋がないの?」如月は手を差し出した。  自分が繋ぎたいって言っといて、アレだけど、今繋いだら気持ちが揺らいでしまいそう。 「繋ぎマス……」ぎこちなく如月の手に重ねると、指が差し込まれていった。  どきどきどきどき。ぁあぁあぁあぁあ!!! 手ぐらいで今日心臓うるせぇ!!! どうなってんの!!! マジで!! 浴衣マジック?!?!  ポン  スマホが鳴った。スマホを取り出し画面を見る。卯月からだ。 【同級生に会った。友達と一緒に回ってテキトーに帰ります。デートしとけ】  2人にするなよ。帰って来いよぉ……。  如月にスマホの画面を無言で見せる。 「そうですか。2人でまわりましょ~~」如月に手を引かれ、立ち上がり、人混みの中へ足を進めた。  繋がれた手の先に居る如月の姿を上から下までもう一度みる。うっ。色気がすごい。何この人。浴衣着ちゃダメでしょ。  もう如月がえっち過ぎる!!! どうしよ!! その後ろ衿から見えた首筋にキスしたい!! 胸元をもっとはだけさせたい!! 帯を解き身体中愛撫したい!! 『…ぁっ……んっ…睦月さ…ぁあっ(妄想)』ぁああぁあぁあ!! 今すぐ木陰に連れ込んで押し倒したい!!! 「何?」眉にシワを寄せ、訝しげに見てくる。 「えっ? えっと……」えっちしたい。  はっ!! 今何を考えて!!! 今日は絶対シないんだった!! さっきからなんという思考回路!!! 意思を貫き通せ!!! 俺!!!! 「もう見るところないから帰りません?」  帰る=如月家=如月の部屋=えっちしよ?!?! 俺は今えっちに誘われている?!?! そんなのダメ!!! 絶対乗らない!!!  睦月は如月の目を見つめ、言い放った。 「……俺は…今日、如月を帰らせない」  おけ!! キメた!!! イコール方程式の崩壊!! えっち回避!! 如月も固まって黙った!! 良い感じ!! 「……それは気分を変えたい的な?」  気分を変えたい? どういう意味? よく分からない。まぁ? 気分が変われば如月も今日のえっちへのこだわりはなくなるのかも!! 気分を上げて、逸らす!! 「いつもと違う方が気分も上がるよね(?)」  合ってる?! なんか少し自分の言葉に疑問もあるけど、まぁいっか!! 「へぇ」如月が薄目でじぃっと見てくる。如月は少し考え、口を開いた。 「じゃあ、いこっか」歩く行き先が急に変わる。 「うん?」  アレ? いこっかとは? お祭り続きみよう的な? どこにいくの? え、なんかどこかで間違えた? どこ向かってるの?! 人通り少なくなって来たんだけど!!!  気分を変えたいってまさか、違う場所でシたい?!?!(今更)だとしたら、俺の返答って……ぁああぁあぁあぁあ!!!! 「き、如月……どこいくの?」明らかに妖しいホテル街へ向かっているが一応確認。 「え? ホテルだけど? あっ、ここにする?」『男性同士OK』と書かれた場所を指差す。 「うん…ってちがぁうっ!!! ホテル行きたいなんて言ってないし!!(多分)それに今日はシない!!!」如月の手を離す。 「でも帰さないって……」眉を八の字に下げ、しゅんとする如月にドキッとする。 「ぁあ~~っ! もうっ!! そういう意味じゃなかったぁ。あと、入っても、俺、シないから。休憩するだけだよ、いい?」 「いいよ」如月は目を細め、艶かしく笑った。  何か企んでる気がする。だけど、断固として意思は曲げない。今日は絶対シない。むらむらする気持ちを抑えながら、如月とホテルに入った。  ーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーー  ーーーー  *  シないと言いつつホテルに入る睦月さんって、本当にかわいい。 言ってることと体の欲求が矛盾してるんじゃないの? なんとなく手を繋いで歩いていた体感、えっちな目で見られた感じはあった。  脱衣所で浴衣を脱ぎ、浴室へ入る。汗だくになった体をシャワーで洗い流す。頭も洗ってしまおう。体も頭も綺麗に洗っていく。  すっきり。シャワーが終わり、浴室から出てバスタオルで水滴を拭く。着付けは出来るんだなぁ~~。ぽんこつナメんな。浴衣を着て、睦月の居る布団へ向かった。  ホテルのテイスト、今日は和室。浴衣にぴったり。 「睦月さんもシャワー浴びたら? 私、着付けますよ」絶対に睦月さんを落とす!! 「う、う~~ん。そうだね」睦月は警戒しながら、脱衣所へ向かった。  よしよし。あとは戻って来てからシたい気分にさせれば私の勝ち。テレビでも観て待っていよっと。ソファに座り、リモコンでテレビを付けた。  ーー如月は基本、空いた時間は本を読んでいたので、ホテルでテレビを付けたことがなかった。 『あっあ~~んっ』  なにこれ。テレビとは。まぁ、そういう場所だし? 女性とはしばらくシてないなぁ。別にシたいとは思わないけど。 『あんあんあん』  結構激しいな。でも興奮しないなぁ。あっ、視点を変えよう。男の方を見よう。ぉおぉお!!! そういうのもアリだな。ふむふむ。睦月さんも挿れる側になったらあんな表情になるのかなぁ…はぁっ……。考えるとむらむらする。もう観るのやめよ……。  リモコンに手を伸ばすと、浴衣を羽織った睦月が隣に座った。 「何観てんの?」あ。 「いや、別に……睦月さん立って」ソファから立ち上がり、睦月に着付けを始める。 「あーいうの、観るの?」嫉妬に満ちた目だ。 「いや、見ないけど……」なるべく目を合わせないように、着付けに集中する。 「頬赤くなってた」え? 「それは……ちょっとね……」攻めのプライドとして理由は言えない。 「俺以外にも欲情するの?」着付けをする手を止める。  睦月さん以外に欲情……? 風呂での千早を思い出す。アレは欲情? むらっとはした。いや、でも、しかし。う~~ん? 相手がどんなセクシュアルマイノリティ持ってるとか、性別も関係ないし、千早にむらむらしてもおかしくはないなぁ。私は千早に欲情したのか? 「…………」悩む。再び着付けを始める。 「なんで黙るの?」風呂の件は口外できない。 「……性的魅力を感じれば欲情することもあるのかも」としか言いようがない。 「睦月さんが私を満たし続ければ、他の誰かに欲情することなんてないと思いますけどねぇ。はい着付け終わり」ちゅ。頬に口付けし、布団へ向かう。 「……俺……今日は…シないから」睦月は伏し目がちに答え、如月の後ろを着いていった。 「はいはい」 (それもいつまで言ってられるかな?) 「おいで」布団に座り、睦月の手を引く。 「うん……休憩だよね? 何もナシだよ?」疑っている。 「休憩ですよ? シないシない」股の間に睦月を座らせ、後ろから抱きしめ、肩に顎を乗せた。 「休憩って何分?」腕の中で感じる。睦月が少し熱い。私のことを意識している。 「満足するまで? まぁ折角だから、少し遊びません? シないんで」睦月の帯を解く。 「何してるの? やめて? 遊ぶって何?」解いた帯を睦月に見せる。 「こうやるの」帯で睦月の視界を遮り、頭の後ろで縛る。 「え? ちょっと!! 何してるの? 見えないんだけど!! 俺シないよ?!」睦月が目隠しされた帯を外そうとするので、手で払う。 「うん、シないよ? いちゃいちゃはオーケーなんでしょ? 違うの? ちょっと私と遊ぼ」そっと睦月を抱き抱え、布団へ仰向けに寝かせた。 「ぇえっ!! 待って!! 何するの!! 怖いんだけど!! 外していい?! これ!!」不安になっている。これは良くない。 「変なことしないからだいじょーぶ。よしよし」覆い被さり、安心させるように、頭を撫で、口付けする。 「ん……またそれ! もぉ!」背中に腕が回り、抱き締められる。はぁ、好き。 「睦月さんの嫌がることはしないよ。どうする? やめる?」手の甲で、頬を撫でる。 「す……少しだけなら……」ふふ。流石。 「あ、私、睦月さんがドロドロに乱れ『…弥生…シたいにゃぁっ……』涙を流して懇願するまで絶対にシませんから」 「あなたは何を言ってるの?」触れていた手の甲で顔を横に向け、首筋を指でなぞる。  首筋を指先でなぞられ、睦月は体をピクッと反応させた。感度が良い。 「別に? 睦月さんがシたくないって言うから誓っただけです」浴衣を広げ、へそ周りに口付けする。 「んっ…誓いなの? それ…っん…ぁっ」視界が塞がれているせいか、キスだけでも敏感に反応する。可愛いなぁ。これは全身愛撫コースに決まり。 「お願いされるまでシないから安心して?」普段愛撫しないところもしてみたい。脇腹に顔を近づけ、キスを繰り返す。 「ぁっ…ちょっ…安心って? んっ…これが遊び……? ぁっ…」会話をしながらの愛撫もいい。今どんな瞳をしてるのか想像すると口元に笑みが溢れる。 「信頼した恋人同士しか出来ない遊びです」脚を持ち広げ、腿の付け根に顔を寄せ、舌で軽く舐める。 「あぁっ……あんまり下は…んっ…その…だめ……」頬が少し染まっている。 「なんでダメ?」お腹周りを指先で軽く触る。 「…んっ……それはその…アレですよ…うん…」答えになっていない。何言いたいかは分かるけど。 「よくわかんなぁい」もう一度、腿の付け根に顔を寄せ、舌を這わせる。睦月は浴衣の(たもと)をぎゅっと掴み、言った。 「っん……反応しちゃうからっ!!!」  ふぅん? まぁ元々、反応させて、我慢出来なくさせるのが目的だし? だめって言われたら、もっとしたくなる。  さぁ、いつまでシないなんて言い張れるかな? 睦月さん。帯を外した時、大きな瞳がどんな風になってるか、想像すると楽しみだよ。  如月は目隠しされた睦月を見つめ、身震いし、むさぼるように唇を重ねた。

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