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23話(5) #

「お兄ちゃんは?」1人でリビングへ戻ってきた千早に訊く。 「激しくお取り込み中」すごくつまらなさそうな顔をしている。 「お兄ちゃんの喘ぎ声聞きに行こうかな」ソファから立ち上がり、部屋に向かおうとすると千早に手を掴まれ引き止められた。 「多分、喘いでるのはそっちじゃないと思う」 「え?」  如月が? そんなことある? そんなシチュ見たことあったっけ?(※卯月が知らないだけ)気になるなぁ。 「君のお兄ちゃんって、独占欲強いし、嫉妬深いよね」千早はソファに腰掛けた。 「え? どうだろ……今まで彼女とかもあんまり居なかったから……尽くすタイプだとは思うけど……」千早の隣に座る。  お兄ちゃんが如月のことめっちゃ好きなのは知ってる。私にヤキモチ妬くくらいだから、嫉妬深いのかな? よくわからんけど! 「あんなに愛をぶつけられたら、如月くんは睦月くんからもう離れられないだろうなぁ……」  千早は寂しそうに微笑んだ。  こちらの話など、まるで訊く耳を持たない。何を言っても伝わっている感はない。ただ、怒りに身を任せ、情事が進んでいるとしか思えない。絶対に良くない。  良くはないのに、いつも優しくて、求めてばかりいる普段の睦月さんとは違い、私への独占欲と嫉妬にまみれながら情熱的な顔を見せる姿に性欲が湧く。  受けは好みではないが、気遣いのない荒々しい攻めように少しだけ、感情が昂る。 「睦月さ……はぁ…あっ…もうやめて…ん…んっ……」脚は開かれ、指が中で激しく動く。声はあまり出したくなくて、口元を手で押さえる。指の動きに合わせ、肩がビクビクする。 「だって、分かってなさそうだし。俺の気持ちを考えるところから始めてよ。今からさぁっ!!」指がより奥へ入り、突かれる。う~~ん。やっぱりそろそろ勘弁してほしい。 「っんぁっ…睦月さん…ぁっ…はぁ…んっ…もうやめましょ…はぁ…っん」快感で目が開かなくなってくる。半開きの状態で睦月を見つめる。楽しんでいる、というよりは怒っている。怒りに満ちた瞳。  今から気持ちを考えるって? この状態で? 気持ち良さで頭はぼうっとし、何も浮かばない。あと少しでイキそうなんだけど。  睦月さんだって、色々よそ見してこなかったっけ。旭さんと千早の何が違うの? ポイントはそこじゃないってこと? 私だけダメみたいな? その価値観、イライラするなぁ。あぁ、全然分からない。  深く考えてもよくないことしか思い浮かばない。もうやめよう。深く考えるな、単純に、分かりやすいことに違いない。  如月は閉じそうになる瞼をしっかり開け、息切れしながら、答えた。 「…はぁ…好き過ぎて、他の人を見てるのかと考えるだけでおかしくなりそう…っはぁ…俺以外絶対見るな、関わるなでオーケー?」  如月は続ける。 「…っん…もちろん、睦月さんもだよ? 私だって、睦月さんには私以外見て欲しくないし、関わって欲しくないから…はぁ…大好きですから。本当に…ぁっ……」動いていた指が抜かれ、少しホッとする。 「うん……」私を見る目が穏やかになった。良かった。顔が近づき、自然に唇が重なり合う。 「はぁ…はぁ……落ち着いた? お互い約束ってことで…私……少し休みたいのですが……」 「うん。俺は……もう少しシたいんだけど、いいかな? 弥生さん?」  大きな目が細まる。妖しい笑みを浮かべ誘ってくる。ずるいよ、そんな顔して。しかもこんな時だけ名前で呼ぶなんて。呼ばれ慣れない名前に恥ずかしくて頬が赤く染まる。  もう少しだけなら……。  聞こえるか、聞こえないかの声で「うん」とだけ、発した。  *  自分だけじゃなくて、如月も自分以外見て欲しくないと思ってたなんて。先ほどまで感じていた怒りは嬉しさと愛しさに塗り替えられていた。  如月は聞こえないと思ったかもしれないけど、俺には聞こえた。俺の誘いに同意した。これって、俺が挿れてもいいってこと? 胸が高鳴る。  そ、そうだ。なんか怒りで荒々しくやり過ぎた。痛くなかったかな?! まずはゆっくり、丁寧に(?)慣らさなきゃ!!! 「あれ? もしかして正気に戻った感じ? いつもの睦月さんだね?」如月の手が頬に触れる。 「正気とは……?」 「さっきみたいにさ、私のことなんて考えず、荒々しく情熱的にやってよ……ん」頬を引き寄せられ、軽く口付けされる。 「なに……Mなの……?」軽く引く。 「はぁ? 違いますけど。積極的に来てくれるなら、たまには受けもいいかなぁって。まぁ? 冷めてるみたいだし? もう終わりでいいですかね」は? 「同意したくせに勝手に終わらせるな!!」  俺は如月の手のひらで踊らされているだけかもしれない。それでも気持ちのまま、行動に移す。両手を重ね、指を絡める。 「っん……はぁ……ん」口唇を触れ合わせると、唇から如月の熱と吐息を感じた。舌は入れず、息継ぎしながら、何度も触れ合わせ、押し付ける。 「ちょっ……」さっきのトロンとした如月の表情を思い出し、もう一度見たくなり、ハーフパンツと下着を脱がせる。 「気持ちよくなってほしいし」指先にゴムを被せ、ローションをかける。 「たまには俺の気持ち、味わってよ弥生さん」名前を呼ぶたび顔が赤くなって可愛い。 「っん!! はぁっ…あ……っ…ん……うぅん……ぁっ……」声を押さえている。もっと出してほしい。指先を挿れながらほぐすように少しずつ奥へ進める。 「声出してよ」くちゅぐちゅ。音を立ててみる。如月はサッと耳を塞いだ。意味なし。 「っ……やだっ……ん……」強情!! 覆い被さっている体を離し、如月の下半身まで下がる。  本当は挿れたいけど、今日はいいや。まずは如月がちゃんと声出して、喘ぐところまで、レベル(?)を引き上げる!!! 「出させてあげる、全て」 「は? ちょっ…まっ……~~っ!」手でそっと持ち、舌を根本からゆっくり這わせる。挿れている指先は止めない。 「っはぁ……あっ…ぁ…っん~~っぁあっ…睦月さん…っ……はぁ…私ちょっと…あっ…」さっきの目だ。トロンとしている。快楽だけをもっと与えよう。口の中へ含み、舌を動かす。 「睦月さんっ……もうっ…だめ…んっ…あぁっ…んっ~~」もっと感じてほしい。口内で舌を動かすと、体を震わせ素直に反応してくれて、嬉しい。声も少しずつ出てきた。指で中を突く。 「ぁあっ…あっ…はぁっ…んっ…あぁっ…はぁ…」体はビクビク小さく震え、目が潤んでいる。こんな如月見たことない。艶かしい。見てるだけで欲情し、体に熱が宿る。 「はぁ…んっ…ぁあっあっ…はぁっ…あっ」口の中に少しだけ愛液が広がった。後少し。口元も指先も自分から与えられる全ての快楽を如月へ捧げる。 「ぁあっ…睦月さんっ…あっ…あっ…私もうっ…んっっはぁっ…」如月が身震いをすると、口内に温かいものが広がった。吐いても飲み込んでも正直、どちらでもいい。それよりも下半身が疼く。  這うように如月の隣へ行く。俺はこのままでいいから、せめてキスしたい。如月を見つめた。下からではここまで見えなかった。隣に来てはっきり見える、如月の顔。  どくん。心臓が鳴る。切れ長の目は目尻が下がり、とろんとして、そこに涙が伝う。少し開いた口から涎が垂れ、甘い吐息を小刻みに漏らしている。頬は紅潮し、色っぽい。  もしもこの状態で挿れたら……。脳内に目の前の如月が喘ぐ姿が浮かぶ。『あっあっ睦月さぁんっぁあっ』はっと我に帰った瞬間、開放的な気持ち良さを感じた。そっと下着の中に手を入れ、確認する。ねちゃ。やっば。マジかぁ。恥ずかしくて顔が熱くなる。 「睦月さん?」不思議そうに見てくる。 「あ、いや……ちょっと…うん……」恥ずかしくて言えない。 「ねぇ…気持ち良かった……?」人差し指で如月の瞳に添うように涙を拭う。 「えっ……は…はい……気持ち良かったです……」如月は枕で顔を隠した。 「恥ずかしいの? 照れてるの? 顔、見せて」枕に手を伸ばし、少し持ち上げ、隙間から顔を見る。耳まで真っ赤。可愛いんだけど。 「やだぁ……」枕の浮いた隙間から如月と目が合う。 「弥生さん、キスしよ」頭の後ろに手を伸ばし、押して近づける。あつ。 「っ……名前呼ばないで……っん」優しく唇を重ねる。唇からも熱が伝わる。普段強気のくせに。唇を離し、軽く抱き寄せた。 「今日えっちしてばかり……」如月が呟く。 「シないって言ったはずなのにね。なんか我慢出来なくなっちゃった~~」 「シないって言った本人が1番我慢出来ないってどうなんですか」 「我慢してたけど、如月が毎回煽ったよね?」むにむに。如月の頬を親指と人差し指でつまむ。 「それを耐えてこその真の王者じゃないですかぁ。ほっぺやめて」 「王者目指してないし」ちゅ。頬にキスする。 「っ……」如月はまた枕に顔を埋め、寝返りを打ち、睦月に背を向けた。 「どんだけ照れるの」可愛くて笑みが溢れる。 「……べつに」いじわるしようかな。 「っんっ…あっ…ちょっと…んっ」後ろ髪の間から見えた首筋にキスを繰り返す。腕の中で反応する如月。可愛い。今日はずっと受けをしてくれるつもりなら、もっと愛でたい。 「逃しませ~~ん」ごろごろとどこかへ行こうとする如月を片脚で押さえどこにも行かないようにする。 「今日はもうシたくないぃ~~!!」 「今日はもっとシます!!」 「朝と言ってること違う!!」片脚で自分の元へ如月を手繰り寄せ、身体を密着させた。 「あぁーまたむらむらしてきゃったぁ~~そういえばまだ胸は攻めてなかった」抱きしめている手を這わせ、突起を探す。  あった。弾いて、軽くつまみ、立たせる。 「はぁ?! ちょっ…ねぇ…もう勘弁してください……ぁあっ…やめっ…んっ」  可愛いよ。如月。もっと感じる姿を俺にみせて。 「もう二度と受けはやらないっ!!」 「またまた~~気持ちいいくせに」 「っん…ぁっ……んっ…やめっ…ああっ」  今は如月のことしか考えられない。  如月も俺のことしか考えられないように、  無我夢中で如月の全てを愛した。  ーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーー  ーーーー

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