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24話(2)

 寺院で手を清め、本堂に向かい、手を合わせ、一礼する。よし。墓地へ入り、自分の家の墓を探す。あった。手入れはあまりされていない。雑草や砂埃が被っている。親不孝な息子でごめんなさい。  佐野家の墓の前に並び、3人で一礼をした。 「さて、掃除するかぁ!!」墓のそばに座り、雑草をむしっていく。 「あっつ~~なんかお墓参りイメージと違ったぁ」如月がぶつぶつ言いながら雑草を抜いている。 「お兄ちゃん!! 水汲んできたよ!!」水をたっぷり入れた手桶を持った卯月が来た。 「ありがとう~~」  ブラシで砂埃を払い、汚れている場所は水を使いながら柔らかい布で拭き取っていく。あ、文字掘られてるところどうやって掃除しよう!! 「この佐野家のところの文字どうやって掃除しよう?」如月に訊く。 「え? 私に訊きます? 布の先で拭くとか?」テキトーに言ってんな。 「あー、うん、そうだね、ありがとう」 (柔らかいブラシとか欲しい)  致し方ないので、布の先で文字のところでなぞる。あんまり綺麗にならない。水鉢や花立の古い水や線香皿の燃えかすを捨て、汚れを綺麗に拭いていく。 「草全部抜けましたぁ~~」如月が汗だくになりながら、報告してくるのをみて微笑ましく思う。 「ありがとう、お疲れ様」墓石についた水滴をタオルで拭きあげた。 「お供えしよ」 「お花飾るね」卯月は左右の花立に菊の花を供えた。少しだけ、墓石が華やかになってきた。 「あとはお参りですかね?」草むしりをしたせいで汗が止まらないのか、如月が腕で汗を拭っている。申し訳ない。 「うん、ろうそく持ってきた」  ろうそくに火を灯し、線香を焚く。如月は後ろへ下がり、卯月の背中を押し、墓石の前へ行かせた。 「しんみりするのは苦手なんだけど……」数珠を親指と人差し指の間にかけながら、如月と卯月に言う。 「ここで騒げって言うのは無理じゃね?」 「今は大人しくしてます」  墓石の前にしゃがみ込み、線香を供え、合掌する。  お母さん、お父さん。久しぶり。随分放置してごめんなさい。睦月は元気で過ごしてるよ。卯月も元気だよ。あのね、俺、恋人が出来たよ。相手は男性なんだ。如月弥生さんっていいます。  今日は一緒に来たよ。こんなに誰かを好きになったのは初めてで。もう本当に如月が大好きです。お母さんとお父さんは分かってくれるかな? 遠くからでも見守っていてね。また来ます。 「お兄ちゃん長い」 「はい! どうぞ」立ち上がり、卯月と場所を交代する。 「線香供えればいいんだよね?」 「見てなかったの? その後合掌ね」  卯月は墓石の前にしゃがみ込み、線香を供え、合掌した。  お母さん、お父さん、お久しぶりです。卯月は元気です。まぁ、アレですよ。今までお兄ちゃんと2人で住んでたけど、今如月が来て、毎日めっちゃ楽しいです。  お兄ちゃんの喘ぎ声を訊くのが日課です。勉強も頑張ってるよ。またきまぁす!! 「終わったよ、如月どーぞ」 「ど、どうも」如月は卯月と場所を交代し、墓石の前でしゃがみ込み、線香を供えた。数珠を付けた手を合わせ、目を瞑った。  お父様、お母様、初めまして。睦月さんとお付き合いさせて頂いてる如月弥生です。えっと……何話すのこれ? もうこれでオッケー? 睦月さんとは仲良くさせて頂いてます。  睦月さんとえっちなことしても祟らないでください。(?)どんなプレイも全て愛です。睦月さんのことも卯月さんのことも大切にしてます。今後もよろしくお願いします。 「終わりました」 「よし、帰ろっか」雑草の入ったビニール袋を持ち、歩き始める。 「これでお互い両親へのご挨拶は終わりましたね」如月は横目で睦月を見て、微笑んだ。 「え? そ、そうだね~~」さりげなく、如月の手を握る。 「お義父さんとお義母さんみてますって」 「いいの。なんならキスする?」如月を見つめる。 「それはちょっと……一応慎ましくしておきます」如月は恥ずかしそうに目線を逸らした。 「なぁに~~2人して!! もうらぶらぶモードですかぁ!! 挨拶終わったら次どうするの?!」 「顔合わせですかね?」如月が首を傾げ答える。 「か、顔合わせぇえぇえ?!」  そういえば、うちに如月の両親が来る的な流れだった気がする!! これはまさか!! 顔合わせ?!?! うちに招き入れた後、料亭とか行った方がいいのでは?! よ、予約しなきゃ!!! 「おけ、顔合わせな、任せろ」ふっ。完璧にセッティングしてみせる!! 「なんか1人で驚いて1人で自己完結してません?」卯月と如月は顔見合わせ、呆れた。 「……私も手繋ぎたいんだけど」卯月が小さく呟く。 「ふふ、3人で繋ぎましょ」  如月の手を離し、卯月を真ん中に挟み、手を繋ぐ。普段は手なんか繋いだら『きも』なんて言う卯月も今日は手を繋いでも何も言わない。  両親を目の前にして、少しだけ寂しくなったのかな。そう思い、力強く手を握る。俺が居るよ。なるべく寂しい思いはさせないように頑張るよ。  3人横並びで手を繋ぎ、帰路に着いた。  ーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーー  ーーーー  墓参りを終え、如月家へ戻ると、広い庭が人の声で騒がしい。何かやっているようだ。なんだろう。 「なんかお庭騒がしいね?」如月に訊く。 「BBQやるって言ってました」 「BBQ!!」 「BBQ!!」兄妹で同じ反応は恥ずかしい。 「ぷ。2人ともすごく目が輝いてました。ほら、行きましょう」如月に案内され、庭へ向かう。  じゅうう~~  お肉焼いてる!!! 野菜も!!! 美味しそう!! 今日ぐらいは俺、食べる側に回ってもいいのかな?!  焼かれているお肉を眺めていると、小春が近づいてきて、トングを押し付けられた。このトングを受け取ったら終わり。ここは如月の実家なので仕方なくトングを受け取る。 「待ってたよ、睦月ちゃん」 「なんで俺が……」ふるふる。トングを握る手が震える。 「くっ、くそがぁぁあぁあぁあぁああぁあ!!!!!」  睦月は焼き専になった。 「睦月ちゃん、こっちの鉄板で焼きそば作って」俺も肉食べたい!! 「今作りまぁす!!」笑顔で答えて、焼きそばを作り始める。  うぇえぇえん。じゅう~~。鉄板の上で肉と野菜を炒めながら、周りを見る。みんな美味しそうに肉食べてるし。羨ま……。 「なんか大変そうですね」隣に如月が来た。 「みんなが喜んでくれるならいいもん」炒めた野菜と肉を一旦、取り除き、ほぐした麺を入れて、炒める。 「拗ねてるし。はい、あ~~ん」箸で掴まれた肉が口元に運ばれ、ぱくっと食べる。美味しい。幸せ。 「………………」先ほど取り除いた野菜と肉を入れながら、如月を見つめる。 「な、なんですか。もっと?」もう一枚、肉が口元に運ばれてくる。ぱくっ。もぐもぐ。 「………………」ソースを入れ炒めながら如月を見つめる。じぃ。 「え? な、なに? もうお肉ないよ?」焼きそば完成。手を止める。 「お肉違う……」如月の頬に触れる。 「あ……えっと……」如月の視線が周りをきょろきょろ見ている。流石に家族の前では気になるかな。 「…………まだ?」じぃぃい。煽るように見つめる。 「えっと……その……ん」頬を赤らめた如月の顔が近づき、唇が触れ合った。頬に触れていた手を頭の後ろへ回し、唇へもっと押し付ける。 「……っん…はぁ」如月の吐息がかかる。吐息も全部食べてしまいたい。 「何やっとん!!!」ばしっ。頭に痛みが走る。 「いったぁあぁあぁあ!! 小春さぁん!! やめてくださいよ!! ちゃんと焼きそば作りましたって!!」頭を押さえる。 「隙あらばどこでもいちゃいちゃしよって」小春は紙皿に焼きそばを取り、睦月へ渡した。 「あ、ありがとうございます。他にも食べたいです(肉とか)」焼きそばを割り箸で食べる。うん、美味しい。俺が作ったからね。美味しいのは当たり前。 「今持ってきてあげるよ」小春はニヤァと笑って、コンロへ向かった。 「ど、どうも?」  はぁ。もっとキスしたい。なんていうか、如月が感じている姿を見るのも良いけど、やっぱり気持ち良くなりたいっ。はぁ。むらむらしてきた。はぁ。 「睦月さん、あっち、行きますか?」如月はお肉が乗った紙皿を持ち、縁側を指差した。 「イキます……」如月のTシャツの裾を握る。 「え? ちょっ……え? は? 今なんて……座って食べますよね?」縁側へ向かい一緒に歩く。 「貴方に食べられたい」 「何を言ってるんですか。お肉でも食べてください」縁側に腰掛け、割り箸で肉を食べた。 「睦月ちゃあん!! 持ってきたよ!!」  小春に紙皿を渡され、見る。椎茸、ピーマン、キャベツ、にんじん。要らね。肉一枚もないし!!! 「肉!!! 肉をくれ!!! 野菜は要らない!!!」 「浴衣を汚したやつに与える肉などない」 「ひどーー!!」致し方なく、椎茸を食べる。 「私の肉あげますって」如月は箸で肉をつまみ、睦月の皿の上へ乗せた。 「貴方の肉体が欲しい」如月を見つめる。 「さっきから何言ってるんですか」如月の目が濁っている。  辺りを見る。庭では如月家の家族や卯月、千早たちが楽しそうに食べたり焼いたりしている。俺は俺の仕事をしたし、ちょっと居なくなってもバレないのでは?   如月の部屋に行って、ちょっといちゃいちゃしたって……。  まずは如月の気分を上げて、乗せないと!! どうやって気分を上げればいいんだ? やっぱりキス?! 「キスしよ?」如月を見つめる。 「間に合ってます」塩!! 「う~~ん……ハグして?」両手を広げる。 「今食べてるんで」冷たっ!!  あ、そうだ!! 服を脱いでみよう。性的にちょっと煽る的な!! 俺の綺麗に割れ始めた腹筋(※筋トレ中)で如月をきゅんに!! 「暑いなぁ~~汗かいたぁ」Tシャツを脱いでみる。こっちみた!! 反応あり!! 「何故脱ぐ……」見てる見てる!! おけ!! 「ベタベタするし? 着替えようかなって」肌着を脱ぐ。腹筋公開!! 「こ、ここで脱ぐ必要はないのでは?!」頬赤くなってる! 良い感じ! 「脱いだ方が涼しいし?」  縁側に置いてあった、うちわを手に取り、扇いでみる。暑いのは本当。炎天下の中、鉄板の前で料理もしてたし、汗もいっぱいかいた。暑さで火照った顔を扇ぐ。涼しい。 「……えっちな顔。しかも脱いだりして…誘ってるの?」如月に見つめられる。 「さっきからずっと誘ってるけど?」じっと見つめ合う。 「ちょっとだけいちゃいちゃしよ?」 「それは気持ち良くさせてってこと?」如月の手が手首に触れる。 「そうとも言うかな」  両手首が掴まれ、押し倒され、縁側を上がり、隅へ引きずられる。え? 2階へ行くんじゃないの?! なんかイメージと違っ!! 確かにここなら庭からは障子で見えにくいけど!! そういう問題?! バレるよ!! 絶対!! 「バレるかな? ドキドキするね」  如月が妖しく笑った。  

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