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第10話 満開の赤い花

 謝罪の言葉を述べるより速く、ぐいっと担ぎ上げられる。 「うわぁ!」  頭が下を向き思わず暴れるも降ろしてもらえず。半分片付いた部屋に放り込まれた。見えた床はべたつくフローリングだった。 「あ、あ……。ご、ごめんって」  後退るも大きな身体は遠慮なくのしかかってくる。 「ごめんってば!」 「うるせえよ」  真っ青になって叫ぶが、簡単に床に押さえつけられた。  痛みほどの力で顎を掴まれ口内をしゃぶり尽くされる。 「んぐ……。んっ……!」  さわさわと脇腹をくすぐられ、疲労した身体は容易くぴくんと捩れた。 「あっ、やだ、そこ」 「やってくれたな。藤行。甘やかしてたら調子に乗ったか?」  白い歯が耳を甘噛みしてくる。 「ひっ……」  ぴりっとした痛みが走り、反射的に目を閉ざす。 「はっ。なんか言えよ」 「……う、お、俺が殴ったくらい、そこまで痛くないだろ。お、おお、怒るなよ……」  自分の声かと疑問に思うくらい、弱々しい口調だった。 「いやー? けっこう効いたぜ?」  音を立てて首筋を吸い上げられ、また花を咲かされる。 「見えるところはやめろ」 「そうか。見えるところにされたいのか」 「違っ」  襟を引っ張られ、首筋、肩、鎖骨と印をつけられていく。 「うあ、もう」 「満開だな」  赤くなった箇所がじんと痺れる。あとで鏡を見るのが恐ろしい。  瞼を舐められ、同時にもう一方の手で足の間を探られ、かっと顔が熱くなった。夏のせいではない。自分のものがわずかに立ち上がりかけていたことに、気がついたせいだ。 「なんだ? 怖がってるふりして期待してたのか」 「ちがう、違う!」 「そう言えば胸で感じないんだったよな。開発してやるよ」 「ひっ……」  きゅっと胸を摘まれて、執拗にいじられる。すると、痛みの中に少しずつ不快以外のものが混ざり始める。 「ふ、う……あ、あ。や、そこやめ」 「やめねーよ。俺は胸で感じる奴をいじめるのが好きなんだよ」  尖り始めた乳首を押し潰されて、高い声がこぼれた。  すぐに手の甲で口を塞いだけれど、伸一郎には聞かれてしまっただろう。 「なんだ。思ったより早かったな。淫乱なんじゃねえの?」 「そんなわけ……」  怒鳴り返そうとしたが、がばっと服とエプロンを頭から抜かれる。藤行はぎょっとし、伸一郎は眉根を寄せた。 「エプロンは普通なのになんで毎回服がクソダサいんだよ、お前。萎える服を着てくんな」 「うるさい! 返せ。エプロンは弟が選んでくれたんだ」 「悪いこと言わねえから、服も弟に選んでもらえ」  ぽいっと衣類をその辺に捨てられる。  エプロンに手を伸ばすが両手首を掴まれ、床に押さえつけられた。  伸一郎の舌が尖りに触れて、唇を噛む。  濡れた舌でこねられ、指とは違った感触にまた感じてしまう。 「ふ、ぅ、あぁ……」  舌先で突かれ、きつく吸われる。 「ああ……そこ、う、やめ、んんっ」 「よしよし。胸でも甘い声が出せるようになってきたな」  髪をかき混ぜるように撫でられる。身構えていたのに。思ったより怒っていないのだろうか。 「怒って、ないの?」 「いや。怒ったふりして犯そうと思ったけど、ンブッ、予想外の、フフ、へなちょこパンチに。……笑いが」  顔を背けた伸一郎の肩が小刻みに揺れる。くっくっと聞こえる笑い声に、半眼になりむくっと上体を起こした。 「びびって損した」 「おっと? 怒ってはいないけど許したわけじゃないぜ?」 「え? ――何すんだバカッ」  ズボンを剥ぎ取られる。ソレが下着を内側から押し上げていた。  伸一郎の手が下着に入り込む。 「中途半端に高まってるだろ? 一回抜いてやるよ」 「結構だ! やめろ」  大きな手が固くなり始めていたソレを扱きだす。 「前回はすぐに舐めちまったからな。今回は手でイかせてやるよ」 「っ……やだ、あ」  ぎゅっと伸一郎の肩に掴まる。  まただ。また男に触られている。  不快感ではなく甘い刺激が広がる自分にも、怒りが湧く。 「気持ちいいか?」  気持ちいい。甘い痺れが脳をどんどんとろけさせていく。だがそれを言うのはムカつくので、ふるふると頭を振る。 「嘘つくなって。それかあれか? 恥ずかしいか?」 「う……は、ずか……あ、んっああ」 「言葉にならねぇか」  くっと喉奥で笑われる。言い返したいのに声を押さえなくてはならない。もどかしくて、意味がないと分かっているのに爪を立てる。 「猫かよ。お前」  激しく上下に扱かれ、がくがくと身体を震わせる。 「ああ! あ、ああ、もうっ、あ、あ――だめ、い、イきそ……」  先端から溢れる蜜が滑りを良くしてしまう。  ぬちゅぬちゅと耳を塞ぎたくなる音がするようになってくる。 「やめてっ。イ、ちゃ……イキそう……だからぁ」 「お。イきそうか? いいぞ」 「やだ……な、のに。あ、ああ、っ、ああ――」  認めたくはないが伸一郎の指摘通り高まっていたこともあり、藤行はあっさり手の中に放ってしまった。  完全に力が抜けた藤行を、伸一郎が抱きしめる。 「はい。お疲れ。やっぱ美人がイクの堪えている顔は良いな。俺の好みの顔だ。大事にしろよ」  藤行を床にうつぶせに寝かせると、お尻を両手で掴んだ。 「……? な、にを……。休ませ」 「せっかくだから尻穴も拡張しておこうかと」  火照った身体が一気に冷えた。

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