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第4話 Sweet play

『こんばんは。エースです』  ししゃもくんと似たような低音ボイスと、気怠けな声。最近の若者はなぜこうも疲れた声をしているのか。みんな大変なんだろうな……。 『今日はくだらないこと考えたんで、やってみたいと思います』  ……今日はどんなCommandだろう。  由羽の身体は、うず、と熱を帯びてくる。 『まずは今日頑張ったことを思い浮かべましょう。なんでもいいです。外に出たとかご飯食べたとか、ちいさなことでもなんでも』  ……うん、俺は今日も仕事頑張ったな。ご飯もカツオを選んだし。ストレッチもしたし。 『head(頭突き出して)』 「っ」  びく、と身体が硬直する。自分の頭が勝手に画面に近づいていた。エースくんが、『ふふ』と笑いながら画面越しに頭をヨシヨシしてくれる。 「……かっこよすぎ……エースくん、不意打ち駄目だよ」  スマホの画面には少し微笑んでいるエースくんの表情が見えた。  エースくんのこういうところ、ほんっっっとにすき。  ぽわぽわと満たされた気持ちで恍惚としていると、次いで甘い Reward(ご褒美)がもらえた。 『ちゅ』 「ひいっ」  由羽は変な声が出た。  だって、エースくんが自身の腕にキスをしたから。 『これ、僕からのご褒美。いっぱいキスしてあげるね』 「@¥&?!☆」  由羽は声にならないほど悶える。リップ音が止まない動画を一旦静止してスマホを胸に抱える。ドッドッドッと心臓が早鐘を打つ。  ……めちゃくちゃ満たされた……! エースくんのplayさいこう! 神様、ありがとう! エースくんをSweet playの配信者にしてくれて! 大感謝御礼祭り。  結果、そのまま寝落ち。エースくんのリップ音聴きながら寝落ち。幸せ……。

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