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第5話 Subのためのサブスク

 それは由羽がエースくんと出会う半年前だった。 「Subのためのサブスク? 何それ」  昼下がりのカフェで、美容専門学校時代の後輩の「じゃけ」くんと一緒にハーブティーを慎ましく飲んでいた時だった。「じゃけ」くんというのは、岡山出身で方言が「桃は美味いじゃけ、食ってください」と、言葉の端々に「じゃけ」という方言がくっつく子なのだ。そのため、由羽は彼をじゃけくんと呼んでいた。 「言葉通り、Subのためのサブスクです。『Sweet play』知らんのですか?」 「すうぃーとぷれい? なにそれおいしい?」  由羽がすっとぼけていると、じゃけくんが目を丸くさせてスマホのアプリを見せてくる。そこには、『Sweet play』というモノクロの文字が浮かび上がっていた。 「俺も由羽先輩もSubやし、mate作らんば日々溜まるとたい」 「うぃー」  と、由羽が悪戯な顔でじゃけくんを見る。 「溜まるって何が?」 「セ! ン! パーイ! おとぼけしても駄目ですよ。俺らSubはmateいないと性欲が満たされないでしょうよっ」 「まあねー。俺は先月彼女と別れて以来playしてないわそういえば」 「ええーっ!」 「しっ! 声でかい! TPO弁えろ!」  じゃけくんのすっとんきょうな声が一瞬だけ和やかなカフェの空気を断ち切ったが、それも数秒のことで、フロアにはお洒落なピアノのBGMが流れている。  こしょこしょとじゃけくんが由羽に声をかけてくる。 「それは、さぞかしお辛いですね。そんなセンパイにはぴったりのサブスクなんですよ。Sweet play。俺ももうハマっちゃって、しばらく彼女いらないくらいです」 「……へえ。面白れえサブスク」  じゃけくんがニンマリと頬を緩める。 「このアプリ有料サブスクなんで、お金はかかるんですけどコンテンツ充実しててっ。今なら俺の招待コード渡せるんで、10日間無料で利用できます」 「オイオイ。なんだよ急に。マルチかと思ったぜ」 「ち、違いますっ! 由羽センパイのこと貶めるなんてこと、俺はしませんよっ」 「んで。どんなアプリなのか詳しく教えろ」 「では、説明を。これは、Subのための癒しの動画配信サービスです。あ、ちなみに18歳以上じゃないと利用できません」  18歳以上のくだりのところで、じゃけくんが真顔になる。あーはいはい、そゆことね。大人のためのサブスクなのね。

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