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第7話 第2の性 Dom/Sub

『こんばんは。第2の性について研究・診療しています。佐藤です。今日はご紹介に預かったように、DomとSubのメンタルケアについて説明致します。まずはこちらのパネルをご覧ください』  テレビの中で佐藤医師がゆったりとした口調で説明を始める。御歳60歳になる佐藤医師は、外見からはほのぼのとしたおじいちゃんに見えるが、Dom/Sub専門医として海外でも高名な医師である。由羽は佐藤医師が示すパネルをまじまじと見つめた。 『我々の世界には、男女という第1の性とは別に、DomとSubという第2の性が存在します。これらは生まれつきの性です。基本的には、中学生の頃に健康診断で判別されます。その際、血液検査を行い第2の性について診断をします』  うんうん確かに、と由羽は頷く。  確かあれは、中学一年生の夏頃だったか。由羽に第2の性の診断がおりたのは。  医師から「あなたはSubです」と聞いたときの安堵。  ーー……ああ、よかった。俺はとは違う。俺は母の血を引くSubなんだって。  由羽がSubと診断されて、それを母に伝えるとぽろぽろと涙を零していた。ひし、と由羽の背中に手をまわして抱き寄せる。母のなで肩が微かに震えていた。「ああ。よかった。由羽はママと同じね」と、母が零した。由羽はそれを、「うん」と頷いて母の背中を撫でた。  自分がSubであるということは、由羽にとって良い報せだった。そんな診断当初のことを思い出していると、テレビの中で佐藤医師がパネルに指し棒を添えた。 『DomとSubにおける関係性は、一言で表すならば信頼と庇護の関係です。Dom(支配するもの)Sub(支配されるもの)とも言えます。両者の性は本能的に互いを支配し、支配されたいと欲します。DomはSubのことを支配し、護り、愛でる。SubはDomのことを尊い、貴い、信頼します。両者は補完関係にあり、互いを助け合える関係性のmateという恋人関係になれば、より本能的な欲求を満たすことができるのです』

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