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第12話

 じゃけくんからSweet playを紹介されて以来、ほぼ毎日アプリにログインしていた。目当てはもちろん、エースくんの動画を見るためだ。推しと言う言葉がまさしくで、心の中にはいつもエースくんがいた。仕事が多忙なときもエースくんとの画面越しのplayで満足できたし、エースくんが褒めてくれるたび、Reward(ご褒美)をくれるたびに、心がきゅんと高鳴ったものだ。何度徹夜の仕事を乗り越えられたことか……本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。そして、いよいよ今日はSweet playに課金をする日だ。己との約束で、サブスクへの課金は自分のSNSのフォロワーが10万人を突破したご褒美にしようと考えていた。 「えへへ……っ」  本日のおやつの時間に、SNSのフォロワーが10万人を突破いたしました! 俺すごい! よく頑張った! 俺は美容師兼インフルエンサーなのでね。  由羽は動画投稿サイトで、美容系の動画を中心に投稿している。おすすめの化粧水や美容液、コスメを紹介するモーニングルーティン動画やメイク動画を投稿したり、オシャレなカフェ巡りのVlogなどを投稿している。2年前から投稿を始めて、コツコツと自ら編集もしていた。編集は地味な作業だけどサムネやテロップのデザインに凝ったりするのは楽しい。そして、今日ついにSNSのフォロワーが10万人を突破した。動画投稿サイトのフォロワーも10万人を超えていた。  えらちいねってエースくんになでなでして欲しい。今日はもう夕方の仕事が終わるまでルンルン気分でダンス動画なんかも撮って投稿するぐらいのはしゃぎようだった。アシスタントの子からは、「頭おかしくなりましたか?」と聞かれたけどそんなことどうだっていい! だって今日の夜は、エースくんの動画を楽しむんだもんっ!  祝福の印として、ロゼを開ける。ハート型のグラスワインにピンク色の液体がコトコトと流れていく。由羽はかわいい色のお酒が大好きなのだ。ごくごくと喉を鳴らして、祝杯をあげる。ここからが自分へのご褒美たいむだ。緊張しながらSweet playの課金画面へと導かれていく。 ぽちっ。  押した……押したぞ! 課金したっ! やったあ!   どんどこどんどこ心臓の中にいる小人が薪を割る音が聞こえてきた。 「おーっ。すご。これが課金したらできる特典なのか。どれどれ」    Sweet playの通常プランが月額1万円だったのに対して課金プランは月額5万円を支払うことになったという旨の説明を読んだ後に、その下にある課金特典の項目を見た。 「わっ、、、! 俺からDom配信者にいいね送れるの? 待ってやばい。Dom配信者のほうからもいいねを返されたらマッチしてメッセージやり取りし放題? マ??? 」  由羽はベッドの上に倒れ込んだ。驚きのあまり手がわなわなと震えてくる。 「まじか。えっ! じゃあ俺がエースくんにいいね送って、エースくんからもいいね返されたらマッチしてメッセージ送れるってこと!? えぐ」

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