16 / 94

第16話 マンツーマンplay

『嬉しいです! 俺もエースくんのこともっと知りたいです(ニコちゃんマーク)』  由羽はたいへん満足していた。まるでホットココアを飲んだ後かのような満たされっぷり。推しDomのエースくんとこんなにお話できるなんて……今年の運を全て使い切った気がする。 『じゃあ、少し僕につきあって』  ん? どういう意味だろ。  一抹の不安を抱えながらも由羽は承諾する。 『いいですよ! 俺でよければ』  その後すぐに返事が来た。 『めっちゃ従順だ笑。躾甲斐ありそう』  ふみゅ?? 躾甲斐ってなんだろ。なんか妖しい紫の響きがするような……。  由羽が戸惑っているうちに追加のメッセージが届いた。 『おにいさんはメッセージの文字だけのplayってしたことある?』 『いえ、したことないです』  素直に打ち明けるとエースくんからとんでもない返信が届いた。 『じゃ、しよ』  ドドドドキュン。と由羽の胸が撃ち抜かれた。一瞬かくん、と身体の力が抜けた。次いで、心臓がバックバックと踊り出す。情熱的なタンゴのリズム。危うくスマホを落としそうになった。心臓の中の小人が情熱的なタンゴを奏でる。 『お願いしますっ』  急激な血圧上昇で脳みそがくらくらするが、とりあえず返信は打てた。  まじか。エースくんとマンツーマンplayさせてもらえるとか……Subに生まれてよかった。 『おにいさんのことなんて呼べばいい?』 『由羽(ゆうは)でお願いします』  本名を教えるのにもう戸惑いはなかった。エースくんにもっと自分のことを知って欲しかった。 『由羽。Kneel(おすわり)』 「っ」  エースくんからのCommandに、身体が反応する。ベッドから下りてラグの上でおすわりをしてしまう。おしりをラグに付け、足を広げる姿に、正面にある姿見で自分の姿を見てしまい、目を逸らす。 『ちゃんとできたかな?』 『はい。おすわりしてます』  羞恥に耐えながら返事をする。 『ヨシヨシ。おすわりえらちいね』  エースくんからの優しい褒め言葉に思わず 「わんっ」  と小さく返事をしてしまった。子犬のように。  ──……よかった。今の聞かれてなくて。 『Strip(服脱いで)』 「え」  自分の手がまるで魔法にかけられたみたいに、意志とは無関係にパジャマのボタンを開けていく。プツン、プツンとボタンを外す音が耳に残る。  ──……やばい。これなんか……。  するりとスウェットを脱ぎ、残るは下着1枚のみ。どうしてもそこに手が行くのを迷ってしまう。それに痺れを切らしたのか追加でメッセージが届いた。 『下着脱ぐの焦ってそう笑。下着は脱がなくていいから、代わりにーー。Present(見せて)。今の状態を写真撮って送って』 「……っ」  まさかの指示に身体がカッと熱を帯びる。あまりの恥ずかしさに、足をもじもじとしつつ返事を送る。 『……恥ずかしいです。あと、ここでそういう写真送ったら垢BANされちゃいそうで、、、』  どんな反応が返ってくるか少し怖い。

ともだちにシェアしよう!